番外編4 宮城旅行仙台編・2日目
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私たちの前に三人が、否、支倉常長とくノ一も寄ってくるのだから、無駄に視線を集めてしまった
早く立ち去りたい気持ちを堪えて、兄様の後ろに隠れる
兄様は引っ張り出したりしないはず!
「Ah……アンタらは」
「我ら、奥州仙台おもてなし集団、伊達武将隊にござる」
ほ、本物だぁ……!
百足の前立てとか、香車の陣羽織とか、史実に伝わるお姿の成実公だ!
……喋っているのは政宗公なのに、私の視線は成実公に向いていて申し訳ない
その成実公と目が合い、ふわりと微笑んだその顔は、私に何かの既視感を与えた
えっ、と疑問に思った瞬間──政宗公の口から、耳を疑う一言が飛んできた
「奥州筆頭・伊達政宗様とお見受けする」
「「……!!」」
私たちの間にサッと緊張が走る
ここで伊達武将隊として活動しているということは、兄様の家臣であった可能性は高い
けれど私に掴みかかった者の例もある
牽制するように小十郎さんと成実さんが、私と兄様の前に出た
「……なぜ俺を筆頭と呼んだ?
アンタの知る伊達政宗は、奥州筆頭などと名乗っちゃいなかったはずだ」
低く問うた声は、厳しさの中に警戒心を滲ませていた
兄様がここまで他人に警戒する姿を、私は見たことがない──否、私の前では見せなかったのだろう
兄様は奥州の国主、それ故に命を狙われることもあった
なにより小十郎さんが兄様のお傍につくまで、兄様に臣下と呼べる者はいなかったのだ
それゆえ兄様は易々と人を信用しない
この目の前に立つ『伊達政宗』を警戒するのも当然だ
さすがに背に隠れているわけにもいかず、私も兄様の前に出た
何かあれば、兄様をお守りしなければ
「たしかに皆々の知る貞山公は、奥州筆頭とは名乗っておらぬ
しかし我等の知るお方は、六爪を手に戦場を駆け、異国の言葉を流暢に話し、後に天下をも手にした、奥州筆頭その人に他なりませぬ」
「……What's your name?
アンタだけ俺を知っていて、俺がアンタを知らねぇのは、fairじゃねぇぜ」
「ふははは、それは道理にござる
しかし……小十郎も儂のことが分からんか?」
「……まさかてめぇは、いえ、貴方は──」
「遠藤のジジイか!?」
答えを叫んだのは、成実さんだった
兄様と小十郎さんが同時にぎょっとして、政宗公を凝視する
遠藤のジジイ、つまりこの人は、父・輝宗の代から仕えた重臣の中の重臣
「遠藤基信殿!?」
「you're kidding!
なんだってテメェがそんなナリしてやがる!!」
「わっははは!
驚いた顔もお懐かしい!
ドッキリ大成功というやつですな!」
「ふざっ……けんな!
フツーに心臓に悪かっただろ!」
「ふ、たるんでおる証拠よ」
ゲラゲラと大口を開けて笑い、成実さんには痛烈な一言を浴びせ、政宗公──否、遠藤様は私を見やった
遠藤様は私のこともすぐに一の姫として、敬意を持って接してくれた大老様だ
出会った頃には皺の増えたお顔だったから、若かりし頃のお姿なんてまったく気付かなかった
「姫様も、お久しゅうございます」
「はい、ご無沙汰しています」
「ったく……親父の墓の前で追腹して死に損なったジジイが、なんだって『伊達政宗』の真似事なんざしてやがる?」
「よくぞ聞いてくださった!
いや何、儂があの乱世の頃を携えて生まれしは、『奥州筆頭・伊達政宗』の功績を世に讃えよとの、神の思し召しであったように思いましてな?」
「たぶん違うぞ」
「しかし蓋を開けてみれば、なんとこの世は、政宗様の歩まれた世とはまるで違う!
ならば儂がすべきは、この世におわした政宗公──貞山公の功績を後世に広め、人々に東北、ひいては仙台の街を知ってもらうことこそ使命と定めた次第」
「なんでそこでうちに来るって考えにならねぇんだよ」
「そして今、とうとう儂の目の前に政宗様がおいでくださった!
