番外編5 宮城旅行仙台編・最終日
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ふっと意識が戻って、目を開ける
どうやらサロンで眠りこけてしまったらしい
スマートフォンで時計を見ると、あと三十分で夕飯の時間だった
「今の夢は……」
立ち上がってガチガチに固まった体を伸ばしつつ、夢の内容を思い返す
私が安芸介家へ養子に出されなかった世界
兄様と一緒に米沢城で暮らしていたら、きっとああなっていたんだろう
お転婆の気質があるのも、成実さんに惹かれるのも、私らしいと言わざるを得ない
……少なくとも私より姫としての威厳ある人間に育ってそうだったけど
「お風呂に入る余裕は……ないか」
三十分じゃあ、お風呂上がりのスキンケアが間に合わない
夕飯の後に入るしかないな
それにしても、昨日から変な夢ばかり見る
仙台の地に引っ張られでもしているんだろうか
……もし本家でずっと暮らしていたら、と考えなかったわけじゃない
もしそうだったら、兄様がつらかった時、側にいることはできたかもしれない
もちろんそれだけじゃ、兄様に光を与えることはできなかった
兄様の右目となれるのは小十郎さんだけだから、その点については何も文句はない
……ただ、兄様が何かを失ったその時に、私も兄様の力になれたらよかったなと、そう思い続けてはいたのだ
部屋に戻って、充電していたスマートフォンを手に、部屋を出る
夕飯の時間にはまだ早いから、成実さんの部屋に遊びに行こう
成実さんの部屋は一階にある
階段を降りてお部屋へ向かう間、誰にも会わなかった
夕飯の用意で忙しいのかもしれない
コンコンとドアをノックすれば、成実さんが顔を出した
「今日は来ないのかと思ったぜ」
「さっきまで寝ちゃってて……」
「今日は歩き回ったもんな
ちょっと休んでいけ」
お部屋に入れてもらって、居間の座椅子に腰掛ける
部屋の広さに驚く余裕もなかった
「疲れた顔してるな」
「また変な夢を見ちゃって……」
「変な夢?」
「私が養子に出されず、米沢城で暮らしていたらって夢でした」
「……そっか」
「お転婆なのも変わらないし、成実さんのことを好きになるのも変わらないんだなって
黒川城に連れて行かれそうになったら、短刀を自分の首に押し当ててでも抵抗するし」
「最後のは恐ろしいから、現実にならなくてよかったと思ったぞ、今……」
成実さんのそれに苦笑いして、小さく首を振る
幼い頃から、兄様が天下へ名乗りを上げるまで、私が兄様の妹としてそこにいたのなら──という、もしもの夢
それでもやっぱり、どの私も薙刀を手に戦った
兄様の天下を叶えるために
「でも、そんなに『兄様兄様〜』ってくっついてたら、成実さんは拗ねちまっただろうな」
「拗ねるんですか?」
「そらまあ、面白くないだろ、普通に」
そんなもんだろうか
だって夢の中の私が、兄様の近くに自分の部屋を持とうと思ったのは──
「兄様のお部屋の近くに自分の部屋をもらったのは、兄様のお部屋によく遊びに来る成実さんに会いやすいと思ったからですよ?」
「そ、そりゃまあ、梵とお前は本家の人間だから、分家の俺や家臣の小十郎じゃあ、居住区域は違っただろうけどよ」
「そうですよ
夢の中での兄様と私は、青葉城の本丸で生活するんですから」
「夢の中でも過保護なんだろうな〜、梵は
だって実際のところは、俺と小十郎と綱元も本丸で暮らしてたし
そっちのほうがいちいち呼び出すのに時間かからなくて、手っ取り早いと思ってたんだろうけど」
ある意味ではそれは常識外れだったのかもしれない
おかげで私は毎朝、成実さんという目覚ましによって、叩き起されていたわけだし
原田さんたちは二の丸で生活していたけど、よく本丸にも顔を出していた
いっそ本丸に住めば、と思わんでもなかったけど、原田さんや留守さんたちは政務や兵の訓練も担っていたから、結局こっちには移らなかったな
青葉城に帰ってきたばかりの頃の私は、本丸だ二の丸だの違いもよく分かっていなかったから、ただ与えられた部屋に住んでいたけど……
「……ちょっと見てみてぇな、姫として育った夕華」
「成実さんのこと、成実って呼び捨てしますよ」
「敬語もなしかぁ
逆に新鮮だな」
もし──本当に、私が米沢城で育っていたなら
