その愛の名前
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「ロキ!!」
「…兄上?」
ドタドタと大きな音を立てながら走ってきたソーにロキは何事かと身体を向けた。
息を整え、いつに無く真剣な表情のソーはロキの肩を掴む。
「聞いたか、姉上の話」
「姉上の?何かあったのか?」
「そうか…母上、お前にも話してなかったんだな…」
苦虫を噛み締めたような顔のソーをロキは訝しんだ。
「一体なんだ。姉上に一体何があったんだ?」
「…それがな、ロキ」
▽
「本当に貴女は素敵なお方だ」
『そんなこと…ヒーン様ったらお優しいのね』
ふふ、と口元を隠し微笑むショスナトと、その正面に座り楽しそうに笑う1人の男。
彼は王オーディンの友人の子息で、今日ショスナトはその子息ヒーンと見合いをさせられていた。
「本日のデザートでございます」
『…あら』
「おぉ、これも美味しそうですね」
給仕が運んできたデザートに目を向け爛々と目を輝かせるヒーン。
ショスナトはそんなヒーンに微笑みながら、目の前に置かれたデザートを見て目をパチリと瞬かせふわりと笑った。
『ありがとう。とっても美味しそうね』
「有り難きお言葉でございます」
そう言って頭を下げ戻っていく給仕。
その背をじっと見送ると、既にデザートへと手を伸ばしているヒーンに笑みを向けた。
『スイーツは逃げません。私の事もお忘れにならないでね?』
「あ、申し訳ない、いや、」
『ゆっくりとお話しましょう』
慌てたように手を振るヒーン。
ショスナトはそんなヒーンを見ながら可笑しそうにクスクスと笑った。
▽
「今日は本当に素晴らしい時間を有難う御座います」
『私もとても楽しい時間を過ごさせていただきました。またいつでもいらして?』
「もちろん。」
では、とショスナトの手の甲に口付けると去って行くヒーン。
ショスナトはそれを見送ると隅に立つ兵の元へ行き、その胸を突いた。
『…そんなに見られてたら恥ずかしいじゃないの』
「気付いてましたか」
驚く兵士を少し赤くなった顔で睨むショスナト。
兵士は笑って、その姿を歪ませた。
見慣れた姿。
無意識に笑みを浮かべたショスナトとその人物は、そのまま2人並んでショスナトの自室へと足を向ける。
『気付かない訳ないでしょ。笑顔引き攣ってなかったか心配だわ…』
「素敵でしたよ」
『ロキは私に甘いから当てにならない』
ぷぅ、と頬を膨らませるショスナトにロキは苦笑した。
『デザートに苺が沢山乗ってるの見た時は笑っちゃいそうだった』
「姉上のお好きなものですから」
『彼のには無くてブルーベリーが沢山乗ってた』
「姉上お嫌いでしょう?」
『…全部食べてたし、ヒーンはブルーベリー好きみたいね』
『彼とは相性が良いかも』と笑うショスナトに、ロキは不満気な表情を向けた。
そして先程ヒーンが口付けたショスナトの手を取る。
『ん?』
「彼を気に入りましたか?」
『素敵な友人としてね』
「…彼は満更でもないようでしたが」
『ええ?無いわよ。彼もお見合いにはウンザリしてたし。
…その点、話の分かる方で助かったわ』
本当にホッとしたように胸を撫で下ろすショスナトにロキは小さく息を吐いた。
「…姉上、あの男は」
「姉上!!」
ロキが何か言いかけた途端、いつかと同じ様にソーはドタドタと大きな音を立てて走りよってきた。
ス、とショスナトの手を離すロキ。
『ソー?どうしたの?』
「見合いは?終わったのか?」
『終わったわ。今さっき相手の方を見送ったところ。』
「そうか…。……しかし今日はまた随分と美しいな、姉上」
『やだわ、社交辞令だけ上手くなって…恥ずかしいじゃない』
感心したように全身を見渡すソーにショスナトは笑う。
ソーは「褒めたのに」と苦笑した。
本日ショスナトは見合い用にとドレスを纏い、長いその三つ編みの髪も上げ、いつもの装いとは違いアスガルドの王女というに相応しい華やかさで溢れていた。
「母上から今日いきなり見合い話を持ち掛けられたとは思えない。素敵だよ」
『ありがとう。前々から聞かされてたら私逃走してるわよ』
「だから秘密にしてたんだろうな」
『えぇ?信用ないなぁ』
そう言って腕を組むショスナトに、ソーとロキは「信用してるからこその手段だ」と両親の手際に心の中で拍手した。
『ねぇ、それより私疲れたしゆっくりお茶飲みながら話さない?』
「勿論。見合いのことも聞きたいし」
「私は失礼します」
驚いた顔でロキを見る2人。
その2人に微笑み、先程と同じようにショスナトの手を取った。
「少し、用があって」
『そう…残念ね。後からでも来れそう?』
「また次の機会にでも御一緒します」
そう言ってショスナトの手の甲に口付けるロキ。
驚くショスナトの顔を見上げ、悪戯っ子のように笑うとロキは部屋へと帰って行った。
残されたソーと依然驚いた表情のままのショスナト。
「……姉上、見合い相手と何かあったのか?」
『…え?…や、何も、なかったけど』
「見合い相手、姉上の手にキスした?」
『あ、うん。帰り際に挨拶で』
『そういえば同じ所よ』と続けるショスナトにあぁ、と納得するソー。
「…ヤキモチか…」
ため息混じりのその言葉にショスナトは吹き出す。
『2人して私をからかってるのね?もう。』
「いやそういう訳では」
『でもそんな所も大好きよ。可愛いわね』
「……」
嬉しそうに笑う美しいショスナトの顔を見ながら、ソーは弟の異常とも言える程の深い愛に頭を抱えた。
「…姉上、これは姉上にも責任あるんだからな」
『えっ急に何の話っ?』
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ヒーンはヒヒーンから取った。
ヒヒーンは馬から取った。
人の恋路を邪魔したら馬に蹴られるよって