番外編5 宮城旅行仙台編・最終日
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イワシのショーの最前列を子供たちに譲ったなら、アシカとイルカのショーだって最前列は子供たちのものであるべきだ
そんなわけで私たちはこれまた最後列のベンチでアシカとイルカのショーを見た
アシカもイルカも頭が良くてすごい
イルカの子供はショーに参加はしなかったけど、最後のお見送りには参加してくれた
体が一回りも二回りも小さくて可愛いのに、飼育員さんに懐いてて尚更可愛い
「この後は展示を見ながら出口に向かうか」
「そうだなぁ、もう二時とかだし……」
屋内へと歩いて向かう途中で見えたのは、お散歩中のペンギンたちだ
三角コーンとバーで区切られたスペースの中で、飼育員さんの解説の声と、ペンギンたちの声が賑やかである
「わぁ、可愛い……!」
「可愛いが……えらく自由だな」
「アシカとイルカの賢さを見たあとだと、この自由さがクセになるよな」
「なんなら脱走しようとしてるもんね」
もちろんそれは飼育員さんによって阻止されてはいるけど、ペンギンたちは知ったことかとバーをくぐり抜けて、こちらへ来ようとしてくる
囲んでいる人間が気になるのか、単純に逃げようとしているのか、どっちなんだ
なんならあのジェンツーペンギン、ずっとこっちを見てるもん
「あのペンギン、小十郎のことずっと見てない?」
「お前、ペンギンの視線まで奪う気か?
そういうのは道端の女だけにしておけ」
「一番その辺の女から見られてる奴に言われてもなぁ」
「テメェも視線を集める側だがな」
「は、俺?
ないない、お前の勘違いだろ」
「成実は女の人の視線を集める顔だって自覚がないの?」
呆れ笑いで呟くと、成実さんが「お前が言う?」と言い返してきた
少なくとも私は他人の視線を奪えるほどの顔じゃないと思う
「綱元から聞いたぜ?
新人の挨拶回りで向かった先の営業野郎から言い寄られたんだってな?」
「言い寄られてなんかないのよ
今度一緒に、情報交換も兼ねて食事でもどうかって」
「言い寄られてんじゃねぇか」
「これで言い寄られたって言われたら、何もできないけど……」
「そもそもなんで夕華が営業やってんだよ」
「大殿いわく、適材適所とのことで」
「Shit!
大方、夕華の無自覚人たらしっぷりに目をつけたんだろうが……」
「人を魔性の女みたいに言わないでください!」
ペンギンを他所に私たちは、やいのやいのと言い合いになる始末
見かねた小十郎が兄様と成実をつまみ出した
そこでつまみ出される側に兄様が回ることってあるんだ
「失礼致しました
夕華様、どうぞお気の済むまでご覧になられよ」
「私、時々だけど、小十郎が怖いの……」
人混みの背後で兄様と成実が文句を垂れているけど、小十郎が「お気になさらず」と微笑んだ
兄様にそういう態度をとる小十郎なんて、初めてな気がする
普段なら成実さんがとばっちりを食う側なのに
ペンギンたちのお散歩も終わりに近づき、みんなで帰ろうとするのだけど……
やっぱり何羽か言うことを聞かないペンギンがいる
脱走しようとするから、飼育員のお姉さんもフォローが大変そうだ
「自由でいいなぁ」
「あの自由奔放さ、どこかで見た覚えがございます
少々頭痛が致しますな」
「兄様は本当に自由な方だものね
普通、国主が単身で上田に行こうなんてしないと思うの」
「あの時は本当に、胃に穴が空くような心地で……
慌てて三傑で追い掛けたものの、政宗様の後藤黒には到底追い付けず
駆けつけた頃には、政宗様も真田も立ち合いの真っ只中でございました」
「佐助さん、止めなかったの?」
「猿飛のほうは傍観と言ったふうで
あわよくばを狙っていたようですが、結果は引き分けのまま、次回へ持ち越しとなりましてな」
