疾走STARロマンス
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『何よ、ビギナー』
壁に掛かるタトゥーの見本を見ていたショスナトの隣に立ったヤンは、すぐに近くにあったテーブルに腰掛けた。
「酔いつぶれやしないかと思ってね」
『…テーブルに座るような子供のくせに。私を子供扱いしないでよね』
ジロリとヤンを睨むと、ショスナトは鼻を鳴らして顔を背けた。
テーブルに腰を落ち着けたままヤンは苦笑。
ショスナトはまたビールを煽った。
「…なぁショスナト。そろそろ止めといた方が良いんじゃないか?」
『リトルマミー、私は自分の限界くらいちゃんと分かってるわ』
そんな事言って前科2犯だぞ、とヤンは思ったが言葉にはしなかった。
内心リーに悪態をつく。全く聞く耳を持ちそうにない。
その内にショスナトは新たなビールを開け思わず「見事」と言いたくなるような飲みっぷりを披露した。
これは本当にまずい。
そうヤンが焦り出した所で、ショスナトの肩越しにリーがこちらをチラチラと見ているのに気付いた。
「……」
『…何?人の顔ジロジロ見て』
「違う、俺は向こうの…、…いや。そうだな」
『?変なの』
小首を傾げて空の瓶をカウンターに置くショスナトの顔はアルコールのせいで随分赤い。
ヤンは自分も持っていたビールを一気に飲み干すと、ショスナトの隣に立った。
訝しそうにヤンを見上げるショスナトの目は、アルコールのせいで潤んでいる。
『何?』
「…俺が子供扱いしてると?」
『私の記憶が確かなら、そうね。』
「お前が子供ならガンナーはどうなる?赤ん坊か?」
吹き出しそうになるショスナト。
一瞬素直に笑ったかと思うと、思い出したように顰め面を作った。
そして手にしたビールを口に運ぼうとしたが、ヤンがその手を取り首を振った。
「もう今日はそのくらいにしておけ」
『子供の世話がしたいならベビーシッターになれば?』
「俺はガキなんかに興味ない」
ヤンを振り払おうとするショスナトの手を引き、自身へ引き寄せる。
酔って足取りが安定しないショスナトはよろめき、ヤンの身体にぶつかった。
『ちょっと、』
驚くショスナトがヤンの顔を見る。
お互い、息が当たる程の距離に顔がある。
ショスナトの潤んだ目がヤンを見、ヤンは熱っぽい瞳でショスナトを見つめた。
少しの間。
そしてヤンはゆっくりと、ショスナトの額にキスを落とした。
「…こういう意味だ。」
『…え…』
「分かったら潰れる前に帰って休め。潰れたいなら俺の家だ」
ショスナトが驚き固まっている間に素早い動きで出口へと向かうヤン。
その足取りは軽い。
『…え、…ちょ、ちょっとヤンっ!?』
ハッとしたショスナトが叫ぶが、それはヤンが出ていった後の扉が閉まった時だった。
唖然とするショスナトはその場に立ち尽くし、一部始終を見ていたトールが心配そうに近寄った。
「おい、大丈夫か?ショスナト」
『……今のって…』
「あぁ。だな。」
ショスナトの言葉を待たずにトールは頷く。
「随分な公開告白だった」とトールは内心唱えていた。
ショスナトはそれを見て悲しそうな、訳が分からないような、複雑な顔を浮かべた。
『…子供に興味ないのに、私の事は娘みたいに思ってるの?』
「は?」
『娘におやすみのキスをするお父さん、ってことでしょ…?』
「……」
『えぇ…?』と頭が痛そうに悩み始めるショスナトを見て、トールは頭が痛くなるのを感じた。
奥ではリーが手を叩いて笑っている。
トールはその日、珍しくヤンにメールを送った。
〔ヤン、お前はショスナトの父親になった。〕
ヤンからはすぐに返事がきた。
〔クソ。〕
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添削20260607
