嚆矢濫觴
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ショスナトが玉木の執務室へと戻るとそこには誰もおらず、机には新しいカードキーとネームタグが置かれていた。
『……』
それを回収し持っていた玉木のジャケットを椅子に掛けると引き返す。
向かうはG棟。
『ー…大掃除ですか?』
「っマネージャー!!」
『その顔はお楽しみ中に邪魔したかしら』
G棟の医務室内は何かで斬られた様なモニターや器具が散らばっていた。
室内を見渡すショスナトに医師である高島麗は慌てて駆け寄った。
「ご無事で何よりですクライスラーマネージャーっ」
『今はただのセクレタリですよ。最中に失礼しましたね』
「これはクロウが暴れただけでっ何もこんな所で始めたりなんか……あれ?」
しどろもどろに答える高島がふとショスナトの首に視線を向ける。
そしてバッと顔を近づけた。
「これ…!」
『似合いますか?』
「どうして首錠を!?」
『玩具ですよ。毒もIDも何も無い。内側のここを捻れば簡単に取れます。』
そう言って首錠を外して見せるショスナト。
だが高島は依然どういうことかと目を見張る。
『五十嵐丸太と良い形で面識を持ちましたし、囚人のフリをして彼らの元にいるのも一つの手かな?と。』
「…プロモータのお遊びですね?」
呆れた様子の高島にショスナトはキョトンとして笑った。
『いいえ?玉木プロモータは知りません。独断です』
「ショスナトさんの?」
『えぇ』
「……」
真剣な顔になる高島。
ごくりと唾を飲み、口角を上げた。
「何を企んでいらっしゃるんで?」
『隠してる物を無理に他人が見ようとすると壊しかねないでしょう?』
「…はい?」
『自由の鎖なんていう私達のワンダーランドに似合わない寒い名の塵は綺麗に片付けてあげませんと。』
ショスナトは手に持っていた首錠を再度首に嵌める。
ガチャンッと妙に軽い音が室内に響いた。
「その為に囚人のフリを…」
『ロクロくんが上手くやれるか心配なので。』
高島に微笑むショスナトは、すぐに何かに耐えきれぬ様に笑った。
「ショスナトさん?」
『なんて、言い訳です。』
「…」
『暇なんですよ。暇つぶしです。囚人ごっこ。』
あはは、と笑いながら高島の首にある絆創膏をそっと指でなぞる。
困惑した様子の高島。
ショスナトは壁に掛けられた時計に目をやり扉へと向かった。
『あぁ、クロウは相変わらず女性が苦手ですか?』
「は?え、えぇ。未だに慣れないみたいですよ」
『それは良かった。』
そう言って医務室から出ていくショスナト。
高島は依然どういう事かと困惑の表情でその背を見送った。