マッサージしてみるよ!(上半身)
「毎月整体に通って早n年、そろそろ自分でもマッサージできるのでは?」
るくらが突然妙なことを言い出した。スマホをいじっていたみぺりは詳しく聞き返す。
「どういうこと?」
「素人でも見様見真似で人にマッサージを施せるようになったんじゃないかと思うので、実験台になって♡」
「おー、いいよん」
「ありがたい快諾」
「んー、横になればいい?」
「うつ伏せになってね」
「おけ」
るくらがマッサージをしてくれるらしい。実験台というワードには不穏さも覚えたが、とりあえずみぺりはそれまで座っていたソファーにうつ伏せになる。するとるくらが背中を軽くさすり始めた。
「最初はさすりまくって体を温めつつ、緊張してる筋肉を緩めるらしいよ」
なるほど、と思いながら確かに背中がだんだんと温まっていくのを感じた。すっすっと背中を滑る手はゆっくりで、それだけでも心地よい。
やがてさする手が止み、すっかり強張りの取れた背中が今度は軽い力で押され始めた。
「お客さん、凝ってますね〜」
いかにも整体っぽい台詞をるくらは言った。ちなみにみぺりはその手の店に行ったことはない。
「え、ほんと?」
「なんでもサービスで言うらしいよこれ」
「ふーん? 実際どう? 凝ってる?」
みぺりの問いに、肩甲骨のあたりを手のひらで軽く押しながらるくらは答えた。
「うーむ……。やや凝りってところかなあ。座りっぱなしや立ちっぱなしだと体に負担かかるんだよ。たまに伸びをするだけでも違うらしいよ〜」
「学校にいる間は大体座りっぱなしかも! 真面目な学生だからね!」
高校生のみぺりはその無邪気な性格の割に、学校ではあまりはしゃがない。むしろ大人しめでさえある。
「大人しく座ってるみぺりの姿って想像できないな〜。いつも動き回ってるイメージあるし」
肩を揉みながらるくらは応える。他人に肩を揉まれるのはかなり久しぶりだ、とみぺりは思った。
やや強めの力で揉まれ、肩全体に圧力がかかっていく。強めだけれども力加減は丁度よく、だんだんと筋肉がほぐれていくのを感じた。
「意外と学校では真面目なんだよ、わたしは」
先ほどはスルーされた真面目アピールを再び行うみぺり。
「分かってるよ〜。――肩も少し凝ってるね。この辺りとか」
「うぉわっ」
固まっているらしいところを親指でぐいっと押され、声が出た。鈍い痛みと、なんとも言えない気持ちよさが広がっていく。
「ふおおおぉぉ〜」
「社会の荒波に呑まれて疲れ果てたOLみたいになってるよ……」
謎の例えを出しながらもるくらの手は止まらずに指圧を続けている。円を描きながらぐっぐっぐっ、と押し込まれ、みぺりの肩の力はどんどん抜けていく。
完全に脱力しきった両肩に手のひらが置かれた。そのまま揺するようにさすられる。優しい振動が肩の全域に染み渡る。
だんだんと力が込められていき、やがて手のひら全体で押し込むような動きに変わった。柔らかくなった肩は、まるで手がめり込みそうなほどぐいぐいと沈み込む。これはこれで揉まれるのとはまた違った快感がある。
「おおぉ〜。…………?」
不意にるくらの手の動きが止まった、と思った次の瞬間、両肩を軽くとんとんとん、と叩かれた。ほぐれた肩に優しい刺激が心地よく響く。これで肩は終わりらしい。
「肩はこんなもんかな? 次は腕いくね〜」
宣言通り右腕を動かされたと思ったら、二の腕を指圧された。両手でギュッ、ギュッと包み込むように軽く握られながら、肘、前腕へと下がっていく。るくらの両手は温かく、腕を包まれるとその体温にほっとする。
全体を満遍なく揉み込まれた右腕はじんわりと温かくなった。血流がよくなったのだろう。
「なんだかあったかいね……」
「老廃物が流れて血が巡りまくってるんだよ。――ちょっと一回仰向けになってね」
「はいよっと」
腕への指圧が終わり、言われた通りみぺりは体を反転させて仰向けになる。
次は手のひららしい。右手を取られ、手のひらをグニグニと揉まれた。特に親指の付け根を揉まれると、自覚していなかった凝りがほぐれていくようで気持ちがよい。
手のひらを一通り揉み込まれると、今度は手首側から指の付け根にかけて流すような動きに変わった。るくらの親指がみぺりの手のひらの上をすいすい滑っていく。
続いて指に移った。付け根を軽く摘まれてから、人差し指、中指、と順番に一本ずつ引っ張られていく。ストレッチにもなっているらしく、指の根元から一気に爽快感が走る。
