その他短編
あなたの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『思ったんだけど、キャップのスーツが青いのはあれ?青空をモチーフにしてるとか?』
「…多分、星条旗の青じゃないかな」
『あー、そっちかー。』と裏返ったスカートに顔を見事に隠されたまま恐らく頷いている目の前の恐らく性別上は女である人物。
どうしてそうなったのかは、彼女の足下、つまり見上げるとこちらに今にも落ちてきそうな所で止まっているタンクローリーに理由がある。
その理由について説明をするとなると、まずは彼女の能力から性格まで説明しなくてはならない。
そうなるととてもではないが長くなる。長くなるのは良いことではない。
なので、掻い摘まむ。
彼女の名はショスナト。
重力を自在に操れる能力を持つ彼女は、キャプテン・アメリカに今にも振り注ごうとしていたタンクローリーを空中で止める事が出来、更に自身も宙に浮く事も出来るのだ。
アベンジャーズに加わるに十分な能力をもつショスナトがチームの一員でないのは、こういった時にスカート姿のまま逆さまで現れ下半身を隠しもしないような性格に原因がある。
「えーと、なんて言うべきだろう…」
『私はどういたしましてと答えるべきだろうなあ』
「そっちじゃなくて、いや、ありがとう。助かった。けど」
『タイツ穿いてるから大丈夫。っていうかキャップおつかれ?』
人の話を聞いているようで聞かない彼女は体の向きをキャップに合わせるとキャップの額の汗を拭ってやった。
「この数相手だから、少しだけね」
『ソーのやんちゃな弟くんは悪いお友達が多いみたいだね。全く。次男坊の典型だな。』
ううむ、と唸っているショスナトはどうも真剣に言っている。
ロキがNYに攻めてきて、街が壊されていくこの窮地の中であってもショスナトは全く名前らしい。
阻止すべく戦っている仲間達と全くの異色。
「ほんと、手が回りきらないし君が加わってくれるなら頼もしいよ」
『そうかい?それは光栄。だけどなー。今日は録り溜めしてるドラマ見たいからそっち優先するって決めてるんだよ。
占いも今日はラッキーアイテムが砕けたコンクリだったし』
『あのドラマ毎回無駄に建物壊すんだよね』と無理にも程がある言い訳を平気で言い放つショスナト。
そうだろうと思った、とキャップが苦笑しているとその間にもショスナトの身体は高くまで上がり始めていた。
『悪いねキャップ。MP溜まると発動する必殺技の助っ人要員として現れることは出来るから。』
「…君の話す言葉が僕と同じ国の言葉だと思えない時がたまにあるんだ」
『翻訳しようか?あんたを愛してるって意味さ。じゃあね。死ぬなよ。』
そうサラリと言い放つと青空に吸い込まれていくように飛び去っていくショスナト。
彼女のスーツはこの青空とよく似た色で、太陽が眩しいからか彼女のスピードが早かったからか、あっという間に見えなくなった。
「…ずるいなあ」
悲しそうに一笑するキャップ。
ス、と手を空に伸ばし、太陽の眩しさに目を細めた。
いくら手を伸ばしても、もう届かない。
君にこんな僕は見えてますか?