その愛の名前
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ソーは今、オーディンのいる玉座の間へと走っていた。
向かう途中ホーガンに声を掛けられたが構ってはいられず、ファンドラルを突き飛ばして急いだ。
「王!父上!!」
「なんだ騒々しい」
そこでは王であるオーディンと、その妻フリッガ王妃がいつもの様に落ち着き払った動作でソーを出迎えた。
「どうしたのソー?そんなに慌てて」
「姉上のことです!父上、一体どういうことですか!」
「ショスナトのこと?」
ふむ、と顎の髭をなでるオーディン。
そのあまりにも余裕を感じさせるゆったりとした動作はソーを更に苛立たせた。
「隠さずとも、もう姉上から全て聞きました」
「…なんの話だ?」
「っ姉上がミッドガルドへ送られるという話です!!」
「なんだと?」
ぐっと眉間の皺を濃くするオーディンに、ソーは頭に血が昇るのを感じた。
「何故姉上だけがたった独りで!ミッドガルドに行かされなくてはならない!姉上はアスガルドを愛してる!いつだって民や仲間のことを想っているっ…そんな姉上を、何故…!!」
「…待ちなさい。それは、ショスナトから聞いたのか?」
「姉上が他言したのであらば罰するか!?」
「そうではない。話を聞け、ソーよ。」
興奮するソーを宥めるようにフリッガはソーの肩を撫でた。
娘がミッドガルドへ送られる、それは母親からしてみても苦しい事である筈。
そう思いソーは撫でる母の優しい手に己の手を重ねた。
オーディンはそれを見ながら何か考え、溜まった息を吐いた。
「全く…ショスナトには困ったものだ。」
「あの子は昔からこの子達のことが大好きですから」
隣でクスクスと笑い出すフリッガに驚き身を翻すソー。
「大丈夫よ」と笑うフリッガにソーはどういう事かとオーディンを見上げた。
「ショスナトから一体何と聞いたのだ?」
「…修行であると…一切の力を断ちミッドガルドで生きるよう、父上に命じられたと…」
「そんなものあの子に必要な筈なかろう。ショスナトはこの誇り高きアスガルドの自慢。心優しき強い姫だ」
「お前の方が必要だろう」とソーを指差し続けるオーディン。
一方でソーは一体どういうことかと困惑した。
「ですからね?ソー。…貴方はエイプリルフールをご存知?」
「…は…?」
▽
ー「姉上っ!!」
『ソー?どうしたの?』
「どうしたのも無いっ!今、父上に全て聞いてきた!」
『ええ!?…迂闊だった。どんな会話か聞きたかった』
ソーがジロリと睨むとショスナトは心底残念そうな声を出し、そして悪戯っぽく笑った。
「笑い事じゃない。俺は父上の元へ怒鳴り込んだんだ。
姉上に下した決定を取り消せと、父上に進言したんだぞ」
『本当?ソーったら…本当に優しい子ね…』
「姉上とは違ってね」
抱きしめてくるショスナトを振り払う訳でもないが、不服そうに顔をしかめるソー。
ショスナトはそんなソーの眉間を指で撫でると至極楽しそうに微笑んだ。
『エイプリルフールよ、ソー。』
「…ミッドガルドの文化だそうで」
『面白いと思わない?昨夜お母様にも嘘を考えるのを手伝っていただいてね。はぁ、あの時は本当に楽しかった』
「…俺は全く、面白くないし、楽しくない。」
この姉の嘘にフリッガも噛んでいた事を今初めて知ったソーは、先程のフリッガの笑顔の意味に気付き項垂れた。
思い返せばフリッガやオーディンがエイプリルフールなどというミッドガルドのイベント事に詳しい筈はない。
「…姉上がミッドガルドに行くことは本当に嘘?」
『もちろん。こんな優しくて可愛い弟に引き止められたら行けやしない』
「今なら止めないよ」
『止めなさい』
パシッとソーの胸を叩くショスナト。
ソーは笑って、改めてほっとしたようにショスナトを抱き締めた。
「…良かった。嘘で。」
『ごめんね?不安にさせて』
「この借りは忘れないぞ」
『…それってエイプリルフールよね?』
「さあね」
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▽more...▽
「ところでロキにはもう?」
『ううん。まだなの。今から行くんだけど、ソーも来る?』
「ロキにはどんな嘘を?」
『ソーと同じ。私が地球に行く話よ。お母様が折角考えて下さったんだもの』
「……。…姉上、ロキにはもっと良い嘘があるぞ」
『良い嘘?』
「あぁ。…姉上が地球行きの嘘より、断然ロキに効くのが」
『面白そう!聞かせてソーっ』
添削20250927
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