疾走STARロマンス
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いつもと変わらない自宅の中、寝室にはいつもと違う光景が広がっていた。
『し、…舌平目……』
「………。」
ヤンは上着を脱ぎながら大きく息を吐いた。
――今日はフィギュアの詫びに、とショスナトを誘い食事に行きその後バーで飲んでいた。
美味い食事に美味い酒。
そして思いの外花が咲く会話。
そこまでは良かった。
バーに着けばグラスをことごとく空けていくショスナト。
『こんな水に酔う訳ない』と豪語したのは既に足元がおぼつかなくなっていた時のことで、その数分後にはカウンターに突っ伏した。
そしてどうにもならない彼女をヤンは家に連れて帰った。
『…マッシュ……ポテト……』
ううん、と唸りながらベッドの上を転がるショスナト。
ヤンは水を飲みながら無防備なその姿に呆れた。
「おい。」
『……』
「ショスナト。起きろ。」
『……』
いくら声をかけても規則正しい寝息は途切れない。
帰る途中も何度も声をかけ、身体を揺すったりもしていた。
それでも起きなかったのだ。
ヤンは諦め、今日はソファで寝ようと腹を括った。
しかしソファに向かう途中、ふと思い付き立ち止まった。
顎を撫でながらベッドへと足を向ける。
そしてベッドの端に腰掛けた。
「…据え膳、ってやつだぜ。ショスナト」
『……うぅん……』
「ん、起きたか?」
顔を近づけいやらしい笑みを口元に浮かべながら囁くヤン。
ショスナトは少し身じろぎ、ヤンはその顔にかかる髪をわざとらしく丁寧によけてやった。
うぅ、と唸るショスナト。
ちっとも起きやしない。
そうヤンが思った瞬間、拳が顔の横を通った。
『……何してる』
「…子守唄歌ってやろうかと思って」
『……。』
睨んでいるつもりらしいが一見何も考えていない様な顔で身じろぎ一つしないショスナトは、見方によっては開眼したまま眠っていた。
「起きてる?」
『寝ぼけてるのはどっち?』
「酔い潰れてたのはどっちだ?」
『…何かして殴られるのはあんた。』
顔の前で拳を固めて見せるショスナト。
真っ赤な顔で呂律も回っていない泥酔したショスナトは、誰が見ても少しも怖くないだろう。
だが酔って限度が分からなくなっている人間ほど怖いものはない。
ヤンは降参の意味で両手をパッと上げた。
「俺はソファで休ませてもらおう」
『よろしい』
何故か上から言い放つショスナトはそのまま枕を抱え込み、すぐにまた眠りについた。
ヤンはそれをしばらく眺めていたが、転がったクッションを拾ってソファへ重い足を動かした。
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20230825添削