私は家が攻められて滅ぶことも、八幡神の加護によって時代を越えることも、現代で育つこともなかったんだろう
「それでもまぁ、あの出会い方で良かったんだと、俺は思うよ」
「私もそう思います
もちろん、夢で見たような歴史だったとしても、兄様は天下を手にしたでしょうし、私も成実さんに嫁いだような気もしますけど」
「……夕華が嫁にくる話が持ち上がったところで、一悶着あるんだろうな……
梵も頭じゃ分かってんだろうけどさ、夕華の嫁入り先としては一番だって」
「現実でも一悶着ありましたしね」
「兄馬鹿はこれだから困るんだよ……」
苦い顔をする成実さんに笑って、私も当時を思い出した
一悶着、の半分は亘理家のせいなんだけど、もう半分は兄様のせいかもしれない
私を手放し難く思ってくれるのは嬉しいんだけど……
どうにも過保護というか、私が絡むと圧倒的カリスマ性がどこかに行ってしまうというか
若い衆の前ではかろうじて体裁を保てていたのが、逆に奇跡まである気がする
「夢には誰が出てきたんだ?」
「えっと……兄上様と、遠藤様と良直様、実元様です」
「ウワァ揃いも揃ってジジイばっかじゃねーか」
「実元様は成実さんのお父上なのに」
「ジジイだろ全然、大殿より年上だぞ」
「それはそうですけど……」
兄様とも父様とも従兄弟関係っていう、それはそれは本家に近い血筋だもんね
あまりにここの血縁関係が複雑すぎたから、覚えるのは無理だと思ったもん
成実さんも「覚えなくていい」って言ってたし
「……それにしても変な夢が続きますよね
成実さんはそういうのないですか?」
「うーん、ないなぁ
そもそも夢を見ること自体あんまないっつーか、見たとしても忘れてるっつーか」
「普通はそうですよね……
私なんか、なぜかうっすらと乱世の世界がどうなったかも知ってるし
今回はとうとう、有り得なかった世界の夢を見ちゃうし」
うーん、と成実さんが腕を組む
悪い予兆のようなものは感じないから、私自身はそれほど深刻に捉えてはいないんだけど
成実さんは心配性すぎるからなぁ
「仙台がお前を待ってたのかもしれねぇな」
「えっ?」
「お前は成島八幡神の加護を受けてただろ?
ひょっとしたらその関係で、仙台の地がお前を待ってたのかもしれねぇって思ってよ
なにせ大崎八幡宮には、成島八幡宮も合祀されてんだ
お前と引き合っても不思議じゃないだろ?」
「そうなんですかねぇ……」
「それか、また大殿の悪足掻きか」
「悪足掻きって、父様に失礼ですよ」
「失礼なもんか
ぜってー悪足掻きに決まってる!
ったく、親子揃って夕華に激甘なんだからよ」
成実さんの怒りが兄様にまで飛んで行った
悪足掻き……かどうかはともかく、知るはずのない未来や、もしもの時代を私に見せてくれるのが、八幡神の気まぐれなのだとしたら
それはそれで、きっと感謝すべきことなんだろうと思う
「それはそれとして」
「それはそれとして?」
「敬語抜きで俺を呼び捨てにする夕華が気になるから、ちょっと再現してくれねぇ?」
「どういう気になり方をしてるんですか!?」
「だってお前、気になるだろ!?
じゃあ仮に、俺がお前に対して恭しくしてましたって聞いて、気にならねぇのかよ!?」
「それは!
……すごく気になります!」
「だろぉ?」
くそ、これは一本取られた
でもずっと「成実さん」って呼んできて、敬語で喋ってきたから、いざ再現しようとすると、ちょっと難しいな……
「……し、成実、これでいいの?」
「──」
「あんまり呼び慣れてなくて、なんだか違和感があるのだけど……成実?」
「……いい……すごく良い」
「はい?」
うっかり敬語で聞き返してしまった
ものすごく反芻している
ちょっと変態入ってて嫌だな
「姫の気品が感じられつつ、お転婆の気配も感じる……
あーこれは間違いなく夕華だ」
「なんでたった一言でそこまで分かるんですか、普通に怖いですよ」
「そこはまあ、成実さんだからな」
「え、怖い……」
「怖くねぇだろ!
え、もしかして怖いのか?
ほんとに!?」
あまりにも私に対する解像度が高すぎて、驚きを通り越して恐怖が出てしまった
そりゃあ松永に紅の打掛を着せられた私に「解釈違いだ」とか言うよ!
成実さんが一番の理解者で嬉しいけど、そこまでいくと恐怖でもあるよ!!