「小十郎も大変ね……
よく兄様に付き従っていると思うの」
「労いのお言葉が身に沁みまする」
ペンギンのお散歩タイムが終わると同時に、ギャラリーもまばらになっていく
ようやく私たちの元へやってきた従兄弟組は、不機嫌そうな顔で小十郎をじとりと睨んだ
いちいち騒ぎ立てる自分たちが悪いのに
「さっさと次行くぞ」
「そういえば小十郎、何時の新幹線で帰るの?」
「四時半頃の新幹線になります」
「あんまりのんびりはできねぇってことか……
土産を買う時間も必要だろ?」
「でも一周はできたし、私は満足しました」
「んーじゃあ……帰るか?」
成実のそれに異論のある人はいなかった
だってまたここに来たらいいのだから
私たちが生きていた仙台とは違っても、ここだって私たちの故郷に変わりはない
またご先祖様に会いに行こう
亘理にいる成実公にもご挨拶しに
「次は亘理ではらこ飯、か?」
「うん!」
「そんときゃ二人で行ってこい
萩の月だけ忘れんなよ」
「はい!」
「では……夕華様、お心残りはありませぬか」
「今回はない!」
三人が温かい目で私を見つめて、建物の中へと戻っていく
出口のある方向へ歩いていく三人の姿に、かつての武将としての姿が重なるように見えて……
不意に胸の奥に寂しさが募った
「……やっぱり私、成実さんと小十郎さんって呼びたいです」
「えぇ……?」
「夢の中の私は一国の姫らしく振る舞っていましたけど、それは私であって私じゃないですし
皆さんと一緒にいた私じゃ、駄目ですか?
……本当は夢の中の私を望んでいるんですか」
まるで私の在り方は正しくなかったと言われてるみたいだって、本当の私じゃないって否定されてるみたいだった
もちろん三人がそんなつもりじゃなかったって知っている
それでも、間違いだったって言われると……悲しい
私の姿をした別の人を求めているんじゃないのかって
それなら、成実さん小十郎さんと呼んで慕っていた私は、今度こそ偽物だったのかって
「私を見て話をしてください……
私じゃない私の話なんて、しないで……」
成実さんの服の袖を掴んで、けれど顔を上げることはできずに俯いてしまった
二人が私のために、立ち振る舞いを正させようとしているのは、ちゃんと分かっている
必要な場面では本家の人間らしく振る舞うから
だから、そうじゃないときは、いつもの私でいさせてほしい
「……ごめん
そうだよな、こういうのは強要するもんじゃないな」
「No,言い出しっぺは俺だ
悪かった、夕華」
「我々に礼を尽くされるからこそ夕華様である……
根本的なところを見失っておりました
この小十郎、曇りきった眼を恥じ入るばかりです」
「……それじゃあ」
「うん、もう終わりでいいよ
やっぱ俺は成実さんって呼ばれるほうが落ち着く」
成実さんがそう言って微笑む
惜しいと思ってはいるようだけど、今まで通りの私がいいというのも嘘ではないらしい
ようやく強ばったものが解けた気がして、ほっと口から安堵の息が零れる
袖を掴んでいた手を離すと、成実さんが私の手を握ってくれた
「よっしゃ、帰るぞ帰るぞ!
あんまり遅くなったら、綱元の奴がうるせぇだろうしな」
「……だな
夕華の顔も見られねぇとなりゃ、尚更claimが飛んできそうだ」
「簡単なもので恐縮ですが、夕飯もご用意させていただきまする
どうぞ食べて帰られよ、夕華様」
「え、今日くらいは私が……
小十郎さんは運転で疲れてるでしょうし」
「そうだそうだ
今日の晩メシは俺たちの筆頭とうちの姫様に任せようぜ」
成実さんも料理をしたがらないとは珍しい
でも成実さんも常に周囲に気を張ってるから、別邸に帰ったら気を緩めたいんだろうな
それなら私と兄様で張り切って用意しよう
「えーっと、とりあえず三時過ぎには仙台駅に着いてりゃいいか?
