その愛の名前
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その日ロキが目覚めると隣にはソーが寝ていた。
「………」
あぁ、夢か。
ロキは驚いて目を見開いたあと、ゆっくりと目を閉じた。
しかし不快にはならない程度の、反対に妙に安心感のある重みを胸に感じる。
薄らと目を開くとソーの腕がロキを抱き締めるように巻き付いていた。
「嘘だろう……」
一体何してるんだこの馬鹿兄貴。
冗談じゃない。
とロキがその腕をはがしにかかるとソーは嫌そうに唸った。
『やぁ…』
「……」
およそ聞いたことが無いような悩まし気な兄の声に、冷静に疑問符を浮かべながらも本能的に肌が粟立った。
「…起きてください」
『ん、……』
「気味が悪いから起きてください」
言葉とは反対に優しくソーを揺するロキ。
ソーは朝起きるのが嫌な子供のように毛布をロキから奪うと頭を隠した。
そして再び聞こえてくる寝息。
「……。」
どうしたものか。
ロキは自分のベッドで頭を抱えた。
大きな身体を小さく丸めて眠るソーはそんなロキなどお構いなしに幸せそうに寝ている。
ロキは暫くそんなソーを眺め、何か決心したのかフゥと1つ息をはいた。
「…起きないならキスしますよ」
ソーの耳元に顔を近づけ囁いた。
その言葉にソーはゆっくりと目を開き、ロキを見て少し驚いた表情を浮かべた。
『…ろき…?…おはよう』
「…おはようございます。昨夜はよく楽しまれたみたいですね」
ふわり、と花が開くように柔らかく微笑むソー。
ロキは複雑な表情でそんなソーから目を逸らした。
『…お酒臭い?』
「少し」
『そう……ふふ、ロキったら寂しかったの?』
私のベッドで寝てるなんて。
そう続けるソーにロキは違うと首を振りながら苦笑した。
「…目が覚めたのなら、幻術を解いてもらえますか?」
『幻術?』
キョトン、とロキを見つめるソーは少しの間そのままで、『あぁ、』と何かに気付いて笑った。
『私ったら本当に酔っ払ってたのね』
「"兄上"のお陰でしっかり目が覚めましたよ」
けらけらと笑うソー、もとい酔ってソーに見えるよう幻覚を掛けていたショスナト。
ロキはショスナトが元の姿に戻ったのを見て肩の力が抜けたのかフゥと息をついた。
「私の部屋だから良かったものの」
ソーや他の、例えばファンドラルの所だったらどうなっていたか。
そう言いかけて、そもそもソーの姿だったら問題は無いか。と考えて止めた。
『ロキのベッドで寝ちゃうなんて…ごめんね?邪魔だったでしょ』
「いえ。全く。…見た目も中身も姉上なら」
『ごめんなさい…』
うう、と恥ずかしそうに両手で頬を包むショスナト。
いくら姉上とはいえ、見た目がソーでは隣で眠りたいとは思えない。
ふ、とロキはある事に気付き動きを止めた。
「……」
『…ロキ?』
うん?とロキの顔を覗き込むショスナト。
ロキはそれどころではないようで、目元を手で覆った。
もしショスナトが酔って幻覚をみせていなければ、自分に腕を回し眠っていたのはショスナト自身で。
剥がそうとした時に悩まし気な声を上げたのも鳥肌の立つソーではなく、ショスナトだったのだ。
『…もしかして、やっぱり怒ってる?』
「……。兄上に、少し。」
『ソーに?』
どうして?と眉を寄せるショスナトに笑顔を見せながら、ロキは明らかな八つ当たりであるその理不尽な憤りを今頃部屋で休んでいるであろうソーに向けた。
お陰で目覚めが悪い。
どうしてくれようか?