番外編6 宮城旅行のその後
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本邸の横にある駐車場には、本家の人間が使用する専用車がある
その中のひとつである、兄様の専用車のロックが外された
チャリ、と鍵を出す音がして、兄様の手元を見やると、なんと車の鍵に、キツネ村で買ったキーホルダーがついている
「そこにつけてくれたんですか」
「この鍵は滅多に使うものでもねぇ
失くす心配がなくていいだろ?」
「たしかに」
助手席にお邪魔して、運転席に座った兄様がエンジンをかけた
ところでどこに行く予定なんだろう
会食に行ってもいいくらいには、ちゃんとした服を着てはいるけど、ドレスコードが必要なところだと流石に入れないぞ
「どこに行くんです?」
「久々にItalianでも食うかと思ってな」
「おお、兄様の行きつけだ」
「せいぜい期待しておけ
心配しなくても俺の奢りだ」
「……ドレスコードとかないですよね、その店」
「あったら俺もこんなラフな格好してねぇだろ」
「それもそっか……」
ていうか、いつの間に兄様は免許を取ったんだろう
普段から忙しくされているだろうに、運転もお上手ときたもんだ
残念ながら私はペーパードライバーを極めている
だって都内の営業なら、外回りでも車いらないもんね
なんでペーパードライバーが営業なんかやってんだろ、ほんと……
* * *
兄様がやってきたのは、都内のとあるレストラン
ちょっとした高級店の佇まいだけど、ドレスコードが必要な程ではなさそうだ
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたウェイターが、何も言わずに奥の席へと案内してくれた
そこは明らかにVIP席だ
他のテーブル席からはちょっと離れた所にある
「いつものコースで?」
「Yes.
食前酒はコイツだけでいい
俺はnon-alcoholで頼む」
「承知致しました
お客様はアレルギーや苦手な食材などございますか?」
「いえ、ないです……あ、生エビが苦手です」
「畏まりました」
下がったウェイターを視線で見送って、メニューを開く
どのコースで頼んたんだろう
ディナーのコースもピンキリだもんな
「一番高いコースですか?」
「いや、真ん中のコースだ」
「え、意外
てっきり一番高いコースだと思いました」
「そっちは二日前までに予約が必要なやつだからな」
「あっ、ほんとだ」
メニューの上に小さく書いてあった
飲み物のメニューを開いて見たけれど、聞いた事のないワインの名前がずらーっと並んでいる
かろうじてソーヴィニヨン・ブランは聞いたことがある……
「Wineにするか?」
「せっかくなのでお願いします」
「好きなやつ選べ
どれでもいい」
「じゃあソーヴィニヨン・ブランの白で」
「飲んだことあるのか?
いい値段するだろ」
「どこかで名前を聞いたなーってだけです
実は飲むのも初めてで」
こんな時じゃないと飲まなさそうだもん
兄様の脛を齧りまくりで申し訳ないけど、なんでもいいって言ったのは兄様だし!
ウェイターが飲み物の注文を取りに来たので、兄様がソーヴィニヨン・ブランをグラスで頼んでくれた
兄様はハンドルキーパーだから、残念ながらノンアルだ
「兄様がノンアルって珍しいですね」
「ま、今日くらいはな」
今日は小十郎さんも成実さんも綱元さんも、三傑が揃って残業デーだ
帰り際に「俺の飯はいらないから!」とだけ言い残して会議室に消えていった成実さんを思い出した
「改めて聞くが、宮城はどうだった?」
「在り来りな言葉で言うなら、楽しかったです
ご先祖様の足跡を辿れて、ご飯も美味しくて」
「ふ……そうか
何はともあれ、お前が楽しめたなら良かった」
「兄様はどうでした?」
「俺も楽しかったぜ
改めて宮城を訪ねるってのは、ちょいと変な気分だったがな」
半分地元みたいなもんだもんな
確かに不思議な感じではあったかもしれない
私は行動範囲がかなり狭かったから、ほとんど行ったことのない土地だったけど
でも、青葉城から眺めた、仙台の街並みは……ちょっとだけ、懐かしい思いもあった
もちろん今の仙台なんて私の記憶にあるはずない
それでも城から見下ろした時、自分たちの足元で暮らす民の活気が伝わってくるのが大好きで
それと似たような感覚を味わえたことが、嬉しくて……懐かしくて
「また行きたいなって思いました」
「次は成実と二人で行ってこい
秋頃なら亘理ではらこ飯も食える」
「それじゃあ兄様も愛姫様とお出掛けしてくださいね
いくらシスコンの兄様を知ってると言っても、愛姫様だって兄様とお出掛けできたら嬉しいはずですよ」
「普通に愛とは顔合わせてるがな……?」
「嘘だぁ、だって土日はほとんど私といてくれるじゃないですか」
「そりゃ可愛い妹が来てくれるってのに、俺がいねぇんじゃ話にならねぇだろ
愛とは基本、平日に顔合わせてる
今日は……こっちに融通効かせてもらったがな」
「私そろそろ愛姫様に呪われないですかね」
「平気だろ
そもそも愛だって、お前のことを気にしてやがったぜ
俺がお前を大事に思ってる理由も知ってる
何の問題もねぇってことだ」
……本当かな、兄様のことだから本当のことだとは思うけど
でも愛姫様に気にかけてもらう程の何かって、私にあったっけ?
