嚆矢濫觴
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着替えを済ませ雑務を片付けたショスナトは近付いてくる大きな足音に気付き持っていた物を内ポケットへと隠した。
足を止め微笑むショスナト。
『ミーシャ。お疲れ様です。』
「…あぁ。」
『今日もお怒りですね。』
「お前の上司が愉快なマネをしてくれたんでね」
『私の上司は貴方にとっても上司ですよ?』
うん?と首を傾げるショスナトに蒔名・フリューゲル・季和子は腰に手を当て鼻を鳴らした。
「私は今から所長に会う。」
『所長との謁見は玉木プロモータの許可が必要です』
「その玉木の事で話がある。」
『あら、そうでしたか』
「……」
にこにこと笑みを浮かべたまま何の変化も見られない様子のショスナト。
マキナはチッと舌打ちしショスナトを睨んだ。
「分かってるのか?私は正規の手順を踏まず、所長にお前の上司の不正を密告しようとしてるんだぞ」
『ミーシャは私が止めた所で止まりませんからね。』
「…」
じっと睨み続ける。
ショスナトはそんなマキナから目を逸らす事もなくただただ変わらず微笑んでいる。
そして折れたマキナが顔を背けショスナトを手で払った。
「もういい、狐野郎には荷物をまとめておけと伝えろ」
『伝達する必要が?』
「お前は奴の秘書だろう?今ここでの私の言動は報告するに値すべき問題だ。」
『私の可愛いミーシャ。一つ訂正します。私はこの廊下で誰とも会っていません。』
目をぱちぱちとさせるマキナ。
ショスナトはそんなマキナの横を通ると互いに背を向けた状態で足を止めた。
『ねぇミーシャ。今貴方は本当に誰かと会いました?』
「…ふっ」
『ミーシャったらいつも私が見ていない時に笑いますね…』
「おいショスナト。いい加減ミーシャ(小熊)と呼ぶのを止めろ。
お前じゃなかったら今頃この刀の錆になっているぞ」
『分かりましたミーシャ。』
「今日は見逃してやる。」
カツカツと軽快な音を立て歩き去っていくマキナ。
ショスナトは微笑みを顔から剥がし『ありがとうございます』と零すと内ポケットから取り出した首錠を自身の首にはめた。
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2020