歪む迷路
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鎮痛剤が効き暫く眠っていたショスナトは、少し寝ぐせのついた頭を揺らしながら自身の使ったブランケットを丁寧に畳んでいた。
それを見ながらプリーストは足元に転がる欠片を拾い片手で砕く。
パキ、と小さな音が鳴りショスナトが顔を向けた。
『それは?』
「君が捨てたゴミだ」
『あぁ、それ』
プリーストの手元を覗き込み、そして一瞬険しい表情を浮かべるショスナト。
するとプリーストの耳からイヤホンを奪い通信を始めた。
『フリードキン。フリードキン、私よ。聞こえる?』
〔クライスラー!良かった、怪我は?頭は?〕
『なんて事ない。ただ私の通信機は壊れたから報告しておこうと思って。』
〔当然だ、ブロックが当たったんだろ?そりゃ壊れるさ。ミスター・プリーストと連絡取れるし問題ない。…問題ない、よな?〕
通信に応じたフリードキンは随分と驚き慌てており、その声が大きかった為依然頭が痛むショスナトは辛そうにイヤホンを耳から少し離した。
相変わらず知能も自信も無いフリードキンにショスナトはなるべく優しい声色で続ける。
『大丈夫、問題ない。何かあればプリーストへ』
〔わかった。それでクライスラー、〕
何かを言いかけるフリードキンの通信を切りショスナトが笑いながらイヤホンをプリーストに返した。
『アマンダのせいで壊れた事になってるの?』
「君が踏み砕いたと言った方が良かったか?」
『フリードキン相手ならいくらでも誤魔化せるよ』
話しながら立ち上がり、笑っているプリーストの隣へと腰を下ろすショスナト。
プリーストは驚いて少し眉を上げショスナトを見た。
それを見て気恥ずかしそうに同じく眉を上げてみせるショスナトは、先程のブランケットを自分とプリーストの膝に掛けた。
静かな空間に車両の揺れる音だけが響く。
「驚いたな」
『誤解しないで。貴方休んでないし、冷えてきたから』
「君に持ってきたんだ」
『やめてよ。これ以上甘やかされても困る』
「気にするな。まだ痛むだろう?」
自身に掛けられたブランケットをショスナトに掛けなおすプリースト。
不服そうなショスナトは眉をひそめ額を指差した。
『プリーストも命中してた』
「かすり傷だ。君のキスで治る」
『じゃあ永遠に治らない。可哀想なプリースト。暖くらい取れば?』
意地悪く笑うショスナトは掛けられたブランケットを今度はプリーストの頭に被せる。
突然の子供じみた行為に一瞬動きを止めたプリーストはそれを片手で取りながらショスナトの身体を勢いよく引き寄せた。
『わっ』
「君は悪戯っ子だな」
驚きに目を見開いたショスナトがプリーストの顔を見上げた。
そしてその口元にいやらしげな笑みが浮かんだのを見て、ショスナトは目と口を固く閉じる。
だがショスナトの予想に反し、お返しとばかりに顔に掛けられるブランケット。
『ちょっと!』
「なんだ?期待でもしたか?」
『…これからどれだけ寒くなろうと絶対に貸さない』
「構わない」
ボサボサになった頭を出し真っ赤な顔で怒るショスナト。
その肩に手を回したまま、プリーストは笑う。
「私はこのままで充分暖かい」
『私で暖を取るのはやめて。』
ジトリとした目で睨むショスナトはしかしプリーストの腕を振り解きはせず、少し考えたように唸ると収まりの良い場所を見つける為身体をもぞもぞと動かした。
車内にはプリーストの笑い声が響く。
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202011
20230918添削