その他短編
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「くそ、イーサンがいたら困らないのに」
そう呟いたベンジーからショスナトはタブレットを奪い取った。
映し出されるマップと状況。
ショスナトはにやりと唇を歪ませた。
「これは無理だよ、絶対無理。ショスナトにだって厳しい」
『冗談。おいベンジー、また前苦しくなるから開けとけよ』
「あいにく縮こまってるよ」
『はいはい』とタブレットをブラントに渡して部屋を出ていくショスナト。
ブラントは追うべきかとタブレットを机に置きイヤホンをはめた。
それを引き留めるベンジー。
「大丈夫だよ。ショスナトのフォローはここで俺がするからさ」
「彼だけじゃ無理だ」
「あのね、俺はずっとショスナトを見てきたんだ。ここでフォローもする。ショスナトなら大丈夫。」
「…さっきと言ってること全然違うぞ」
聞く耳を持たないベンジーはリラックスした姿勢でモニターに映る後ろ姿を見ている。
失敗しましたじゃ済まないんだぞ、とブラントは悩みながらも、結局はベンジーの隣でモニターに目を凝らした。
◇
「最っっ高だったよ!!さっすがショスナト!あー、ハラハラした!緊張したーっ!」
『楽勝だよこんなの。』
「本当?俺がフォローした所あったろ?」
ハイタッチしながら、そうだったっけ?と濁らせるショスナト。
ブラントはその腕を掴むとベンジーに断り部屋の隅へと移動した。
「…どういうつもりだ?」
『何が?あ、ブラントに活躍させなかったこと?』
「そうじゃない。君は自分がイーサンのつもりか?」
『はあ?』
機嫌良さげに自分の冗談で笑うショスナトはブラントの一言で表情を険しくした。
「あんな無謀な事…俺達にも危険が及ぶんだぞ」
『待て、なんでイーサンの名が出てくる?』
「エージェントとして彼を意識するのは当然だ。でも無謀=イーサンじゃない。」
『待てって。俺があんなのに憧れてるとでも?』
ショスナトは段々と声が大きくなっている事に気付き、ベンジーがこちらを見ていないか確認した。
声を潜ませ少し前屈みになるショスナト。
『…俺はイーサンなんか眼中に無い』
「ベンジーが彼の名前を出した途端ムキになってた」
『それは…』
言葉を切らすショスナトを訝しむブラント。
一瞬悩み、ショスナトは覚悟したかのように息を吐いた。
『…ベンジーの一番でいたいんだ』
「………何?」
恥ずかしそうに口元を撫でるショスナト。
ブラントはどういう事か理解できず、首を捻った。
「どういう意味だそれ」
『あいつの一番のヒーローは俺だったんだ。これからもそうでありたい』
「…待て、それじゃ彼を喜ばす為に命懸けの危険なミッションをこなしてると?」
「本気か?」とブラントがショスナトの胸を指差すとショスナトは大きくゆっくり頷いた。
「なにを馬鹿な…これがどれだけ重要なミッションだったか分からない訳ないだろ?」
『あぁ。失敗は許されなかった』
「でもベンジーの為?」
『その方がやる気になれる』
真剣な眼差しでブラントを見るショスナト。
ブラントは訳が分からないとばかりにこめかみを押さえた。
『お前には分からないよ。でも無謀=イーサンは合ってる。』
「はあ?」
『話は終わりだよな。おいベンジー!腹減った!』
ブラントの肩を数度叩きベンジーの方へ歩いていくショスナト。
振り向いたベンジーは近くにあったスナック菓子をショスナトに投げ、そのまま2人で談笑し始めた。
「…エージェントってのはこう変人しかいないのか?」
ブラントは呆れて開いた口もそのままに、じゃれる2人の後ろ姿を傍観した。
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20230821加筆