どうやらサロンで眠りこけてしまったらしい
スマートフォンで時計を見ると、あと三十分で夕飯の時間だった
「今の夢は……」
立ち上がってガチガチに固まった体を伸ばしつつ、夢の内容を思い返す
私が安芸介家へ養子に出されなかった世界
兄様と一緒に米沢城で暮らしていたら、きっとああなっていたんだろう
お転婆の気質があるのも、成実さんに惹かれるのも、私らしいと言わざるを得ない
……少なくとも私より姫としての威厳ある人間に育ってそうだったけど
「お風呂に入る余裕は……ないか」
三十分じゃあ、お風呂上がりのスキンケアが間に合わない
夕飯の後に入るしかないな
それにしても、昨日から変な夢ばかり見る
仙台の地に引っ張られでもしているんだろうか
……もし本家でずっと暮らしていたら、と考えなかったわけじゃない
もしそうだったら、兄様がつらかった時、側にいることはできたかもしれない
もちろんそれだけじゃ、兄様に光を与えることはできなかった
兄様の右目となれるのは小十郎さんだけだから、その点については何も文句はない
……ただ、兄様が何かを失ったその時に、私も兄様の力になれたらよかったなと、そう思い続けてはいたのだ
部屋に戻って、充電していたスマートフォンを手に、部屋を出る
夕飯の時間にはまだ早いから、成実さんの部屋に遊びに行こう
成実さんの部屋は一階にある
階段を降りてお部屋へ向かう間、誰にも会わなかった
夕飯の用意で忙しいのかもしれない
コンコンとドアをノックすれば、成実さんが顔を出した
「今日は来ないのかと思ったぜ」
「さっきまで寝ちゃってて……」
「今日は歩き回ったもんな
ちょっと休んでいけ」
お部屋に入れてもらって、居間の座椅子に腰掛ける
部屋の広さに驚く余裕もなかった
「疲れた顔してるな」
「また変な夢を見ちゃって……」
「変な夢?」
「私が養子に出されず、米沢城で暮らしていたらって夢でした」
「……そっか」
「お転婆なのも変わらないし、成実さんのことを好きになるのも変わらないんだなって
黒川城に連れて行かれそうになったら、短刀を自分の首に押し当ててでも抵抗するし」
「最後のは恐ろしいから、現実にならなくてよかったと思ったぞ、今……」
成実さんのそれに苦笑いして、小さく首を振る
幼い頃から、兄様が天下へ名乗りを上げるまで、私が兄様の妹としてそこにいたのなら──という、もしもの夢
それでもやっぱり、どの私も薙刀を手に戦った
兄様の天下を叶えるために
「でも、そんなに『兄様兄様〜』ってくっついてたら、成実さんは拗ねちまっただろうな」
「拗ねるんですか?」
「そらまあ、面白くないだろ、普通に」
そんなもんだろうか
だって夢の中の私が、兄様の近くに自分の部屋を持とうと思ったのは──
「兄様のお部屋の近くに自分の部屋をもらったのは、兄様のお部屋によく遊びに来る成実さんに会いやすいと思ったからですよ?」
「そ、そりゃまあ、梵とお前は本家の人間だから、分家の俺や家臣の小十郎じゃあ、居住区域は違っただろうけどよ」
「そうですよ
夢の中での兄様と私は、青葉城の本丸で生活するんですから」
「夢の中でも過保護なんだろうな〜、梵は
だって実際のところは、俺と小十郎と綱元も本丸で暮らしてたし
そっちのほうがいちいち呼び出すのに時間かからなくて、手っ取り早いと思ってたんだろうけど」
ある意味ではそれは常識外れだったのかもしれない
おかげで私は毎朝、成実さんという目覚ましによって、叩き起されていたわけだし
原田さんたちは二の丸で生活していたけど、よく本丸にも顔を出していた
いっそ本丸に住めば、と思わんでもなかったけど、原田さんや留守さんたちは政務や兵の訓練も担っていたから、結局こっちには移らなかったな
青葉城に帰ってきたばかりの頃の私は、本丸だ二の丸だの違いもよく分かっていなかったから、ただ与えられた部屋に住んでいたけど……
「……ちょっと見てみてぇな、姫として育った夕華」
「成実さんのこと、成実って呼び捨てしますよ」
「敬語もなしかぁ
逆に新鮮だな」
もし──本当に、私が米沢城で育っていたなら
私は家が攻められて滅ぶことも、八幡神の加護によって時代を越えることも、現代で育つこともなかったんだろう
