歪む迷路
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警告音が鳴り響き、スプリンクラーが一体何に水を与える気なのか、打ちっ放しのコンクリートの分厚い壁や床を激しく濡らしていた。
『貴方、脱走を許したここの間抜けなスタッフ?それとも寝坊して逃げ遅れたドジな被験者?』
深い青のドレスを身にまとったショスナトは、激しく破壊された扉の奥で倒れたチェストに座る男を睨んだ。
ショスナトの後ろからは2人の兵が俯いたまま動かないその男に銃口を向ける。
「……ここはパーティー会場じゃないぞ」
『あら?私達気が合いそう。私もそう思うもの。』
「……」
顔を上げた男がショスナトを睨む。
ショスナトの後ろでは兵士が男の顔を確認した途端、慌てて銃を下げた。
『質問の答えは?』
「…私はオズモンド・プリースト。ここの人間の顔も知らないお前は誰だ?ん?私の退任祝いに派遣されたのか?」
『ショスナト・クライスラー。今日は私の誕生日なの。ディナー中に緊急の呼び出しを受けて、わざわざこんな大雨の中立って貴方と話してる。』
「それは災難だな。私とどちらが災難か競おう」
両手を広げて天井を仰ぐプリースト。
ショスナトはスプリンクラーで水浸しになった髪がくずれ、時折手で掻き上げるが直ぐにまた落ちて顔に張り付いていた。
その姿をプリーストはじっと見る。
タイトな青いドレスは水で濡れて、尚更にその細い身体のラインを浮き上がらせていた。
「責任者なら、この施設のどこかで死んでるかこの施設から遠く離れた場所で死んでる。居場所は知らん」
『ここから逃げた被験体の行方は?』
プリーストが鼻で笑う。
立ち上がると身体についた煤を叩いて払った。
「すぐに分かる。」
『どこへ行く気?』
「夜のお誘いか?悪いが、生憎忙しくてね。」
プリーストは笑いながらショスナトの横を通り過ぎようと足を進める。
それをショスナトは行く手を阻む様に壁を蹴って道を塞いだ。
「何のつもりかな?」
『同行しましょう。Mr.プリースト。
…貴方が
「
目の前に伸びるショスナトの足を指差す。
めくれあがったドレスを気にもしないショスナトはプリーストが笑みを濃くしようとも顔色1つ変えず、護衛に付けていた兵士2人を見た。
『ここで結構。私は彼と動く。2人は引き続き調査を。』
頷いた兵士は足早に大雨の廊下を駆けて行く。
それを見送り、ショスナトは壁から足を下ろすと『あ、』と声を上げた。
『プリースト。銃は?』
「ある」
『私無いから宜しく。』
「…武器も持たずに、蹴れば折れそうな身体の女が何しにここへ来た?」
呆れた顔のプリーストをショスナトは不機嫌そうに髪を掻き上げながら睨んだ。
『急に呼ばれたから来ただけ。こんな非常事態予想してなかった。…ディナー中に飛び出した私が振られないでいられる確率はどのくらいでしょうね?』
「さぁな。研究対象のどれかに教えてもらえ。」
『そうする』
銃の残弾を確認したプリーストは忙しなく警告音が鳴り響く廊下を歩きだす。
ショスナトはその隣を歩きながらもう一度髪を掻き上げた。
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202011
202308添削