裏方とヒーロー
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任務から帰還したショスナトは息つく間もなく、早々に上司に呼び出しを受けた。
仲間達は「ヘマしたな」「ご愁傷様」と笑いながら彼を見送り、ショスナトはその薄情さに内心傷付きながらも上司の元へと向かった。
しかしそこに待っていたのはいつもニヤついた煙草臭い上司ではなく、S.H.I.E.L.Dの長官ニック・フューリーだった。
「君の話はマックスから聞いている。優秀なエージェントだと、太鼓判を押していた」
『いえ…運と部下に恵まれただけです』
自己紹介が済み、本題とばかりに話し出すフューリーに未だ状況が飲み込めていない様子のショスナト。
「S.H.I.E.L.D内で君は有名だ。君にならばこの任務はぴったりだろう。」
『ええと、期待に沿えられるよう精進します』
「なんだ?…まさか話を聞いていないのか?」
ショスナトのしどろもどろといった反応にフューリーは怪訝な表情を浮かべ、ショスナトは首を捻った。
『私は情報管理部への異動希望を出していたので、それが通ったのかと…違うのでしょうか?』
「…今まで最前線にいた工作員が情報管理?」
ショスナトは頷く。
「変わった冗談だ。」そう言ってフューリーが笑うと、ショスナトは少し顔をしかめ咳払いをした。
『いえ。本気です。裏方が昔からの夢なんです』
「夢?」
真剣な表情のショスナトを見てフューリーは今度は吹き出した。
『…違うのであれば、一体何なんでしょうか。フューリー長官』
苛立ちが隠しきれていないショスナトの声にフューリーは笑うのをやめ、机に置かれた書類を指さした。
「そう難しいものではない。君のいた部隊に比べれば、ぬるい仕事だ」
『と言いますと?』
「キャプテンアメリカを知っているか?」
『は?』
突然のヒーローの名前にショスナトは固まる。
回答を急かすようにフューリーが頷くとショスナトは戸惑いながらも首を縦に振った。
『…子供のころ、フィギュアを持っていました。』
「ほう?裏方が夢なのにか?」
『…子供はヒーローが好きなものですから』
意地悪く微笑むフューリー。
ショスナトは質問の意図が分からず、先程から笑って話すフューリーに冷や汗が止まらなかった。
「君にはそのキャプテンアメリカの監視役を任せたい」
『……はい?』
「あぁ、監視役といってもお偉方への形式的なものだ。彼はアンティーク品だからな、現代のアメリカを教えてやってくれ」
『え、ちょ、待ってください』
デスクに置かれた薄いファイルを手に取り、ショスナトに突き出しながらフューリーは微笑む。
ショスナトはそれを受け取らず手を振った。
「どうした?」
『待ってください。人形の監視ですか?』
「人形じゃないさ。キャプテンアメリカ本人だ。」
フューリーはにやりと意地悪く笑い、ショスナトはいよいよ冗談と真実の判別が出来ず困惑した。
目頭を押さえ一旦息をつくショスナト。
それを見てフューリーは声を上げ笑った。
「冗談じゃないぞ。君にしか頼めん特殊な任務だ。」
『S.H.I.E.L.D自体が特殊です』
「尚更君にしか頼めん。優秀なエージェントであるクライスラーにしかな。」
『……』
そう言ってもう一度ショスナトにファイルを突き出す。
ショスナトは少し悩んだが今度こそそれを渋々といった様子で受け取った。
『…まず私は何をすれば?』
ショスナトがファイルを開くとその1ページ目には“Avengers”と書いてある。
顔を上げフューリーを見ると今ショスナトが入ってきた扉とは違う頑丈そうな扉を指差していた。
「部屋はその扉を入って上に上がり、右の突き当たりだ。」
『は?』
「早くしないと彼がまた眠りにつくぞ」
今度は冗談と分かるトーンで言い、笑うフューリー。
しかしショスナトは全く笑いかえしはせず、不服そうに視線を返した。
『その部屋に行き、人形を監視していれば良いんですね?』
「まずはな。」
『……』
「まず」と強調されショスナトは少し考え込む様にフューリーを眺めたが、何か得られる訳でもなく苦笑してフューリーに敬礼した。
『すぐに向かいます。』
ショスナトはこの時既に部隊からの異動を希望した事を後悔していた。
どうやら何か大きな計画に巻き込まれつつある。
言われた通り進み、その先にあった重厚な扉を前に大きく息を吐いた。
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20230827添削