裏方とヒーロー
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「ショスナト?」
『…ロジャース?』
―今日は朝からツイてない日だったんだから、友人との再会なんてハッピーな事も全ては最低に繋がる事を予想しなくてはならなかったんだ。
なのに呑気に笑顔のロジャースと肩まで組んで喜んだから、俺の気分も急降下する羽目になった。
◇
『…いやこれは流石に夢だ』
これが今日の第一声。
鳴る筈だったアラームは鳴らず、寝癖のついた頭で家を飛び出した。
遅刻はギリギリ免れそうだと車に乗り込む。
するとこのタイミングでエンジントラブル。
今度は煙をあげる車を飛び出して、迎えを頼もうと同僚に電話したが呼び出し中に充電が切れた。
こんな不幸な日があるか?
半羽涙目になりながら大通りまで走るも信号全てに引っかかり、やっと拾えたタクシーは態度が悪い上に道を間違え結局見事に大遅刻。
汗だくでネクタイも曲がっている俺が部屋に入ると物凄い形相で上司が睨みあげてきた。
「何ですその格好…もうここは良いから、今すぐこの書類をフューリー長官の元へ。」
そう言って渡されるファイル。
この寝癖頭で?と聞き返しかけ慌てて口を閉ざし、その後移動中のヘリで一体何個の不幸が重なったか数えた。
まだ半日も経ってないのに片手じゃ足りない。
◇
「久しぶり。元気そうだ」
『ロジャースこそ!相変わらず良い身体してるな』
「……」
長官への挨拶もそこそこに、肩を叩くロジャースの力に若干耐えながら再会を喜んでいると、自分に視線が向けられている事に気付く。
ブルース・バナー。
直接話した事はないが、彼の事は知っていた。
なんていったって変身した彼に一度ライフルを向けたことがある。
ふと空気と化していた長官がバナー博士の方へと俺を呼ぶ。
「博士、彼はショスナト・クライスラー。」
「あぁ、彼がさっき言っていた」
『初めましてバナー博士。クライスラーです。』
「こちらこそ。これから宜しく。」
握手をと手を差し出すと笑顔で博士は人間らしい程よい力で握り返してきた。
どうやら話題に上がっていたようだが、それには嫌な予感しかしない。
『…長官?』
「そろそろモニターも飽きたろう?」
『…私は先日異動したばかりですが?』
「忘れたのか。まず最初の任務だと言ったぞ」
ゆっくりと会話を思い出す。
ロジャースの監視役を指名された日、確かに長官はそう言っていた。
『なんてこった…』
「この任務、ショスナトもいるのか?」
『よく分からんがそうらしい』
肩を落とす俺をよそに事態がイマイチ飲み込めていないロジャース。
『お手上げだ』と両手を肩の位置まで上げると、ハイタッチと勘違いした彼に手を打たれた。
そして乾いた音が部屋に響く。
…バートンに戻らないと断言してから何日経っただろうか。
背を向けてスマートに決めたというのに。
きっと笑われる。
鼻で笑われ、めいっぱい皮肉を言われるだろう。
だが、もう、どうしようも無い。
『…こちらこそ、これから宜しくお願いします。バナー博士。』
遅れた返事を返すと、博士は優しく微笑んだ。
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20230829添削