主導権
「明日早いんだよ。兄貴は休みでしょ? だからよろしく〜。全部たらこにしといてね。おやすみ〜」
「——まったく、わがままな妹だよ。図体も大きければ態度も大きい」
「聞こえてるんだけど? 兄貴こそ、そんな上下ワッペンだらけの服着てさ。シール帳でも目指してるの?」
「このカッコよさも分からないガキと話すことなんてないよ。早く寝るんだね」
「普通にダッサいからね、それ」
「やかましいよ」
——翌日。
「そろそろお昼にしよう。——た〜らこ〜た〜らこ♪たっぷりた〜らこ♪」モグモグ
「やっぱたらこ最強だわ。たらこ以外のおにぎりは撲滅したほうがいい。仕事中じゃなければ、酒も欲しかった……」モグモグモグ
「……ん!? 塩味!? たらこじゃない——!?」(一口食べたおにぎりを広げる)
「これごま塩だ! 中にだけごま入れて、見て分からないようにしてるし! 裏切ったな、兄貴——」
——夜。
「ただいま。——もう帰ってたのか、遅くなっちゃったな」
「おかえり、の前に! ありえない背信行為があったんだけど? どうしてくれるの?」
「いきなり何のことかな? 心当たりはないよ」
「ごま塩入れたでしょ!? 一個だけ!」
「——ああ。そうだね」
「有罪。終身刑」
「ロシアンルーレットだよ。一個ぐらい違う具があったほういいだろ、スリルがあってさ」
「ご飯にスリルなんて要らないんだよ。それに三個でロシアンルーレットしないでよ!」
「たらこたらこ言ってる割には、他の具と見分けられないんだね? お前、人を刑に処す前に自分の見る目のなさをどうにかしなよ」
「……」
「反論できないの? まだまだだね。先が思いやられるよ」
「——昨日の兄貴の服、ワッペン全部剥がす」
「……!」
「あんなくどくてダッッサい服、無地にしてやる。そしたら目にも優しいし」
「そういうことするんだ? じゃ、お前の好きそうな酒買ってきたけど——僕が飲むね」
「あ、それ気になってたやつ! 卑怯だよ!」
「お前こそ。——ワッペン剥がしを撤回するなら、これ、あげなくもないよ?」
「ぐ……っ。——分かった」
「聞き分けのいい妹で助かるよ」
「ふんだ!」