「指も凝るらしいよ。特にパソコンやスマホを使いまくる人とか、机に長時間向かう人とか」
「どっちもわたしじゃん!」
「だよね〜。念入りにやっていくよ」
指の腹を一本ずつ軽い力でむにむに揉まれる。少しくすぐったい。それが終わると関節をくりくりと転がすように刺激された。
五本の指全てがほぐされると、まるで指が長くなった気がした。きっとそう感じる程度には凝りが溜まっていたのだろう。
続いて左腕と左手も同じように指圧された。
自由になった両手を握ったり開いたりすると、確かに軽やかになったのが分かる。それに腕も手のひらも熱を帯び、ぽかぽかと温かくなっている。
「すごいね! 全然違うよ」
「でしょ。――次は背中に戻るよ〜。またうつ伏せになってね」
「ほいほい」
「よし。――えい」
「ぐわ!」
背骨のキワをピンポイントで刺激され、思わず謎の声が出た。一気に何かが抜け出た気がする。どうやら骨の合間に指を押し込まれたらしい。点の刺激というやつだろう、多分。
「あ、ごめん。痛かった?」
「大丈夫! びっくりしただけ!」
「じゃ続けるね〜。痛かったら言ってね」
「おけ!」
再び骨のキワに指が押し込まれる。背骨に沿って縦にぐいぐいと指圧されていく。少しだけ痛いけれど、気持ちよくもある。痛気持ちいいというやつだ。
上から下にぐいぐい押されていき、腰まで来たら再び上まで往復。程よい圧迫感に、溜まっていた悪いものがどんどん流れていく。
「むむむ……」
だんだん眠くなってきた。このまま寝てしまいそう……。でもせっかくマッサージしてもらっているのに寝たくはない。
半ばまどろみながら意識を保とうとしていると、背中をポコポコと叩かれた。リズミカルな振動が背中だけではなく全身に浸透していく。
「終わったよ〜」
「んんん……」
るくらの声にみぺりはゆっくり起き上がった。本格的に眠気がする。体のあちこちを揉みほぐされ、全身がリラックスモードに入っているのだろう。
「眠そうだね〜。寝ちゃいなよ。後で適当に起こすよ」
「うん……ありがとう……」
薄れ行く意識の中で辛うじてるくらにお礼を言うと、みぺりは睡魔に身を委ねた。
るくらが突然妙なことを言い出した。スマホをいじっていたみぺりは詳しく聞き返す。
「どういうこと?」
「素人でも見様見真似で人にマッサージを施せるようになったんじゃないかと思うので、実験台になって♡」
「おー、いいよん」
「ありがたい快諾」
「んー、横になればいい?」
「うつ伏せになってね」
「おけ」
るくらがマッサージをしてくれるらしい。実験台というワードには不穏さも覚えたが、とりあえずみぺりはそれまで座っていたソファーにうつ伏せになる。するとるくらが背中を軽くさすり始めた。
「最初はさすりまくって体を温めつつ、緊張してる筋肉を緩めるらしいよ」
なるほど、と思いながら確かに背中がだんだんと温まっていくのを感じた。すっすっと背中を滑る手はゆっくりで、それだけでも心地よい。
やがてさする手が止み、すっかり強張りの取れた背中が今度は軽い力で押され始めた。
「お客さん、凝ってますね〜」
いかにも整体っぽい台詞をるくらは言った。ちなみにみぺりはその手の店に行ったことはない。
「え、ほんと?」
「なんでもサービスで言うらしいよこれ」
「ふーん? 実際どう? 凝ってる?」
みぺりの問いに、肩甲骨のあたりを手のひらで軽く押しながらるくらは答えた。
「うーむ……。やや凝りってところかなあ。座りっぱなしや立ちっぱなしだと体に負担かかるんだよ。たまに伸びをするだけでも違うらしいよ〜」
「学校にいる間は大体座りっぱなしかも! 真面目な学生だからね!」
高校生のみぺりはその無邪気な性格の割に、学校ではあまりはしゃがない。むしろ大人しめでさえある。
「大人しく座ってるみぺりの姿って想像できないな〜。いつも動き回ってるイメージあるし」
肩を揉みながらるくらは応える。他人に肩を揉まれるのはかなり久しぶりだ、とみぺりは思った。
やや強めの力で揉まれ、肩全体に圧力がかかっていく。強めだけれども力加減は丁度よく、だんだんと筋肉がほぐれていくのを感じた。
「意外と学校では真面目なんだよ、わたしは」
先ほどはスルーされた真面目アピールを再び行うみぺり。
「分かってるよ〜。――肩も少し凝ってるね。この辺りとか」
「うぉわっ」
