嚆矢濫觴
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「で?なんでこんなにボロボロなの?」
執務室で自身の椅子に座る玉木は目の前で机に座って見下ろしてくるショスナトに訊いた。
『レチッドエッグの寝起きが悪くて。』
「ふぅん」
訊いたわりに大した関心もなさげな玉木はショスナトの腕に巻かれた包帯のテープを取る。
『…突然起きたと思ったらメチャクチャにやってくれたよ。
機材は爆発するし、部下はやられるし、スプリンクラーが作動して滑ってコケて擦りむくし…』
「コケたの?あ、だからヒザこんなになってるのか」
はぁぁ、とショスナトはわざとらしくため息をつくが玉木は可笑しそうに笑いながら腕に巻いてある包帯を取った。
その様子を眺めながらショスナトは玉木の頭を撫でる。
「痛かった?ショスナトがコケる所見たかったなー」
『痛かったけど常長が見たいならまたコケても良いよ』
「えー?ほんとー?」
ふふっと笑う玉木。
ショスナトの腕は既に包帯もガーゼも取られ、痛々しい傷が露わになっている。
玉木は腕を引き寄せ、乱暴にガーゼを剥がした為にまた出血し始めたショスナトの腕にべろりと舌を這わした。
『…常長』
傷を這う痛みからなのか息が熱を纏うショスナトが玉木の髪に指を通す。
ゆっくりと丁寧に傷を這う舌。
玉木は少しの間続けると、満足した様にパッと腕を離し顔を上げた。
「マザーグースシステムのエラーは原因究明中。何か手がかりになりそうな事あったら連絡してあげて」
『それは残念』
「やめた事?」
ニヤリとする玉木に否定もせずショスナトはふっと笑った。
「僕って今日忙しいんだよねェ」
『五十嵐丸太の引き抜きに?』
「っやっぱりあの場にいたのか?」
『彼の手から罪の枝が飛んでレチッドエッグの頭に当たるのを見た』
「……」
目を見開き笑みを浮かべる玉木。
「レチッドエッグに二度も遭遇し、その上攻撃もして尚も殺されていない…」
『彼の事は今鷹見羊が見張っているんでしょう?』
「あぁ。あれはカストさえ与えておけば何でもする」
顎に手を当て意識をガンタに向ける玉木を横目に机から降りるショスナト。
ショスナトも少し考え込む様に視線を左下へやり、うんと1人で頷いた。
『もう少しで死肉祭の時間よね』
「着替える時間はあるよ」
煤だらけでボロボロの服を見て告げる玉木。
ショスナトはそれを乱暴に破り脱ぐと玉木のジャケットを引っ張る。
諦めた様にふぅと息をつき玉木はジャケットを脱いで渡す。
『今日は私も忙しいみたい。』
「観ないの?」
『首錠がない姿を晒したから今から修正作業に入るわ。』
「首錠?」
ジャケットを羽織り満足気なショスナトにどういうことかと玉木は首を捻った。
「僕専属の秘書である君が?」
『そう。常長だけの私が。』
「何企んでる?」
『楽しそうなこと』
「ふぅん…」
にこりと微笑むショスナトが着るジャケットに手をかけ、ボタンを留める玉木。
嬉しそうにそれを眺めるショスナトは玉木のネクタイの傾きを直した。
「ま、構わないよ。観客には適当に言っとくし。」
『ありがとう』
「でも誰かに会うならその前に着替える事だね。今のショスナト露出魔にしか見えないから。」
『うふ、そうする』
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2020