歪む迷路
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フリードキンとの通話を終了したプリーストの横顔をショスナトはじっと見つめていた。
広い筈の車内。
運転はプリーストの部下がしている。
助手席にはプリーストが座り、運転席と助手席の間にショスナトが座っていた。
手元の端末を見ていたプリーストがショスナトと視線を合わせる。
だがショスナトは何も言わない。
「見たいか?」
『もう見た。』
「ならなんだ」
『私を連れ出した理由』
「それならもう言った筈だ」
ため息をつきヘッドレストに頭を預けるプリーストはショスナトに少しだけ身体を向けた。
「猛獣を閉じ込めておく理由がない」
『私をメンバーに加える必要性が感じられない。』
「一緒に仕事した仲だ。知った相手との方がやりやすいだろう?」
『昔一度だけね。それに私の家がプリーストの無茶のせいで燃えた事覚えてる?』
ショスナトの言葉に運転していた兵がチラリと視線を向ける。
そしてまたすぐに運転に集中した。
「忘れていない。確か車も爆発したな?」
『車も家も恋人も失った。貴方のせいで。もう関わりたくない。』
「私はずっと会いたかったよ」
微笑むプリーストにショスナトは舌打ちと冷たい視線を返した。
「君も、手に馴染む強力な武器が地下で埃を被ってたら引っ張り出すだろ?」
『過大評価ね』
「正当な評価さ。君は必要とあらばどんなに残忍な手も使える人間だ」
プリーストから目を逸らしため息をつくショスナト。
2人の声以外で聞こえるのはエンジン音と、状態の悪い路面に揺れる車の軋む音だけ。
『褒めるのが下手。友達いないんじゃない?』
「まともなフリをしてるみたいだが私と変わらない。常人に君の相手が務めるとは思えない」
『何が?目付きの悪さ?』
「君はとんでもない悪人だ。」
鼻で笑いながら冗談で返すショスナトはプリーストの言葉に少しムッとした表情を浮かべる。
『私は職務を確実に全うしたいだけ』
「あぁ。だから、君のトリガーは私が引いてやろう」
『…』
ショスナトは少し考え、前方の何も無い道路へと視線を移した。
車の振動に身を任せる。
運転手からもプリーストからもその顔は見えず、だがプリーストはショスナトが笑っている事に気付いていた。
『私に何させる気?』
「何でも良い。私のお気に入りだよショスナト。ケースに入れて持ち歩きたい程にね」
『私はその喉元を撃ってやりたい』
「おや、怖い」
口元に笑みを浮かべたままプリーストを睨むショスナトと視線を合わせながら、プリーストは目を細め笑った。
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202011
20230902添削