嚆矢濫觴
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〔ところで、今日もFAIRYの姿が見えんね〕
スピーカーにしている玉木のモニターからの声にショスナトが玉木と顔を見合わせた。
「ね?」とヘッドセットを指さしながら囁く玉木にショスナトが苦笑する。
「えぇ、別の業務に当たっておりまして。」
〔おや…彼女もこの死肉祭の楽しみの1つだからね。次は戻って来る事を祈ろう〕
〔会場のとは違うFAIRYの穏やかで冷たい解説は他にないもの〕
〔その通り〕
「…光栄です。伝えておきましょう」
ニヤリと笑みを浮かべ玉木はショスナトを見た。
ショスナトは潜入の為の準備を整えている。
準備といっても、身元が割れない様ネームタグ等を捨て衣類をDW内で販売されているものに変えた後新品ではないカストカードを用意しただけで、ほぼ玉木の隣でモニターを見ていた。
今日はクロウとウッドペッカーのショー。
モニターの中にはその2人と眼鏡の鶏や蛇、うさぎ等のアイコンが映っている。
そこにいつもは必ず映っているショスナトのアイコンである妖精の姿はない。
「僕のファンはいないのかなァ」
マイクを手で塞ぎいじけた様に背もたれに寄りかかる玉木。
『いるでしょ?』
「ショスナト以外にも欲しいじゃん。僕結構頑張ってるんだけどな~」
ぷーっと子供のように頬を膨らませる玉木にショスナトが笑う。
慣れた手つきでヘッドセットのマイクをオフにし、玉木の首にするりと腕を回した。
『ファンって狂信者って意味よ』
「知ってるよ」
『その本来の意味でなら私は常長のファンには近いのかも知れないけど。片仮名英語じみた現代の意味なら私はファンじゃないわ』
玉木が目の前のショスナトとじっと見つめ合いわざとらしく険しい表情を浮かべた。
「ショスナトがなんでモテるのかよく分かんないな」
『常長のタイプでい続けられるように努力してるからかな』
「僕のタイプってこんな感じなのォ?」
『違うの?』
「うーん…」
顎に手を当て唸る玉木。
ショスナトはその姿をじっと見つめ、玉木の手が自身の頬に添えられると柔らかな唇を緩ませた。
「僕、笑顔がステキな人が良いな」
『ふふっ』
玉木の言葉にショスナトが少し恥ずかしそうに笑う。
添えられた手に頬を擦り寄せ玉木の首に回した腕に力を込めた。
近づくお互いの顔。
その唇と瞳に視線が交差する。
『やっぱり私、常長のタイプだ』
「自信すごいなァ」
クスクスと笑いながらお互いの声も息も奪うかのように、2人は唇を重ねた。