その他短編
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ミッションで、資産家の夫をもつ男遊びの激しい女に付け入る役目が回ってきた。
俗に言うハニートラップ。
全くもって嫌いな役目だが、以前ソツなくこなしてしまったお陰でまたやる羽目になった。
「おー、どこから見ても完璧な遊び人だね」
「…お褒めに預かり誠に光栄。」
服装のチェックをしていると、ベンジーが「バッチリ」と親指を立ててきた。
前に俺が今回同様ジゴロを全力で演じた時は目も合わせてくれなかったのに(あれには結構傷付いた)、もう平気らしい。
だが、生憎俺は全く慣れない。
今回だってこんなロクでもない女に好意をもつ男を演じるなんて。
時間を稼ぐのとカメラから消えるのに最適だからベッドインしろって、今時そんな命令があるか?
そもそも俺にはベンジーがいるっていうのに…
改めて見てもこの資料の女の魅力がちっとも分からない。
こんな最低な女のどこを褒める?タトゥーか?子供達に平和を題材に描いてもらった公園の壁みたいで素敵だね!って?馬鹿か。
「どうよベンジー。色男に見える?惚れるか?」
ターゲットの資料を見ながら「あー、うん」と頷くベンジーはあんまり興味なさそうだ。
「ショスナトってこういうの適役だよねぇ」
「…それ褒めてる?」
「褒めてるよ!ショスナトみたいに遊び慣れててカッコ良くて頭が切れないと出来ない役だろ」
「ベンジー、エージェントが頭切れるのは当たり前だろ。あと慣れてない。与えられた任務を遂行するだけ。」
ミッションじゃなかったら少なくともこんな女に媚びるようなマネ絶対しない。
プライベートじゃベンジーをデートにさえ誘えないのが俺だ。
不甲斐ない。
というか今かっこいいって言ったか?
最高。
ベンジーに言われると格別だ。
「与えられた任務じゃ俺はずっとモニターの前。ショスナトは美人とデート。適材適所って言われてもちょっと思うところはあるよ」
「俺の隣に最も適してるのはベンジーだよ」
「ハイハイ。その調子。」
ぱちぱちとやる気のない拍手をしながら呆れた表情を浮かべるベンジーは、今のを任務の予行練習だとでも思ったらしい。
少し勇気を出したところでこんな結果だ。
不甲斐ない。
「自信無くすよ」
「そんな事言っても結局完璧にこなすんだろ?
俺が必死に画面睨んで他の仲間と頑張ってる間きみはいつも通り絶好調に飲んで踊ってベッドインするだけだ。不公平だよ」
いーなーと続けるベンジーの声が俺の頭の中で響く。
俺がショックを受けてるなんて目の前の酷い男は全く気付いてなさそうだ。
ベンジー、俺がこんな見た目を着飾っただけの中身の最低な女とデートするのが楽しみだとでも?任務に喜んでるとでも?
というかベッドインする"だけ"?
ベンジーにハニートラップする側の気持ちが分からないのは仕方無いにしたって、この言い方は傷付いた。
いや頭にきたぞ。
「いいだろ。じゃ楽しんでくる」
「ん、いってらっしゃーい」
ヒラヒラと何も気付かず手を振ってくるベンジー。
もういい。
こうなったらこれでもかって位カンペキにこなしてやる。
ベッドイン?見せつけてやろうじゃないか。
上等だ。
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で、帰ってきてベンジーに最低って言われて落ち込む。
2024-12-06添削