疾走STARロマンス
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まぁ、私が後先考えずに飛び出したのが原因な事は分かる。
あと装備の確認を怠ったのも原因の一つ。
そして、
…どうしたら1人でこんな所まで来ようと思うんだ私は?
◇
『出してー』
妙に騒がしい扉の外にはか細い私の声なんて届いてないようだ。
薄暗く、カビ臭く、狭く汚く悪い所しか挙げようの無いこの部屋にはただ私の声が反響して落ちた。
『私、ほんと駄目人間…』
グデっと首を落とせば後ろ手に縛られた手首が痛んだ。
いくら頑張ろうと、結束バンドなんて切れる筈もない。
足は自由だが隠しナイフは没収され、椅子も固定式で逃げる術は浮かばない。
確か私は仲間の仇をとりに、この名前も知らない様な小さな国の奥地の廃ビルに潜入したのだ。
それが何故か大量の兵に見つかりここで尋問という名の拷問待ち。
私の人生、どこで間違ったんだろう?
こうして私は仲間達の仇も討てないまま果ててしまうんだろうか?
いやだ。それはいやだ、嫌に決まってる。
だけど、どうする?
…どうする事も出来はしない。
『…王子さま、助けてください』
この際容姿も性格も問わない。年齢も性別だって問いはしない。
助けてください。神様。仏様。ニンジンもちゃんと食べるから。
「もう大丈夫だぜ、お姫様」
『……え?』
プツン、という音と共に解放される両腕。
ふわり、と開いた扉から吹き抜ける風。
鼻にかかるような硝煙の香りと気配が背後で揺れた。
『っ、だ、誰っ?』
「…王子さま?」
「おいリー、何してる」
「囚われのお姫様助けてた。」
私の背後で2人の男の声と数人の足音がした。
一番に目に付いたのは、フレンチのベレー帽。
その次に、外からの照明で鈍く反射するダガーナイフ。
「人質か」
「さあな。奴等の味方じゃないのは確かだが」
唸るもう一人の男。彼は死角で姿が見えない。
2人はそのまま会話を始めた。
外からは銃声が聞こえる。
こいつら、侵入者?反逆者?
同じ日にこれだけの襲撃を受ける組織も中々ないだろう。
何にせよ、彼らに私は助けられたらしい。
『あの』
「ん?怪我ないか?」
『いえ。助けてくれてありがとうございました』
「気にすんな。コイツ女に鼻が利くってだけだ」
「おい」
『助かりました。本当に。これで目的を果たせます』
「目的?」
『このご恩は決して忘れません。では』
「「は?」」
椅子を飛び越え2人の横を通り抜け、出入り口を見張っていた彼らの仲間であろう人達をすり抜けて走った。
背後から何やら叫ぶ彼らの声。
分かっている。本当に申し訳ないと思っている。
だけど目的を果たさなければ死ねないし、モタモタしてまた奴に逃げられては堪らない。
至る所に転がる死体から武器は借りて、走った。