裏方とヒーロー
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「隊長、虎の目と鷹の目って、一体どっちが強いんです?」
「わっ、ばか!」
「……」
『あのなぁ…鷹は地に落ちれば戦えない。虎は空を飛べやしない。
どっちとか無いさ。どっちかである必要も無い。
彼がいるから俺は戦える。彼だって、そうだろうよ。』
「……」
◇
『………げ』
ショスナトはそう呟くと、くるりと来た道を引き返した。
「おい、待て!ショスナト!」
『……お疲れ様です。バートン。』
「…感動の再会って顔じゃないな」
『すみません、急いでいるので。』
「待てって!」
慌てた声で呼び止めるクリント・バートンは尚も去って行こうとするショスナトの腕を掴み逃走を阻む。
ショスナトは苦々しい表情で振り向き唸った。
『なんです?』
「お前部隊抜けたんだって?」
『…あんなの、ムキムキのエージェントが仲良しグループ組まされてただけですよ』
「特殊部隊だったろ。お前は隊長だったし」
『S.H.I.E.L.D自体が特殊です。』
いつか誰かにも言った台詞だと思いながら、ショスナトは自らバートンに突っかかっている様なものだと口を閉ざした。
バートンはその姿を頭からつま先までしげしげと眺める。
「憧れの"スーツ野郎"か」
『えぇ』
これこそ"エージェント"だ。と胸を誇らしげに張るショスナトをバートンは鼻で笑い、そしてすぐに真剣な表情を浮かべた。
「虎がスーツ着てモニター睨んでるなんて」
『…元々パラミリタリーは私には向いてなかったんですよ。貴方とはちがう。』
「…虎は空を飛べないって?」
『えぇ。タイガーアイは鷹にはなれない。』
「鷹は地に落ちれば戦えない。どっちかである必要はない。」
昔自分が言った言葉を口にするバートンに少し驚き、苦笑するショスナト。
『でもバートンは落ちないでしょう?』
「お前がいないのは俺にとって大きな痛手だ」
『貴方らしくない過大な評価をどうも。』
真剣な面持ちで話すバートンに張り付けた笑みを向けるショスナト。
バートンはそれを見て不機嫌そうに顔を歪めた。
「…俺はショスナトがいると安心できた。信頼してるし、背を預けるに足る存在だ」
『…本当にバートンらしくないですね。常に他人を影から見下ろしていた貴方はどこに?』
「お前は他人じゃない」
『他人ですよ。兎に角、私は戻りません。部隊には優秀な者が揃ってる。これからは彼らに安心して下さい。』
一瞬怪訝そうに眉を顰めるショスナト。
だがすぐに切り替え、時間を確認するとくるりと身を翻し足を進める。
「…っショスナト!お前がいるから俺は戦える。お前だってそうだろ?」
バートンが叫ぶ。
広い廊下にその声は反響し、しかしショスナトには響かず背を向けたまま先の廊下を進んだ。
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20230829
添削