疾走STARロマンス
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『…か…カルパッチョ……』
ヤンは目の前に広がる光景に既視感と脱力感を感じた。
「おい、起きろ。」
『……パス…タ…?』
「違う。起きろ。」
ベッドサイドに立つヤンは依然眠りにしがみつくショスナトを見下ろしながら大きなため息をついた。
今夜はさっきまでエクスペンダブルズメンバーで飲んでいたのだ。
(元はクリスマスとショスナトのデートの予定だった)
皆よく飲み、笑って、騒いで。
途中までは良かった。
だがそこにクリスマスの元カノなんていう来客が現れ。
クリスマスは半ば引き摺られる形で退散。
そこから段々と場も白け、気付けば店にはヤンとショスナトの2人だけになっていた。
そして以前のように飲み潰れたショスナトは、今夜もヤンのベッドを占拠し無防備に眠っていた。
「……忠告したからな」
大袈裟な程わざとらしくため息をつき、誰かが居るはずもないのにヤンは辺りをぐるりと見渡した。
いつもと変わらぬ自分の部屋。
だがベッドに横たわるショスナトの姿は異質で、見れば鼓動が微かに高鳴った。
ベッドに足をかけるとスプリングが軋む音が部屋に響く。
自分の腕の中にいるショスナトの寝顔。
無防備で安らかなその顔に、ヤンは堪え切れず笑みを零した。
「なんだって人のベッドでそんなに熟睡出来るんだ?」
ペチ、とショスナトのおでこを優しく叩く。
身じろぐものの、起きる気配のないショスナト。
ヤンはそれが可笑しく声を抑えて笑うが、その内ピタリと真剣な表情を浮かべ静かにショスナトの顔に自身の顔を近づけた。
ショスナトからは酒の匂いが強く臭う。
しかしそこに混じる、柔らかで魅惑的な香り。
「……」
『…ん………ぅ……』
喉元に顔を近づけフッと息をかけるとショスナトは身体を揺らし甘い息を漏らす。
ヤンはそれにビリビリと身体が反応するのを感じながら理性の元ショスナトの意識を取り戻そうとする。
「…ショスナト、」
『………ぅ……… ……パ…エリア』
「…また食い物か?」
肩を揺すると顔を顰めながらハッキリと声を発するショスナト。
しかし起きる気配はなく、ヤンは呆れた様に笑って首を振った。
頭を掻き、もう一度ショスナトの顔を覗く。
が、やはり変わらず規則正しい寝息と共に安心しきったショスナトの顔が見える。
「…この子ザル。勝手にしろ。」
流石に興醒めだとばかりにヤンは首を振って、ベッドから降りると前回同様ソファに足を向けた。
「…どういう生き方してたらあんなに寝てられるんだ?自意識過剰よりはマシだがそれにしちゃ限度があるだろ…」
ヤンは苛立ちとやるせなさから止まらない独り言を呟きながらクッションを並べ、環境を整えるとその内ソファに寝そべり目を瞑った。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽
ーヤンが視線を感じ目を開くと、目の前にはショスナトが立っていた。
「なんだ…起きたか?酔っ払い。」
『まだ寝てようか?意気地なし。』
「はあ?」
窓に目を向けるともう日が昇りきっていた。
眩しそうに目を細め、ヤンは若干まだ酒と眠気の残る頭で考える。
答えは出ない。
「…まさか朝食作れってんじゃないだろ」
『作ってあげても良かったけどもう作らない』
冗談のつもりで放った言葉に不服そうに顔を背けるショスナト。
誰が見ても機嫌が悪いのは確かだが、朝一番にそんな感情をぶつけられればヤンの気分も良くはない。
そんなヤンに気付いたのか偶然なのか、ショスナトはボソボソと口を開いた。
『…ってたのに』
「なんだ?聞こえない」
『…ヤン、この前"次はない"って言ってた』
「何の事だ?」
『嘘つき!』
「はあ?…………まさか、」
ヤンが以前クリスマスの前でしたやり取りを思い出した途端、ショスナトの投げたクッションが顔面を直撃する。
すぐさまそれを投げ落とし、ヤンが口を開こうとすると微かに顔を赤くしたショスナトがジロリと睨んだ。
『うそつき』
そう言い捨てると背中を向けベッドにダイブし布団にくるまるショスナト。
ヤンはしばらく呆然としながらその姿を見ていたがその内ベッドに恐る恐る近付いた。
「…おいショスナト」
『うるさい。寝るんだから早く帰って。』
「俺の家だぞ」
布団に包まれたショスナトに手を伸ばし、謝罪の意味を込め背中(姿が見えないが恐らく)を撫でる。
その手を払いのけられる事はないようで、ヤンは大きな猫の様だと感じたがそれを口に出すとまたショスナトが怒りそうな為グッと堪えた。
『…ヤン』
「なんだよ」
『私って魅力ない…?』
「…無かったら泊めてない」
不安そうなショスナトの声色に昨晩何をしようとし、どんな気持ちでソファで眠ったか、ヤンは全て吐き出してしまいたくなったがその気持ちを抑え優しく答えた。
『そっか』と嬉しそうな声が布団の中から聞こえ、ヤンは複雑な心境に苦笑いした。
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2024-12-02添削