歪む迷路
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一旦作戦の調整の為停止した車内で、ショスナトは1人横になっていた。
外ではプリーストが部下達と話し合っている。
ショスナトも降りようとはしたが「安静にしてろ」とプリーストに押さえつけられ諦めた。
『寒い』
荷台に積まれたこの車は当たり前だがエンジンがかかっておらず、もちろん暖房も入っていない。
動かない事でゆっくりと身体の熱は奪われ、ショスナトはただ耐えていた。
酷く頭が痛む。
そんな中で、ショスナトは先程から何度も同じ事を繰り返し考えていた。
プリーストが私を庇った。
その事が頭から離れない。
何度も頭を巡るその記憶の中で、プリーストは慌てていたように思えた。
そう思いたいだけなのかも知れないが、そう思えるような顔をしていたのだ。
頭と胸のあたりがもやもやする。
ショスナトが知っている限りプリーストはそんな人間では無かった。
倫理観を持ち合わせていない悪魔のような男。
それがミスタープリーストだ。
「具合はどうだ?」
『…絶好調よ。』
後部に位置するドアが開き、眩しい太陽の日差しと共にプリーストが現れる。
ショスナトは痛む頭を刺激しないようゆっくり起きると親指を立てた。
「だったらこれは不要かな」
そう言ってショスナトに鎮痛剤の入ったオレンジ色のケースを振って見せる。
ショスナトはじろりと睨むとプリーストに手を差し出した。
『念の為飲んどく』
「そうか?」
『万全を期すのは当然の事よ』
何か言いたげににやりと口元を歪めながらプリーストはショスナトにケースを渡す。
そしてショスナトが薬を飲む間に車に乗り込むと座席へ腰掛けた。
『…ありがとう』
「今日はえらく素直だな」
『いつもと違うのはそっちもでしょ』
驚いた、とばかりに眉を上げるプリーストにケースを投げ渡す。
ショスナトの頭の中ではやはり慌てた様子で自分の盾となったプリーストの姿が浮かんでいる。
「私は変わらないさ」
『わ、』
ケースを受け取りポケットになおすプリーストが今度はショスナトにブランケットを投げる。
咄嗟の事で上手く受け取れず、顔にかかったブランケットをショスナトは勢いよく取った。
「おや?取れると思ったよ。すまない」
『うるさい。…自分のは?』
「私は必要ない」
『いや要るでしょ』
ショスナトはブランケットを少し掲げてみせるが「結構」と手で遮られる。
その姿にまたもショスナトはもやもやとしながらそれをかき消すように頭を振って鼻を鳴らした。
『寒くなっても知らないわよ』
「君を見ればいつだって熱くなれる」
『私はたった今寒気がしたところ』
震えたフリをするショスナトにプリーストが笑う。
ガタガタと音を立て、車が発進した。
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20230918