そりゃまあこの通り、破天荒が服を着て歩いてるのが兄様だから、振り回されることなんてしょっちゅうだったけど
「会ってみたかったってよ」
「へ、そうなんですか?」
「竜の天下のために駆け抜けた、竜の懐刀だ
お前を一目見ようと思ってる奴らはごまんといた」
「そうだったんですか、知らなかった
……でも私、誰ともお会いしてないですよね?」
「会わせるわけねぇだろ
どうせどいつもこいつも二言目には嫁に欲しいだぞ
お前にゃ成実のところで幸せになってもらわなきゃならなかった
打算的な下心ばっかの奴らにゃあ、お前は勿体ねぇ」
「勿体ないかぁ……」
成実さんもよく言われてたけど、あれは本当に冗談だったんだな
兄様も内心では、成実さんにしか私をやる気がなかったんだろう
佐竹家への輿入れだって一蹴したくらいだもんね
「兄様と愛姫様はちゃんと仲良くできました?」
「ガキじゃねぇんだ
大人の付き合いだってできる」
「兄様と愛姫様はおしどり夫婦っていうより、信頼し合えるパートナーみたいな感じですか?」
「そっちの方がしっくりくるな
天下人である以上、側室も娶らなきゃならなかったが……
愛はよく大奥を取りまとめてくれた」
「ドロドロしてそう」
「してただろうな
愛の胆力にゃ脱帽だ」
兄様ってば、この美貌でこの性格だもん
どんな女性だって惚れちゃうと思う
……よかった、成実さんが側室なんか娶らなくて
私、愛姫様みたいに、側室たちをまとめ上げられる自信なんてないや……
その中のひとつである、兄様の専用車のロックが外された
チャリ、と鍵を出す音がして、兄様の手元を見やると、なんと車の鍵に、キツネ村で買ったキーホルダーがついている
「そこにつけてくれたんですか」
「この鍵は滅多に使うものでもねぇ
失くす心配がなくていいだろ?」
「たしかに」
助手席にお邪魔して、運転席に座った兄様がエンジンをかけた
ところでどこに行く予定なんだろう
会食に行ってもいいくらいには、ちゃんとした服を着てはいるけど、ドレスコードが必要なところだと流石に入れないぞ
「どこに行くんです?」
「久々にItalianでも食うかと思ってな」
「おお、兄様の行きつけだ」
「せいぜい期待しておけ
心配しなくても俺の奢りだ」
「……ドレスコードとかないですよね、その店」
「あったら俺もこんなラフな格好してねぇだろ」
「それもそっか……」
ていうか、いつの間に兄様は免許を取ったんだろう
普段から忙しくされているだろうに、運転もお上手ときたもんだ
残念ながら私はペーパードライバーを極めている
だって都内の営業なら、外回りでも車いらないもんね
なんでペーパードライバーが営業なんかやってんだろ、ほんと……
* * *
兄様がやってきたのは、都内のとあるレストラン
ちょっとした高級店の佇まいだけど、ドレスコードが必要な程ではなさそうだ
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたウェイターが、何も言わずに奥の席へと案内してくれた
そこは明らかにVIP席だ
他のテーブル席からはちょっと離れた所にある
「いつものコースで?」
「Yes.
食前酒はコイツだけでいい
俺はnon-alcoholで頼む」
「承知致しました
お客様はアレルギーや苦手な食材などございますか?」
「いえ、ないです……あ、生エビが苦手です」
「畏まりました」
下がったウェイターを視線で見送って、メニューを開く
どのコースで頼んたんだろう
ディナーのコースもピンキリだもんな
「一番高いコースですか?」
「いや、真ん中のコースだ」
「え、意外
てっきり一番高いコースだと思いました」
「そっちは二日前までに予約が必要なやつだからな」
「あっ、ほんとだ」
メニューの上に小さく書いてあった
飲み物のメニューを開いて見たけれど、聞いた事のないワインの名前がずらーっと並んでいる
かろうじてソーヴィニヨン・ブランは聞いたことがある……
「Wineにするか?」
「せっかくなのでお願いします」
「好きなやつ選べ
どれでもいい」
「じゃあソーヴィニヨン・ブランの白で」
「飲んだことあるのか?
