嚆矢濫觴
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忙しなく鳴り響く不快な警報音。
その中で水浸しになりながら、モニターを見つめ笑みを浮かべる玉木に1人の研究員が叫んだ。
「プロモータ!!」
「なんだ」
「信号発見しました!」
「どこにいる?」
「そっ、…それが、先程の罪の枝の反応のすぐ近くで…」
「…なんだと?」
スッ、と浮かべていた笑みを消し、研究員を睨むように振り向く玉木。
「それで?」と続ける玉木に研究員はカタカタと震えながらモニターを見た。
「彼女はどこにいる?」
「…は、発見と言っても見つけたのは端末の信号だけでして、それも衝撃のせいかたった今消滅してしまい…」
「監視カメラの映像は?」
「す、すぐに確認します!」
「……」
拳を固め、「急げ」と研究員を手で払う玉木。
見渡せば壊れたモニタに諸々の機器。
この部屋に残った研究員と設備では、見つけるどころかまともに捜す手立ても整いそうになかった。
ガンっと机に拳を落とし、玉木は前髪をかきあげた。
「何処にいる……」
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胸ポケットに入っていたネームタグとカードキーを折り曲げゴミ箱に放って、ショスナトはそっとカーテンを開けた。
『失礼します。起きられました?』
「あっ!えっと…さっきのお姉さん!」
『ショスナトです。もう起きても大丈夫なんですか?』
「全然っ!あ、おれ、五十嵐丸太です。ショスナトさんこそ怪我は?」
『私は平気です。助けていただいて有難うございました。』
深々と頭を下げるショスナト。
至る所に包帯が巻かれボロボロのその姿を痛ましそうに見ていたガンタは慌てて首を振った。
「いやっ、俺、…何もしてないし…」
そう言って俯き毛布を握るガンタの手にショスナトはそっと手を重ねた。
ビクッと身体を固まらせ真っ赤な顔でショスナトを見上げるガンタ。
「!!?」
『いいえ?お陰で私は死なずに済みましたよ。』
「…っ…」
優しく語りかけるショスナトに困ったような考え込むような顔で再度俯いてしまうガンタ。
状況が掴めていないシロはその光景をただ見つめ、俯くガンタを心配そうに覗き込んだ。
と不意に耳に入る他の患者の会話。
「学校の怪談かソレ?」
「……きっとあいつだ オレ…見たことあんだよ
4年ほど前…あんな風に血が帯みたいに舞って工場の壁吹っとばした奴見たことあんだよ」
あまり大声で話せない、と潜めるような声色ながらも狭い室内ではよく響く。
ショスナトはそれを聞きながら片眉を上げ何かを思い出した様に頷いた。
そして固まっているガンタに微笑みかけた。
『…そういえば胸を押さえていましたけど、』
「すいません、俺ちょっと!」
ショスナトの言葉に被せるようにベッドから勢いよく飛び出すガンタ。
驚いたショスナトが名前を呼ぶが振り向きもせず走り去ってしまう。
『……。今のは追うべきだったかな?』
キョトン、と首を傾げるショスナトはどうするでもなくベッドに腰掛けうんと伸びをした。
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2020