嚆矢濫觴
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入室申請の音が部屋に響き、ショスナトはそっと玉木から離れた。
「鍵かけてたの?」
『私の素敵な笑顔を他の人に見せたくないからね』
「ショスナトがこんな人だって知ったら皆幻滅するんじゃない?」
『どういう意味?』
じろりと玉木を睨むショスナトの前で扉が開き高島が入ってくる。
ショスナトの顔を見て「しまった」とばかりに玉木をチラリと見る高島は、どう見ても勘違いをしていた。
「出直します」
「構わないよ。あ、ショスナトはもう行っていいよ。いってらっしゃい。」
『はい。』
それだけ言うとヘッドセットを装着しなおし椅子にもたれ掛かる玉木。
高島はショスナトに近づくと声を抑えながら話しかけた。
「プロモータ何しでかしたんですか」
『え?』
「ショスナトさんが睨むなんてよっぽどでしょ?大丈夫です?」
高島の心配そうな顔を見てショスナトは苦笑した。
DWでショスナトと玉木の関係について知っている者はいない。
前衛的で幼稚な趣味をもつ上行動派な玉木の隣に立ちその全ての始末をサラリとこなすショスナト。
ショスナトは玉木の秘書というよりは子守りのようで、近しい部下程ショスナトの心中を察し心配していた。
『大丈夫です。少し意見の食い違いがあっただけですよ。』
「これから潜入だっていうのに…」
『留守中はプロモータの事頼みますね、高島さん』
「うへぇ…」
げんなりした様子で肩を落とす高島。
ショスナトは接客中の玉木を見つめ、高島の肩を叩いて扉へと向かう。
『机に出したオモチャは自分で片付けさせて下さい。』
「…完璧子供じゃないですかぁ…」
『仕事は完璧ですから。』
「それに関しては尊敬してますけど」
『それなら安心です。』
部屋を出る際少し後ろを振り向くと、高島が呆れた顔で玉木を見ておりショスナトは微笑み扉を閉めた。
エレベーターに乗り、地下へと向かう。
静かな廊下には微かに何かが崩れ落ちる音と振動が伝わってきていた。
今はクロウとウッドペッカーが戦っている。
『…あ、今日の死肉祭でクロウ死んだらどうしよ。』
ピタリと足を止める。
しまった、と腰に手を当てたショスナトはしかしすぐに歩き出した。
『まぁ生き延びた方に媚びれば良いか。』
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