番外編
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北にあるブリッグズ砦へと向かう車を目の前に、キンブリーとエンヴィーは睨み合っていた。
「…どうして貴方まで着いてくるんです?」
「お前には関係ないだろ?キンブリー」
『…えーと、取り敢えず車乗んない?』
バチバチと火花を散らす2人の間で冷や汗を流すショスナト。
取り敢えずは「そうだね」と了承した2人に安心し、自分も運転席へ乗り込もうとドアを開けた。
が、
エンヴィーに腕を引かれ、転がるようにして後部座席へと乗り込んだ。
『どわあっ!!?』
「はい。詰めて詰めてー」
『おま、エンヴィー!?何して…!』
「ショスナトはこーこ。」
『はあ!?じゃあ誰が運転…』
ショスナトを押し込むとその横に座るエンヴィー。
反対側にはキンブリーが座り、身動きのとれなくなったショスナトが運転席に視線をやると、大きく目を見開いた。
『ぶっ!!レイブン中将!!?』
運転席に座るレイブン中将。
しかしその表情は状況が掴めていないのか困惑の色を浮かべていた。
驚くショスナト。
エンヴィーはそんなショスナトとレイブンには興味なさげにキンブリーを睨む。
「ちょっと、狭いんだけど。前行きなよ」
「貴方が降りれば良いのでは?」
シッシッと手を払うエンヴィーを一瞥し、気にした素振りもなく目を瞑るキンブリー。
「助手席空いてるでしょ」というエンヴィーの言葉に、ショスナトが大きく反応した。
『お、俺が前行く!!っていうか中将運転変わります!!』
「そうしてくれると助か「レイブン?」
「…構わん。ゆっくり休んでいたまえ」
『は!?』
エンヴィーがワントーン低い声で名を呼ぶとニコリと笑顔を浮かべるレイブン。
目が笑っていないぞ、とショスナトは小さくつぶやいた。
「だってさ。ショスナト。良かったねー」
『ぜんっぜん良くない』
『寧ろ胃が痛む』と青い顔のショスナトにエンヴィーは眉間に皺を寄せ、キンブリーに微笑みかけた。
「なぁキンブリー?ショスナトは体調が悪いみたいだし、このエンヴィー様が付き添っててやるからレイブンと2人でブリッグズ行きなよ」
「おや?忘れましたか?ショスナトは私から離れませんよ」
「そんなの昔の話でしょ?」
にらみ合う2人。
やはり挟まれる形のショスナト。
諦めたようにため息をついていると、そのショスナトの顔にエンヴィーの肘がクリーンヒットした。
「あ やべ」
キンブリーに掴みかかろうと腕を伸ばした筈のエンヴィーが、そう言って動きをとめた。
顔を押さえるショスナト。
キンブリーはショスナトの肩を引き寄せた。
「大丈夫ですか?」
『だ、大丈夫です…意識飛びかけたけど…』
『あ、鼻折れてません?』と不安そうにキンブリーに顔を向けるショスナト。
その頬を撫でながら「えぇ。」と頷くとキンブリーはエンヴィーを睨んだ。
「…いくらあなた方といえど、これは見逃せませんね」
「は?事故じゃん。大体お前が大人しく前に行ってればショスナトに手が当たることもなかったんだ」
「ほう。ならばこれも事故ですね」
バッと両手を構えるキンブリー。
その瞬間、車の後ろ半分がドンッという音と共に吹き飛んだ。
間一髪でショスナトを抱え脇道に着地するエンヴィー。
『ぐへっ!』
「っと。びっくりしたー。なに、やる気なワケ?」
「ショスナトを離していただけますか?」
「やなこった。」
ショスナトを抱く力を増しながらニヤリと意地悪く笑うエンヴィーを、殺気立ったキンブリーが睨んだ。
『…おい、待て、待てよ。俺を巻き込むんじゃねえよ。
おい、なあ?え?聞こえてるよね?おいっエンヴィー!少佐!!
っ~!お前ら仕事どーする気だばかやろォオオァアアア!!!』
ドンッ!
と更に響く爆音の中で、爆煙に巻かれながらショスナトの声が辺りに響いた。