冥利に尽きるというものでござる、貞山公の御名をお借りした甲斐もあるというもの!」
「話聞けよ!!」
成実さんのツッコミがことごとくスルーされて、とうとう成実さんが吼えた
遠藤様の背後で成実公と景綱公が笑いを堪えきれず、横を向いて肩を震わせている
たぶん、このお二人も、遠藤様と同じような存在なのだとは思うけど──
「……で、後ろは誰だ?」
「おお、紹介がまだでしたな
お二方とも」
遠藤様に促され、成実公が私たちに頭を下げた
その顔もまったく見覚えがないと言えば嘘になる
兜が邪魔してよく見えなかったけど、面影から察するに──
「……ひょっとして亘理様ですか?」
「さすが姫様、よくお分かりで
ご無沙汰しております、政宗様
某、亘理元宗でござる」
「……は!?」
「え、うわ、ほんとだ
マジで亘理のおっさんだ!
なんで俺なんだよ!
いや俺じゃねぇけど……」
「成実さん、亘理方面で一番関わりがあったはずなのに……」
ごにょごにょと言い訳をして、成実さんが一歩下がる
そりゃあ亘理様なら、成実さんのこともよくご存知だろう
だから成実公のお姿を担ったのも分かる
これみよがしにため息をついて見せた亘理様が、視線を景綱公へと向ける
遠藤様、亘理様と、父様の代から仕えてきた家臣が続いているから、きっとこの方もそうなんだろうけど……
残念ながら、この場にいる誰も、景綱公の正体には思い当たる節がないようだ
それはもちろん私も
景綱公が頭を下げ、そしてゆっくりと口を開いた
「片倉殿は初対面でござるな
政宗様と成実様は、一度だけお会いしたことがござる」
「夕華とは?」
「無論、毎日のように顔を合わせておりましたとも
なにせ血は繋がっておらずとも、某の一人娘でございましたゆえ」
「──お前」
兄様の声が上擦った
景綱公の微笑みが深くなり、そうして彼は、名乗った
「ご無沙汰しておりまする
某のことは、安芸と呼んでくだされ」
「……安芸介か?」
「安芸様……安芸様?
本当に、安芸様なのか?」
「お噂はかねがね……よもやこのようなところでお会いできるとは
夕華様、この方こそ、貴女様を養子に迎えられたお方──伊達安芸介様でございます」
小十郎さんの紹介なんて、耳に入らなかった
父様とはまた違う、私の育ての父
もう一人の父様
元亀二年八月の乱で、私を逃がして亡くなった……私の、父様
「……やっと、会えた」
どうにかそれだけを言葉にしたあとは、何も言えなかった
鼻の奥がツンとして、喉が塞がって
何を言うこともできないまま、私は景綱公の……父様の前で、みっともなく泣きじゃくることしかできなかった
早く立ち去りたい気持ちを堪えて、兄様の後ろに隠れる
兄様は引っ張り出したりしないはず!
「Ah……アンタらは」
「我ら、奥州仙台おもてなし集団、伊達武将隊にござる」
ほ、本物だぁ……!
百足の前立てとか、香車の陣羽織とか、史実に伝わるお姿の成実公だ!
……喋っているのは政宗公なのに、私の視線は成実公に向いていて申し訳ない
その成実公と目が合い、ふわりと微笑んだその顔は、私に何かの既視感を与えた
えっ、と疑問に思った瞬間──政宗公の口から、耳を疑う一言が飛んできた
「奥州筆頭・伊達政宗様とお見受けする」
「「……!!」」
私たちの間にサッと緊張が走る
ここで伊達武将隊として活動しているということは、兄様の家臣であった可能性は高い
けれど私に掴みかかった者の例もある
牽制するように小十郎さんと成実さんが、私と兄様の前に出た
「……なぜ俺を筆頭と呼んだ?
アンタの知る伊達政宗は、奥州筆頭などと名乗っちゃいなかったはずだ」
低く問うた声は、厳しさの中に警戒心を滲ませていた
兄様がここまで他人に警戒する姿を、私は見たことがない──否、私の前では見せなかったのだろう
兄様は奥州の国主、それ故に命を狙われることもあった
なにより小十郎さんが兄様のお傍につくまで、兄様に臣下と呼べる者はいなかったのだ
それゆえ兄様は易々と人を信用しない
この目の前に立つ『伊達政宗』を警戒するのも当然だ
さすがに背に隠れているわけにもいかず、私も兄様の前に出た
何かあれば、兄様をお守りしなければ
「たしかに皆々の知る貞山公は、奥州筆頭とは名乗っておらぬ
しかし我等の知るお方は、六爪を手に戦場を駆け、異国の言葉を流暢に話し、後に天下をも手にした、奥州筆頭その人に他なりませぬ」
「……What's your name?
