疾走STARロマンス
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クリスマスがいつもの店に入るとカウンターに座るバーニーがまず目にはいった。
そしてボックス席には不機嫌な顔でショスナトが座っている。
クリスマスがショスナトの元へ向かおうとすると、バーニーが「こっちだ」と手を振った。
「なんだ?何があった?」
「俺も分からん。」
はあ?と口を開く前に入口の扉が開いた。
その音にクリスマスとバーニーが顔を向けるとヤンが機嫌良さげに入ってくる。
そのまま2人に気付くことも無く真っ直ぐとショスナトの元へ歩いて行くヤン。
ショスナトはそれに対し今にも飛びかかりそうな形相で睨んだ。
『来たな泥棒!』
「おい、爽やかな朝の挨拶にしちゃ随分だな」
『うるさい。隣に来ないで。そこに立ってろ。』
「良いだろ別に。ところでショスナト、何か食いたい物は?」
『はあ?パエリアとステーキとクレームブリュレだけど何よ』
隣に座るヤンを睨みながらも素直に答えるショスナトに思わず笑いかけ、ヤンは口元を隠すと咳払いして続けた。
「じゃあ、食いに行こう。俺の奢りだ。」
『…ええ?』
「他のモンが良いか?」
『え、や?そうじゃなくて…どういう事?』
困惑するショスナト。
するとヤンはわざとらしく神妙な表情を浮かべ、ショスナトの肩に手を置いた。
「お詫びだよ。この前報酬を譲ってもらったろ?」
『あれは泥棒っていうんだ。犯罪だぞ。』
「そうだな。悪かったよ。いくら仲間といえど、泥棒の俺と飯は嫌か?」
『えっ?…いやそういう話じゃなく、別に嫌じゃないけど』
簡単に謝罪し仲間を強調するヤンに驚いたショスナトは、やはり困惑した様子で視線を泳がした。
それを見てヤンは姿勢を正しショスナトに微笑む。
「安心した。どれも良い店を知ってるんだ。今から行こう」
『えぇ?…本気で言ってる?』
「嘘ついてどうするんだ。ほら」
『そうだけど…』
ヤンが立ち上がり手を差し出すと、しばし迷いながらもショスナトはその手を取り立ち上がる。
それにヤンは満足気に頷くと「こっちだ」と店の外へとショスナトを連れ出して行った。
「「……。」」
そんな一部始終を傍観していたクリスマスとバーニー。
二人は顔を見合わせた。
「ヤンがナンパ?」
「らしくない。報酬の横取りはアイツらしいが」
「そうだな…何見てんだ?」
クリスマスがバーニーの見ている携帯を覗き込む。
そこには様々なレトロな玩具の画像が映っており、どれも高額な値が付けられていた。
「なんだ?それ」
「…野郎、1番のお宝持ってきやがった」
バーニーは何か分かったのか驚愕と落胆の混ざった声を漏らし、携帯をカウンターに放った。
「ショスナトのことか?まぁ、ヤンも男だったってことだろ」
「そっちじゃねえ。これ見ろ」
クリスマスが怪訝そうに携帯を覗き込む。
そこに映っていたのはショスナトの仇が開けた金庫にあったスター○ォーズのフィギュア。
「これがショスナトの報酬だった」
「あの時金庫にあった古くて汚ねえおもちゃだろ?新人イジメか?」
「あいつが充分だって言ったんだ。他は受け取らなかった。良いから数字見ろ。」
「0の数くらい数えられるだろ」と余計な一言をつけ急かすバーニー。
クリスマスは顔を顰めながら画面を覗き、バーニーと同じく驚きに目を見開いた。
「4万ドル…!」
「あぁ。この古くて汚ねえ玩具がだ。」
バッと、店の出入口を見るクリスマス。
既に二人の姿はどこにも見えない。
「…ショスナトこの事知ってんのか?」
「知らねえだろうよ。じゃなきゃ餌で釣られない」
「…そりゃ飯くらい奢っても痒くもねぇな」
「奢っても良いってくらい機嫌も良くなる。やられたな」
信じられない、とクリスマスは顎を撫で先程のヤンの様子を思い返していた。
「まぁ、ショスナトも満足そうだ。最初が悪かったしな。これで少しでも打ち解けりゃ良いだろ」
「…あんな守銭奴と打ち解ける必要ねぇだろ」
クリスマスの言葉に「ヤキモチか?」とバーニーは笑うと葉巻に火をつけた。
クリスマスは鼻を慣らし、指を忙しなく動かしながらチラチラと出入口を眺めた。
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20230829添削