一時間くらい土産を選ぶ時間があればいいよな」
「……待ってください、成実さん
私、大事なことに気付いたんですけど」
「えっ何、そんな深刻になるほどのやつがあったっけ?」
「ずんだを……食べてません」
全員の足が止まった
そう、全員が気付いていなかったのだ
ずんだを食べていないという事実に
そんなわけで私たちはこれまた最後列のベンチでアシカとイルカのショーを見た
アシカもイルカも頭が良くてすごい
イルカの子供はショーに参加はしなかったけど、最後のお見送りには参加してくれた
体が一回りも二回りも小さくて可愛いのに、飼育員さんに懐いてて尚更可愛い
「この後は展示を見ながら出口に向かうか」
「そうだなぁ、もう二時とかだし……」
屋内へと歩いて向かう途中で見えたのは、お散歩中のペンギンたちだ
三角コーンとバーで区切られたスペースの中で、飼育員さんの解説の声と、ペンギンたちの声が賑やかである
「わぁ、可愛い……!」
「可愛いが……えらく自由だな」
「アシカとイルカの賢さを見たあとだと、この自由さがクセになるよな」
「なんなら脱走しようとしてるもんね」
もちろんそれは飼育員さんによって阻止されてはいるけど、ペンギンたちは知ったことかとバーをくぐり抜けて、こちらへ来ようとしてくる
囲んでいる人間が気になるのか、単純に逃げようとしているのか、どっちなんだ
なんならあのジェンツーペンギン、ずっとこっちを見てるもん
「あのペンギン、小十郎のことずっと見てない?」
「お前、ペンギンの視線まで奪う気か?
そういうのは道端の女だけにしておけ」
「一番その辺の女から見られてる奴に言われてもなぁ」
「テメェも視線を集める側だがな」
「は、俺?
ないない、お前の勘違いだろ」
「成実は女の人の視線を集める顔だって自覚がないの?」
呆れ笑いで呟くと、成実さんが「お前が言う?」と言い返してきた
少なくとも私は他人の視線を奪えるほどの顔じゃないと思う
「綱元から聞いたぜ?
新人の挨拶回りで向かった先の営業野郎から言い寄られたんだってな?」
「言い寄られてなんかないのよ
今度一緒に、情報交換も兼ねて食事でもどうかって」
「言い寄られてんじゃねぇか」
「これで言い寄られたって言われたら、何もできないけど……」
「そもそもなんで夕華が営業やってんだよ」
「大殿いわく、適材適所とのことで」
「Shit!
大方、夕華の無自覚人たらしっぷりに目をつけたんだろうが……」
「人を魔性の女みたいに言わないでください!」
ペンギンを他所に私たちは、やいのやいのと言い合いになる始末
見かねた小十郎が兄様と成実をつまみ出した
そこでつまみ出される側に兄様が回ることってあるんだ
「失礼致しました
夕華様、どうぞお気の済むまでご覧になられよ」
「私、時々だけど、小十郎が怖いの……」
人混みの背後で兄様と成実が文句を垂れているけど、小十郎が「お気になさらず」と微笑んだ
兄様にそういう態度をとる小十郎なんて、初めてな気がする
普段なら成実さんがとばっちりを食う側なのに
ペンギンたちのお散歩も終わりに近づき、みんなで帰ろうとするのだけど……
やっぱり何羽か言うことを聞かないペンギンがいる
脱走しようとするから、飼育員のお姉さんもフォローが大変そうだ
「自由でいいなぁ」
「あの自由奔放さ、どこかで見た覚えがございます
少々頭痛が致しますな」
「兄様は本当に自由な方だものね
普通、国主が単身で上田に行こうなんてしないと思うの」
「あの時は本当に、胃に穴が空くような心地で……
慌てて三傑で追い掛けたものの、政宗様の後藤黒には到底追い付けず
駆けつけた頃には、政宗様も真田も立ち合いの真っ只中でございました」
「佐助さん、止めなかったの?」
「猿飛のほうは傍観と言ったふうで
あわよくばを狙っていたようですが、結果は引き分けのまま、次回へ持ち越しとなりましてな」
「小十郎も大変ね……
よく兄様に付き従っていると思うの」
「労いのお言葉が身に沁みまする」
