疾走STARロマンス
あなたの名前
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無理矢理乗せられた飛行機の中で無理矢理仲間達を紹介され、名前を訊かれる事も無いままに早一時間。
売られるか乱暴されるのであれば、こんな空の上で抵抗もアホらしい。
そう思って黙ってたがどうやらそうもいかないようだ。
「なぁお姫サマよ」
『…なに』
乗り心地が思いのほか良い悪趣味な飛行機の中で、クリスマスだなんて名乗ったお祭り頭のダガーナイフが声をかけてきた。
「2つ質問がある。1つ目、今の所属は?」
『…復讐の為に軍は出た。それも結構前だし、探してくれる仲間はいない』
「そうか。じゃあ2つ目だ。帰る場所はあるか?」
『…何その質問。仲間も帰る場所も無い方が興奮できるの?』
質問の意図が分からず、クリスマスを睨む。
クリスマスは何故か困った様に首を捻って、少し考えた後質問を続けた。
「これから行く宛は?」
『あぁ…無いよ。っていうか拉致っといて何?』
状況が把握できず苛々が募る。
クリスマスは一瞬視線を操縦席に座るヒゲ…バーニーに向けた。
当たり前だがバーニーは気付かない。
するとクリスマスが手を差し出してきた。
『ん?』
「握手。」
『…なんで?』
逆らっても面倒か、と差し出されたクリスマスの手を軽く握った。
途端笑顔になるクリスマス。
「これから宜しく。新たな仲間のお姫サマ」
そう言ってクリスマスは私の手を握る力を強くした。
『………ラブドール的な?』
「いやいや、お前腕立ちそうだし。」
『な、仲間?ちょっと待って、仲間?!』
「そうだって。行く宛ないんだろ?」
『それとこれとどう関係が…!』
広い機内で響く私の声に反応したのか、今まで黙っていたシーザーとガンナーとトールが腰を浮かした。
そうだ。
彼らの関係性はまだ掴めていないが、クリスマスが隊長だろうと気まぐれでこんな事決められちゃ堪らないはず。
私に怒りが向く可能性もある、と少し腹を括り3人を見上げた。
「よろしくな。」
「随分カワイイ仲間だ。よろしく」
「なあ、お前もう少し筋肉付けた方が良いぞ。ちび猿2号」
「まぁ宜しくな」と続けるガンナーが最後に頭を小突いてきたが、それが痛く感じないくらいには意味が分からない。
『…ちょっと待って…いくら隊長とはいえ反対は?しないの?』
「あぁそうだった、…バーニー!良いだろ?」
「ぁあ?」
私の言葉で思い出したのかクリスマスが操縦席のバーニーに声をかける。
バーニーは気だるそうな声で唸り、本当に考えたのか不安になるくらいの速さで答えた。
「構わねえよ。…駄目っつったって利かねえだろクソガキ共」
「まぁな」
「って事だから」と満面の笑みを向けて来るクリスマス。
良いのか隊長?っていうかバーニーが隊長か!
『いやいや!こんなノリで仲間って…公園で遊ぶ子供じゃあるまいし…!』
「おい」
『はい!?』
首の皮が繋がったのは確かだが、どうにか正気に戻らないかと皆に叫ぶ。
するといくらか低いトーンのバーニーの声が聞こえ思わず姿勢を正してしまった。
振り向くとミラー越しに目が合う。
「地の果てまで追って復讐する程憎い野郎が、お前の人生の全てか?」
『…え?』
「もしそうならとっとと降りろ」
手で払われる。
「だがな、」とバーニーは続けた。
「まだ死にたくないなら。そこのくだらねえ馬鹿共と一緒に生きてみろ。
復讐に生きるのも1つの人生だ。否定はしない。だが、もう終わっただろう?お前には他に大切なもんがあった筈だ。」
『…もう無い。大切なものは何も。』
「だからってツバ吐くのか?背を向けんのか。」
『……』
「考えろ。…恩は忘れないってんならな」
ふと優しい穏やかな笑みを浮かべるバーニーに、不覚にも涙腺が反応してしまう。
大切な仲間たち。
命を賭して彼らが救ってくれた命、そして思い出は確かに私しか持ってない宝物だ。
「な、浸ってる所悪いけど、名前は?」
『は?今!?』
たしかに死ぬのは皆に唾を吐く最低な行為だ、としんみりしているとトールが人の良さそうな笑顔で聞いてきた。
『…私の名前はね、』
大体元上司も叫んでいたのだから覚えてて欲しい。
新しい仲間達に、大きなわざとらしい溜息をついた。
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20230826添削