裏方とヒーロー
あなたの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……。」
『何するんです』
鋭い目でショスナトはロジャースを睨んだ。
その手には先程ロジャースが投げた瓶が握られており、割れた瓶底から中身がボトボトと床へ溢れ落ちていた。
「…良い反応だ」
『……。俺、子供の頃確かにあんたに憧れてたけど。背中にこんな物投げてくる様な奴だとは思わなかったな』
「すまない、だけど君なら避けるだろうと思ったんだ」
申し訳なさそうに眉を下げ、顔の横に両手の平を上げて降参のポーズを取るロジャース。
そしてそのままチラリと自身の背後に目をやって笑った。
「…だけど思ってた以上だった。」
『俺は当てる気でやったよ』
はぁ、とわざとらしく大きな溜息をつくショスナト。
ロジャースの後ろには壁がある。
そこにはコーラが飛び散り、足元には破片が転がっていた。
――ロジャースが投げたのは、1本ではなく2本の瓶。
それはタイミングも位置もずらし投げられたが、ショスナトは先に放たれた1本を後ろ手で掴み取るとバッティングの要領で2本目をロジャース目掛け打ったのだ。
そしてそれがロジャースの頭のすぐ横を通り、壁に激突しガシャンッと音を立てた。
「本当はもう君の経歴や評価は聞いてたんだ。
だから君に来てもらいたかったし、残ってもらいたい」
『その評価にクライスラーは裏方志望のキレやすい問題児って無かった?』
「ショスナト、君が良いんだ。」
持っていた瓶を床に放り、出ていこうとするショスナトの腕を掴むロジャース。
ショスナトはビクともしないその握力に、少し身長の高いロジャースを見上げた。
『俺より優秀な奴はごまんといる。俺はコーヒー片手にPC前に構える名も無き男になるんだ。此処は派手すぎる。』
「そんな事は許されない。私が許さない。」
少し声を荒げるロジャースにショスナトは驚き目を大きく見開いた。
そして首を傾げる。
「…君が良いんだ。」
『…お暇なヒーロー様は特殊部隊にいた男呼んではデスマッチでもしてるのか?それとも殴られるのが趣味?』
「君は実戦経験が豊富だし、咄嗟の判断力も備わってる。状況を把握するのも早い。仲間の信頼だって厚い。君みたいな人は前線にいなきゃダメだ」
『…あんたの監視役をやれって話じゃなかったのか?』
熱を増すロジャースとは反対に冷めた反応のショスナト。
ロジャースはハッとし、目を逸らすとすぐにまたショスナトを見た。
「君の話を聞きたいんだ。戦い方を知りたい。報告書は読んだけど、君から直接聞きたい。」
『アンタには俺の話なんてママゴトみたいに聞こえると思うよ』
「私には君が必要なんだ」
まさか、と笑うショスナトはロジャースの真剣な表情に笑うのをやめた。
腕を掴む手に自身の手を重ね、ゆっくりと外させる。
「少しの間で良い。此処に残って、それから考えてみてくれないか?」
『……。』
「それにその方が君への風当たりも良いと思う。」
『…それは言えてる』
「だろう?」
『…では、1週間。任務を全うします。』
先程とは違う方向へと歩き出し、壁にかかったカレンダーと向かい合うショスナト。
すると1週間後の日付に印を付けた。
『改めて宜しくお願いします。ロジャース。』
「…宜しく。ショスナト。」
__________
20230828添削