ペンギンのお散歩タイムが終わると同時に、ギャラリーもまばらになっていく
ようやく私たちの元へやってきた従兄弟組は、不機嫌そうな顔で小十郎をじとりと睨んだ
いちいち騒ぎ立てる自分たちが悪いのに
「さっさと次行くぞ」
「そういえば小十郎、何時の新幹線で帰るの?」
「四時半頃の新幹線になります」
「あんまりのんびりはできねぇってことか……
土産を買う時間も必要だろ?」
「でも一周はできたし、私は満足しました」
「んーじゃあ……帰るか?」
成実のそれに異論のある人はいなかった
だってまたここに来たらいいのだから
私たちが生きていた仙台とは違っても、ここだって私たちの故郷に変わりはない
またご先祖様に会いに行こう
亘理にいる成実公にもご挨拶しに
「次は亘理ではらこ飯、か?」
「うん!」
「そんときゃ二人で行ってこい
萩の月だけ忘れんなよ」
「はい!」
「では……夕華様、お心残りはありませぬか」
「今回はない!」
三人が温かい目で私を見つめて、建物の中へと戻っていく
出口のある方向へ歩いていく三人の姿に、かつての武将としての姿が重なるように見えて……
不意に胸の奥に寂しさが募った
「……やっぱり私、成実さんと小十郎さんって呼びたいです」
「えぇ……?」
「夢の中の私は一国の姫らしく振る舞っていましたけど、それは私であって私じゃないですし
皆さんと一緒にいた私じゃ、駄目ですか?
……本当は夢の中の私を望んでいるんですか」
まるで私の在り方は正しくなかったと言われてるみたいだって、本当の私じゃないって否定されてるみたいだった
もちろん三人がそんなつもりじゃなかったって知っている
それでも、間違いだったって言われると……悲しい
私の姿をした別の人を求めているんじゃないのかって
それなら、成実さん小十郎さんと呼んで慕っていた私は、今度こそ偽物だったのかって
「私を見て話をしてください……
私じゃない私の話なんて、しないで……」
成実さんの服の袖を掴んで、けれど顔を上げることはできずに俯いてしまった
二人が私のために、立ち振る舞いを正させようとしているのは、ちゃんと分かっている
必要な場面では本家の人間らしく振る舞うから
だから、そうじゃないときは、いつもの私でいさせてほしい
「……ごめん
そうだよな、こういうのは強要するもんじゃないな」
「No,言い出しっぺは俺だ
悪かった、夕華」
「我々に礼を尽くされるからこそ夕華様である……
根本的なところを見失っておりました
この小十郎、曇りきった眼を恥じ入るばかりです」
「……それじゃあ」
「うん、もう終わりでいいよ
やっぱ俺は成実さんって呼ばれるほうが落ち着く」
成実さんがそう言って微笑む
惜しいと思ってはいるようだけど、今まで通りの私がいいというのも嘘ではないらしい
ようやく強ばったものが解けた気がして、ほっと口から安堵の息が零れる
袖を掴んでいた手を離すと、成実さんが私の手を握ってくれた
「よっしゃ、帰るぞ帰るぞ!
あんまり遅くなったら、綱元の奴がうるせぇだろうしな」
「……だな
夕華の顔も見られねぇとなりゃ、尚更claimが飛んできそうだ」
「簡単なもので恐縮ですが、夕飯もご用意させていただきまする
どうぞ食べて帰られよ、夕華様」
「え、今日くらいは私が……
小十郎さんは運転で疲れてるでしょうし」
「そうだそうだ
今日の晩メシは俺たちの筆頭とうちの姫様に任せようぜ」
成実さんも料理をしたがらないとは珍しい
でも成実さんも常に周囲に気を張ってるから、別邸に帰ったら気を緩めたいんだろうな
それなら私と兄様で張り切って用意しよう
「えーっと、とりあえず三時過ぎには仙台駅に着いてりゃいいか?
一時間くらい土産を選ぶ時間があればいいよな」
「……待ってください、成実さん
私、大事なことに気付いたんですけど」
「えっ何、そんな深刻になるほどのやつがあったっけ?」
「ずんだを……食べてません」
全員の足が止まった
そう、全員が気付いていなかったのだ
ずんだを食べていないという事実に