いい値段するだろ」
「どこかで名前を聞いたなーってだけです
実は飲むのも初めてで」
こんな時じゃないと飲まなさそうだもん
兄様の脛を齧りまくりで申し訳ないけど、なんでもいいって言ったのは兄様だし!
ウェイターが飲み物の注文を取りに来たので、兄様がソーヴィニヨン・ブランをグラスで頼んでくれた
兄様はハンドルキーパーだから、残念ながらノンアルだ
「兄様がノンアルって珍しいですね」
「ま、今日くらいはな」
今日は小十郎さんも成実さんも綱元さんも、三傑が揃って残業デーだ
帰り際に「俺の飯はいらないから!」とだけ言い残して会議室に消えていった成実さんを思い出した
「改めて聞くが、宮城はどうだった?」
「在り来りな言葉で言うなら、楽しかったです
ご先祖様の足跡を辿れて、ご飯も美味しくて」
「ふ……そうか
何はともあれ、お前が楽しめたなら良かった」
「兄様はどうでした?」
「俺も楽しかったぜ
改めて宮城を訪ねるってのは、ちょいと変な気分だったがな」
半分地元みたいなもんだもんな
確かに不思議な感じではあったかもしれない
私は行動範囲がかなり狭かったから、ほとんど行ったことのない土地だったけど
でも、青葉城から眺めた、仙台の街並みは……ちょっとだけ、懐かしい思いもあった
もちろん今の仙台なんて私の記憶にあるはずない
それでも城から見下ろした時、自分たちの足元で暮らす民の活気が伝わってくるのが大好きで
それと似たような感覚を味わえたことが、嬉しくて……懐かしくて
「また行きたいなって思いました」
「次は成実と二人で行ってこい
秋頃なら亘理ではらこ飯も食える」
「それじゃあ兄様も愛姫様とお出掛けしてくださいね
いくらシスコンの兄様を知ってると言っても、愛姫様だって兄様とお出掛けできたら嬉しいはずですよ」
「普通に愛とは顔合わせてるがな……?」
「嘘だぁ、だって土日はほとんど私といてくれるじゃないですか」
「そりゃ可愛い妹が来てくれるってのに、俺がいねぇんじゃ話にならねぇだろ
愛とは基本、平日に顔合わせてる
今日は……こっちに融通効かせてもらったがな」
「私そろそろ愛姫様に呪われないですかね」
「平気だろ
そもそも愛だって、お前のことを気にしてやがったぜ
俺がお前を大事に思ってる理由も知ってる
何の問題もねぇってことだ」
……本当かな、兄様のことだから本当のことだとは思うけど
でも愛姫様に気にかけてもらう程の何かって、私にあったっけ?
そりゃまあこの通り、破天荒が服を着て歩いてるのが兄様だから、振り回されることなんてしょっちゅうだったけど
「会ってみたかったってよ」
「へ、そうなんですか?」
「竜の天下のために駆け抜けた、竜の懐刀だ
お前を一目見ようと思ってる奴らはごまんといた」
「そうだったんですか、知らなかった
……でも私、誰ともお会いしてないですよね?」
「会わせるわけねぇだろ
どうせどいつもこいつも二言目には嫁に欲しいだぞ
お前にゃ成実のところで幸せになってもらわなきゃならなかった
打算的な下心ばっかの奴らにゃあ、お前は勿体ねぇ」
「勿体ないかぁ……」
成実さんもよく言われてたけど、あれは本当に冗談だったんだな
兄様も内心では、成実さんにしか私をやる気がなかったんだろう
佐竹家への輿入れだって一蹴したくらいだもんね
「兄様と愛姫様はちゃんと仲良くできました?」
「ガキじゃねぇんだ
大人の付き合いだってできる」
「兄様と愛姫様はおしどり夫婦っていうより、信頼し合えるパートナーみたいな感じですか?」
「そっちの方がしっくりくるな
天下人である以上、側室も娶らなきゃならなかったが……
愛はよく大奥を取りまとめてくれた」
「ドロドロしてそう」
「してただろうな
愛の胆力にゃ脱帽だ」
兄様ってば、この美貌でこの性格だもん
どんな女性だって惚れちゃうと思う
……よかった、成実さんが側室なんか娶らなくて
私、愛姫様みたいに、側室たちをまとめ上げられる自信なんてないや……
