その愛の名前
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「姉上。 姉上、起きてください」
控え目に囁かれるその声と、優しい彼の香りにショスナトは伏せていた顔を上げた。
『…ろき…おはよう』
「おはようございます。…よく眠れましたか?」
ぼやける視界に目を擦りながらショスナトはその皮肉に笑った。
『びっくりするくらいよく眠れたわ。…首が少し痛いけど』
「…あの男に付き合っていつまでも飲んでいるからですよ」
はあ、とため息をつきながらロキはショスナトの首から肩にかけてを優しく撫でる。
ショスナトはその手の温もりから随分と自分の身体が冷え切ってしまっていることに気付き驚いた。
が、それよりも、ロキの"あの男"という言葉に苦笑した。
ロキが"あの男"と称する人物が誰であるか、ショスナトだけは随分と昔から知っていたからである。
『…ソーがあんまり楽しそうでついハメを外しちゃった』
「限度がありますよ。姉上はそれ程酒はお強くないでしょう」
『あら。だったらロキも一緒にいて止めてくれれば良かったのに。』
「…何度か止めましたが?」
『あら?』
首を傾げるショスナトにロキはわざとらしく不機嫌そうな表情を浮かべ椅子に腰掛けた。
『けどロキってば途中で帰っちゃってお姉ちゃん寂しかったなあ』
「私がいつ部屋に戻ったかも知らないくせに」
『しっつれーね』
子供のようなロキの言葉にショスナトが笑うとロキは機嫌悪く眉間にシワを寄せた。
『ファンドラルが歌いだした時にコッソリ抜け出した可愛い弟にこのお姉さまが気付かないとでも?』
「……」
驚いたように目を見開くロキ。
ショスナトは悪戯が成功した子供のように笑った。
『疲れてるんだろうと思って引き止めなかったの。
けど、やっぱり引き止めるべきだったわ』
「…気を遣う必要などなかったのに」
『ロキを嫌な気分にさせたくなかったんだもの』
だったら止めた時に飲むのを止めて欲しかった、とロキは思ったが口にはせず代わりに苦笑いを浮かべた。
『なによー。ショスナトちゃんに文句があるなら聞くわよ?』
「…姉上、まだ酒が残ってるようですね」
『あ、テンションおかしい?』
「随分楽しそうです」
『そりゃあロキが起こしにきてくれたんだもの。楽しいわ』
にこっと満面の笑みを浮かべるショスナトに照れくさそうに笑みを返すと、ロキはショスナトの頬をそっと撫でた。
「…身体、冷えてる。」
『皆薄情なものよね…せめて上着でも掛けていってくれれば良いのに』
ぶるるっと身体を震わせるショスナト。
「私の部屋で暖まりますか?」
『わ、良いの?ホットミルクにココアマシュマロまで!』
「……」
限りなく直球に近いショスナトなりの"遠まわしな要求"に、ロキはいつものことながら笑った。
「姉上が望むなら」
『言ったわね?じゃあマカロニグラタンも食べたい』
「…朝からよくそんなもの食べられますね…」
『あら?ロキも一緒に食べるでしょ?』
「結構です。」
ロキの部屋へと二人、並んで歩きながら静かな廊下に笑い声を響かせた。