歪む迷路
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車に発信機を付け戻って来たショスナトにプリーストは手を伸ばした。
『なに?』
「そこに双眼鏡がある」
『自分で取りなさいよ。私が出てる間何してた訳?寝てたの?』
不機嫌ながらもグローブボックスを開き双眼鏡を取りプリーストに渡すショスナト。
プリーストは満足気に頷き、受け取った双眼鏡をそのままショスナトに差し出した。
『何よ』
「これは君のだ。私はもう持っている」
『…本当に貴方とは金輪際一緒に仕事したくない』
「それは残念だな」
そう言いながら大して何とも思っていなさそうなプリーストの横顔を睨み、ショスナトは違和感を感じて手にした双眼鏡を見た。
そしてもう一度グローブボックスを開くと、ショスナトが随分前に無くした筈のサングラスが入っていた。
『プリースト』
「なんだ」
『貴方、1人で来る気だったよね?』
「君がワガママを言わなければその予定だった」
『じゃあこれは偶然入ってたって訳?』
サングラスを取って掛けるとレンズ越しにプリーストを睨む。
プリーストは肩をすくめた。
「君の鼻の上へ無事戻れてサングラスも喜んでるだろうな」
『ちゃんと説明して』
呆れたようにサングラスを外すとシャツに引っ掛ける。
プリーストは事務所を見て動きがない事を確認するとショスナトに身体を向けた。
「私の車に忘れてあった。持ってきてやったんだ。感謝は無いのか?」
『今までずっと持ってたの?っていうか何年前の話?』
「家と車が燃えた日からか」
『プリースト!』
ニヤリとしながら話すプリーストに怒鳴るショスナト。
しかし大した効果は無くプリーストの笑みが濃くなっただけだった。
『…私が他に行かずこっちに来るって分かってたのね』
「中々来ないから少し疑ったが、正解だったよ」
『信じられない…』
ため息をつきながら頭を抱えるショスナト。
プリーストはその肩を優しく叩いた。
「私は君の理解者だ。言わずとも分かるのさ」
『じゃ、今殺意を抱いてるのも分かる?』
肩を叩くプリーストの手を振り払いショスナトは背もたれに勢いよく背を預けた。
『今すぐ帰ってフリードキンの間抜け面を眺めたい』
「好みに口出しするのは無粋だが、フリードキンは止めたほうがいい。彼は幼稚で単純な男だ。」
『心配しないで。世界にプリーストとフリードキンしか男がいなくても私どっちも選ばないから』
「私はどれだけ人間がいようと君しか見えないよ」
ショスナトのシャツからサングラスを取ると、プリーストはそれを掛けレンズ越しにウインクした。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるショスナトはサングラスを取り上げシャツに戻す。
『帰りたい。』
「イカルス捕獲は目前。これからがお楽しみだよ」
『プリーストが次に折るのは誰の指でしょうね?』
「賭けるか?」
『なんで本人と賭けるのよ。あぁ!もうホント嫌』
苛立ちながら叫び天井を見上げるショスナトの隣でプリーストは笑いながら双眼鏡を保安官事務所に向けた。
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202012
20230930添削