「それでもまぁ、あの出会い方で良かったんだと、俺は思うよ」
「私もそう思います
もちろん、夢で見たような歴史だったとしても、兄様は天下を手にしたでしょうし、私も成実さんに嫁いだような気もしますけど」
「……夕華が嫁にくる話が持ち上がったところで、一悶着あるんだろうな……
梵も頭じゃ分かってんだろうけどさ、夕華の嫁入り先としては一番だって」
「現実でも一悶着ありましたしね」
「兄馬鹿はこれだから困るんだよ……」
苦い顔をする成実さんに笑って、私も当時を思い出した
一悶着、の半分は亘理家のせいなんだけど、もう半分は兄様のせいかもしれない
私を手放し難く思ってくれるのは嬉しいんだけど……
どうにも過保護というか、私が絡むと圧倒的カリスマ性がどこかに行ってしまうというか
若い衆の前ではかろうじて体裁を保てていたのが、逆に奇跡まである気がする
「夢には誰が出てきたんだ?」
「えっと……兄上様と、遠藤様と良直様、実元様です」
「ウワァ揃いも揃ってジジイばっかじゃねーか」
「実元様は成実さんのお父上なのに」
「ジジイだろ全然、大殿より年上だぞ」
「それはそうですけど……」
兄様とも父様とも従兄弟関係っていう、それはそれは本家に近い血筋だもんね
あまりにここの血縁関係が複雑すぎたから、覚えるのは無理だと思ったもん
成実さんも「覚えなくていい」って言ってたし
「……それにしても変な夢が続きますよね
成実さんはそういうのないですか?」
「うーん、ないなぁ
そもそも夢を見ること自体あんまないっつーか、見たとしても忘れてるっつーか」
「普通はそうですよね……
私なんか、なぜかうっすらと乱世の世界がどうなったかも知ってるし
今回はとうとう、有り得なかった世界の夢を見ちゃうし」
うーん、と成実さんが腕を組む
悪い予兆のようなものは感じないから、私自身はそれほど深刻に捉えてはいないんだけど
成実さんは心配性すぎるからなぁ
「仙台がお前を待ってたのかもしれねぇな」
「えっ?」
「お前は成島八幡神の加護を受けてただろ?
ひょっとしたらその関係で、仙台の地がお前を待ってたのかもしれねぇって思ってよ
なにせ大崎八幡宮には、成島八幡宮も合祀されてんだ
お前と引き合っても不思議じゃないだろ?」
「そうなんですかねぇ……」
「それか、また大殿の悪足掻きか」
「悪足掻きって、父様に失礼ですよ」
「失礼なもんか
ぜってー悪足掻きに決まってる!
ったく、親子揃って夕華に激甘なんだからよ」
成実さんの怒りが兄様にまで飛んで行った
悪足掻き……かどうかはともかく、知るはずのない未来や、もしもの時代を私に見せてくれるのが、八幡神の気まぐれなのだとしたら
それはそれで、きっと感謝すべきことなんだろうと思う
「それはそれとして」
「それはそれとして?」
「敬語抜きで俺を呼び捨てにする夕華が気になるから、ちょっと再現してくれねぇ?」
「どういう気になり方をしてるんですか!?」
「だってお前、気になるだろ!?
じゃあ仮に、俺がお前に対して恭しくしてましたって聞いて、気にならねぇのかよ!?」
「それは!
……すごく気になります!」
「だろぉ?」
くそ、これは一本取られた
でもずっと「成実さん」って呼んできて、敬語で喋ってきたから、いざ再現しようとすると、ちょっと難しいな……
「……し、成実、これでいいの?」
「──」
「あんまり呼び慣れてなくて、なんだか違和感があるのだけど……成実?」
「……いい……すごく良い」
「はい?」
うっかり敬語で聞き返してしまった
ものすごく反芻している
ちょっと変態入ってて嫌だな
「姫の気品が感じられつつ、お転婆の気配も感じる……
あーこれは間違いなく夕華だ」
「なんでたった一言でそこまで分かるんですか、普通に怖いですよ」
「そこはまあ、成実さんだからな」
「え、怖い……」
「怖くねぇだろ!
え、もしかして怖いのか?
ほんとに!?」
あまりにも私に対する解像度が高すぎて、驚きを通り越して恐怖が出てしまった
そりゃあ松永に紅の打掛を着せられた私に「解釈違いだ」とか言うよ!
成実さんが一番の理解者で嬉しいけど、そこまでいくと恐怖でもあるよ!!
