その愛の名前
あなたの名前
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『ねぇ、ロキってどんな人を好きになるのかしら』
「っゴホッ!?」
突然の姉の発言にロキは噎せ返った。
『ロキ大丈夫?どうしたの?』
「どうって…姉上こそ突然どうしたんです」
『んー、少し気になって』
ロキは1つ咳払いすると、グラスの中の酒をクルクルと揺らすショスナトに改めて向き直った。
『ほら、ソーはなんていうか、ね?』
「あぁ…」
ショスナトが視線を向ける方を見るとそこにはソーとシフが仲睦まじくカウンターで談笑していた。
確かにあの2人は事実はどうあれそういった関係に見える。
『ソーの幸せそうな顔を見ると思うの。…私、貴方達の幸せそうな顔を見るのが一番幸せだなって』
「姉上の幸せが、私にとって最高の喜びで幸せです」
『とか言っていつか素敵な人を連れてくるのよね。
はーあ。子が巣立つ親の気持ちがよく分かるわ』
グラスの中で揺れる酒を眺めるショスナトはどうも本気でそう考えているらしく、ロキは苦笑した。
そっと自身の手をショスナトの手に重ねる。
「私はずっと姉上のそばにいます」
『それじゃ私もロキも結婚出来ないわね』
『きっとお父様は頭を抱える』とショスナトが笑う。
姉と弟でなければ愛の告白とも取れたその言葉は、2人が姉と弟であった為いとも簡単に笑い声と共に流れた。
『ね、ロキは好意を寄せてる相手いないの?』
「姉上は?」
『いない。って質問に質問で返すのは良くないわよロキ』
「いますよ。」
『えっ?ほんとに!?』
笑っていたと思えばムッとした表情を浮かべ、今度は心底驚いた風に目を見開くショスナトのそのコロコロと変わる表情に、ロキは無意識の内に微笑んだ。
『誰っ?シフ?違うか…ええと、私も知ってる?』
「姉上もよくご存知ですよ」
『ドキドキする!誰なの?名前は?』
微笑むロキとは違いショスナトはそれどころではなく、重ねられていた手を掴みブンブンと振った。
それにロキが笑い、そしてショスナトに顔をズイ、と近づけた。
「姉上の名前は?」
『ショスナトよ。なに急に』
「それが愛する者の名です」
ロキが珍しく少し強ばった顔でそう答えるとショスナトは固まり、暫くそのままお互いの顔を見つめあった。
そして羽のようにふわりと優しくショスナトが微笑み、ロキもつられて微笑んだ。
『私も。ロキのこと大好きよ』
幸せだ、と聞いただけで分かるような優しい声で告げるショスナト。
そこに含みは見当たらず、ただ純粋に弟を想う姉の愛情が込められていた。
『ロキったら。そういう意味じゃないのに』
「違いました?」
『違うわ。…嬉しいけど』
ロキは目の前で照れたように笑うショスナトに胸の奥が熱くなるのを感じた。
温かく、満たされる感覚。
それと共に「意味が違うのは貴方だ」と叫び苦しむ心の内。
そんな自分を抑え、隠し、もう一度微笑むと聞こえない程小さな声で呟いた。
「いじわるな人だ」
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20230910添削
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