嚆矢濫觴
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各施設が緊急封鎖されるとの放送が監獄中に響きショスナトは肩を落とした。
『ミーシャったら張り切りすぎね』
5分以内に各監房に戻る様指示がなされる中、5580号・五十嵐丸太のみは出頭が命じられている。
また面倒事かと顔を顰める医師から替えのワイシャツを受けとったショスナトは、医務室から出ると通り掛かった看守にそれを押し付けある部屋を目指した。
慌ただしく駆け回る囚人達は状況が理解できず不安を顔に浮かべている。
五十嵐丸太。
彼が右手から放ったアレを間近で見たショスナトはこのまま暫く傍で観察を続けるつもりでいたが、ガンタが飛び出した後に一切の報告を怠っている事を思い出し諦めた。
『折角だしもう少し見てみたかったなぁ…』
「おいそこのお前!」
『はい?』
「女の監房はあっちだ。ここで何してる?」
『あら…』
若い看守が1人ショスナトへと向かって歩いてくる。
睨みつけてくる看守にショスナトはにこりと微笑み両手をあげた。
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執務室の扉をノックする音に玉木は先程の彼が戻って来たのかと机の上のボタンを押した。
「忘れ物ですか?」そう告げる為に吸った息は開いた扉の向こうに立っていた人物に行き場を失いピタリと止まる。
「…ふはっ」
自然と零れる笑み。
玉木は立ち上がると机の前にまわり、部屋へ入ってくる人物へ向けて両手を大きく広げた。
スタスタと近付いてくるその人物は玉木の目の前で止まる。
玉木はその腰を引き寄せ、反対の手でそっと彼女の頬を撫でた。
『ただいま、常長』
「おかえり。ショスナト」
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2020