固まっているらしいところを親指でぐいっと押され、声が出た。鈍い痛みと、なんとも言えない気持ちよさが広がっていく。
「ふおおおぉぉ〜」
「社会の荒波に呑まれて疲れ果てたOLみたいになってるよ……」
謎の例えを出しながらもるくらの手は止まらずに指圧を続けている。円を描きながらぐっぐっぐっ、と押し込まれ、みぺりの肩の力はどんどん抜けていく。
完全に脱力しきった両肩に手のひらが置かれた。そのまま揺するようにさすられる。優しい振動が肩の全域に染み渡る。
だんだんと力が込められていき、やがて手のひら全体で押し込むような動きに変わった。柔らかくなった肩は、まるで手がめり込みそうなほどぐいぐいと沈み込む。これはこれで揉まれるのとはまた違った快感がある。
「おおぉ〜。…………?」
不意にるくらの手の動きが止まった、と思った次の瞬間、両肩を軽くとんとんとん、と叩かれた。ほぐれた肩に優しい刺激が心地よく響く。これで肩は終わりらしい。
「肩はこんなもんかな? 次は腕いくね〜」
宣言通り右腕を動かされたと思ったら、二の腕を指圧された。両手でギュッ、ギュッと包み込むように軽く握られながら、肘、前腕へと下がっていく。るくらの両手は温かく、腕を包まれるとその体温にほっとする。
全体を満遍なく揉み込まれた右腕はじんわりと温かくなった。血流がよくなったのだろう。
「なんだかあったかいね……」
「老廃物が流れて血が巡りまくってるんだよ。――ちょっと一回仰向けになってね」
「はいよっと」
腕への指圧が終わり、言われた通りみぺりは体を反転させて仰向けになる。
次は手のひららしい。右手を取られ、手のひらをグニグニと揉まれた。特に親指の付け根を揉まれると、自覚していなかった凝りがほぐれていくようで気持ちがよい。
手のひらを一通り揉み込まれると、今度は手首側から指の付け根にかけて流すような動きに変わった。るくらの親指がみぺりの手のひらの上をすいすい滑っていく。
続いて指に移った。付け根を軽く摘まれてから、人差し指、中指、と順番に一本ずつ引っ張られていく。ストレッチにもなっているらしく、指の根元から一気に爽快感が走る。
「指も凝るらしいよ。特にパソコンやスマホを使いまくる人とか、机に長時間向かう人とか」
「どっちもわたしじゃん!」
「だよね〜。念入りにやっていくよ」
指の腹を一本ずつ軽い力でむにむに揉まれる。少しくすぐったい。それが終わると関節をくりくりと転がすように刺激された。
五本の指全てがほぐされると、まるで指が長くなった気がした。きっとそう感じる程度には凝りが溜まっていたのだろう。
続いて左腕と左手も同じように指圧された。
自由になった両手を握ったり開いたりすると、確かに軽やかになったのが分かる。それに腕も手のひらも熱を帯び、ぽかぽかと温かくなっている。
「すごいね! 全然違うよ」
「でしょ。――次は背中に戻るよ〜。またうつ伏せになってね」
「ほいほい」
「よし。――えい」
「ぐわ!」
背骨のキワをピンポイントで刺激され、思わず謎の声が出た。一気に何かが抜け出た気がする。どうやら骨の合間に指を押し込まれたらしい。点の刺激というやつだろう、多分。
「あ、ごめん。痛かった?」
「大丈夫! びっくりしただけ!」
「じゃ続けるね〜。痛かったら言ってね」
「おけ!」
再び骨のキワに指が押し込まれる。背骨に沿って縦にぐいぐいと指圧されていく。少しだけ痛いけれど、気持ちよくもある。痛気持ちいいというやつだ。
上から下にぐいぐい押されていき、腰まで来たら再び上まで往復。程よい圧迫感に、溜まっていた悪いものがどんどん流れていく。
「むむむ……」
だんだん眠くなってきた。このまま寝てしまいそう……。でもせっかくマッサージしてもらっているのに寝たくはない。
半ばまどろみながら意識を保とうとしていると、背中をポコポコと叩かれた。リズミカルな振動が背中だけではなく全身に浸透していく。
「終わったよ〜」
「んんん……」
るくらの声にみぺりはゆっくり起き上がった。本格的に眠気がする。体のあちこちを揉みほぐされ、全身がリラックスモードに入っているのだろう。
「眠そうだね〜。寝ちゃいなよ。後で適当に起こすよ」
「うん……ありがとう……」
薄れ行く意識の中で辛うじてるくらにお礼を言うと、みぺりは睡魔に身を委ねた。
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