アンタだけ俺を知っていて、俺がアンタを知らねぇのは、fairじゃねぇぜ」
「ふははは、それは道理にござる
しかし……小十郎も儂のことが分からんか?」
「……まさかてめぇは、いえ、貴方は──」
「遠藤のジジイか!?」
答えを叫んだのは、成実さんだった
兄様と小十郎さんが同時にぎょっとして、政宗公を凝視する
遠藤のジジイ、つまりこの人は、父・輝宗の代から仕えた重臣の中の重臣
「遠藤基信殿!?」
「you're kidding!
なんだってテメェがそんなナリしてやがる!!」
「わっははは!
驚いた顔もお懐かしい!
ドッキリ大成功というやつですな!」
「ふざっ……けんな!
フツーに心臓に悪かっただろ!」
「ふ、たるんでおる証拠よ」
ゲラゲラと大口を開けて笑い、成実さんには痛烈な一言を浴びせ、政宗公──否、遠藤様は私を見やった
遠藤様は私のこともすぐに一の姫として、敬意を持って接してくれた大老様だ
出会った頃には皺の増えたお顔だったから、若かりし頃のお姿なんてまったく気付かなかった
「姫様も、お久しゅうございます」
「はい、ご無沙汰しています」
「ったく……親父の墓の前で追腹して死に損なったジジイが、なんだって『伊達政宗』の真似事なんざしてやがる?」
「よくぞ聞いてくださった!
いや何、儂があの乱世の頃を携えて生まれしは、『奥州筆頭・伊達政宗』の功績を世に讃えよとの、神の思し召しであったように思いましてな?」
「たぶん違うぞ」
「しかし蓋を開けてみれば、なんとこの世は、政宗様の歩まれた世とはまるで違う!
ならば儂がすべきは、この世におわした政宗公──貞山公の功績を後世に広め、人々に東北、ひいては仙台の街を知ってもらうことこそ使命と定めた次第」
「なんでそこでうちに来るって考えにならねぇんだよ」
「そして今、とうとう儂の目の前に政宗様がおいでくださった!
冥利に尽きるというものでござる、貞山公の御名をお借りした甲斐もあるというもの!」
「話聞けよ!!」
成実さんのツッコミがことごとくスルーされて、とうとう成実さんが吼えた
遠藤様の背後で成実公と景綱公が笑いを堪えきれず、横を向いて肩を震わせている
たぶん、このお二人も、遠藤様と同じような存在なのだとは思うけど──
「……で、後ろは誰だ?」
「おお、紹介がまだでしたな
お二方とも」
遠藤様に促され、成実公が私たちに頭を下げた
その顔もまったく見覚えがないと言えば嘘になる
兜が邪魔してよく見えなかったけど、面影から察するに──
「……ひょっとして亘理様ですか?」
「さすが姫様、よくお分かりで
ご無沙汰しております、政宗様
某、亘理元宗でござる」
「……は!?」
「え、うわ、ほんとだ
マジで亘理のおっさんだ!
なんで俺なんだよ!
いや俺じゃねぇけど……」
「成実さん、亘理方面で一番関わりがあったはずなのに……」
ごにょごにょと言い訳をして、成実さんが一歩下がる
そりゃあ亘理様なら、成実さんのこともよくご存知だろう
だから成実公のお姿を担ったのも分かる
これみよがしにため息をついて見せた亘理様が、視線を景綱公へと向ける
遠藤様、亘理様と、父様の代から仕えてきた家臣が続いているから、きっとこの方もそうなんだろうけど……
残念ながら、この場にいる誰も、景綱公の正体には思い当たる節がないようだ
それはもちろん私も
景綱公が頭を下げ、そしてゆっくりと口を開いた
「片倉殿は初対面でござるな
政宗様と成実様は、一度だけお会いしたことがござる」
「夕華とは?」
「無論、毎日のように顔を合わせておりましたとも
なにせ血は繋がっておらずとも、某の一人娘でございましたゆえ」
「──お前」
兄様の声が上擦った
景綱公の微笑みが深くなり、そうして彼は、名乗った
「ご無沙汰しておりまする
某のことは、安芸と呼んでくだされ」
「……安芸介か?」
「安芸様……安芸様?
本当に、安芸様なのか?」
「お噂はかねがね……よもやこのようなところでお会いできるとは
夕華様、この方こそ、貴女様を養子に迎えられたお方──伊達安芸介様でございます」
小十郎さんの紹介なんて、耳に入らなかった
父様とはまた違う、私の育ての父
もう一人の父様
元亀二年八月の乱で、私を逃がして亡くなった……私の、父様
「……やっと、会えた」
どうにかそれだけを言葉にしたあとは、何も言えなかった
鼻の奥がツンとして、喉が塞がって
何を言うこともできないまま、私は景綱公の……父様の前で、みっともなく泣きじゃくることしかできなかった
