疾走STARロマンス
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「それでこの女はなんなんだ」
『何この激チビうざい。』
「激チビはお前だ!!」
ヤンの叫ぶ声が店内に響いた。
「言っただろ、新しい仲間だよ」
「そうそう、なァ?お姫さま」
『死ねクリスマス』
ドガッとテーブルの下から鈍い音が聞こえ、途端クリスマスがテーブルに突っ伏した。
先日の任務から戻り、新たな仲間であるショスナトとエクスペンダブルズの一同はいつもの店に集まっていた。
そこで待っていたのがイン・ヤン。
メンバーの1人で、今回の任務に同行しなかった唯一の人間。
そして唯一ショスナトの仲間入りを認めない人間だった。
「お姫さまはご機嫌だな…」
『ねぇ、そのお姫さまってのやめない?意味わかんないし』
「はあ?王子様のパートナーはお姫様だろ」
『…クリスマスって実はどこかの王子なの?』
「違う。お前が言っただろ?王子様って」
ショスナトの問いに一同が「ありえない」と首を横に振り、テーブルに突っ伏していたクリスマスも復活して否定した。
『私が?クリスマスを?いつ?』
「王子様助けてくださいって。縛られてた時」
『っ!?』
驚いて目を見開くショスナト。
耳まで一瞬で赤くなったかと思うと、クリスマスを鋭く睨んだ。
「まさか記憶にないのか?」
『…無かったらこんな顔になってない。』
「最初子供かと思った。可愛いお願いだったから」
『死ねクリスマス。』
「落ち着けよお姫様」
『いや、殺す。クリスマス。殺す。』
「落ち着けって」
『わかった。じゃあクリスマスは人生にお別れして』
「できるか!!」
空になったビール瓶を高く構えるショスナト。
そんな彼女を「まぁまぁ」と宥めはしても、本気でクリスマスを助けようとする者は誰もいない。
終わりのない雑談と言えるそのやり取りを皆ただ楽しんでいた。
「それで、この女は?」
その光景にヤンはとうとう痺れを切らし口を開く。
初めにした質問を、今度は隣で酒を飲んでいたトールにする。
トールは面倒くさいとばかりにため息をつき、しかし簡単に説明を始めた。
「…それだけで仲間?」
『良かった、疑問をもつ人がいて安心したよ。今更だけど。』
黙って聞いていたヤンは終始しかめっ面で、話が終わるとショスナトをじろりと睨む。
ショスナトはそれに対しホッとした様に顔を緩ませた。
「行く宛ないって言うからな」
「裏切るかもしれない。この女がどんな奴かも分からないんだぞ」
「裏切り者を追ってたくらいだし大丈夫だろ」
「オーストラリア軍にいたらしいぜ。」
「中々良い動きしてた。お前と似てるよ」
「…おいバーニー。本気か?」
次々と喋るメンバーにヤンは不快そうに顔を歪め、我関せずといった風にビールを煽っているバーニーを見た。
バーニーが口元を拭いながら「本気だ」と頷くと、ヤンは大袈裟なため息をつき、ショスナトを指差した。
「報酬は出してないよな?こんなガキに」
「おい、やっぱ金の話だ」
「お前ホントそればっかりだな」
「一番の貢献者だ。仲間には報酬がある」
「はあ!?」
呆れるクリスマスとガンナー。
ヤンは勢いよく立ち上がると「俺のはないのにか!?」と叫んだ。
その際ヤンの隣にいたガンナーが驚き、テーブルに置かれた数本のビールを倒しショスナトの方へと流れていく。
『うわ!?』
「わり、おいシーザーその服取ってくれ」
「おい。いくら貰った?」
「ホラよショスナト。これで拭け」
「ありがとシーザー。助かったー」
「それ俺のシャツなんだけど?」
ヤンがショスナトに声をかけるも周囲が賑やかしく声が届かない。
それどころかシャツでテーブルを拭いた為、持ち主のクリスマスが怒りより一層騒がしくなった。
「こまけぇ事言うなよ」
『そうだぞ王子様のくせに』
「みみっちい王子様だな」
「うるせェ馬鹿共」
「……」
ショスナトは既に馴染みきった様子でメンバー達と笑いあっている。
ヤンはそれを見て阿呆らしいと口を噤み椅子に座りなおした。
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20230828添削