番外編4 宮城旅行仙台編・2日目
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霊廟へと続く階段の左右には、政宗公の家臣たちが寄進した石灯籠が並んでいる
その家臣たちの名前に、覚えがあったりなかったり
でも成実公の名前がない
まさか寄進してないわけないよね、政宗公の重臣だったのに
「石灯籠のいくつかは、本殿と一緒になくなっちまったみたいでさ
伊達成実が寄進したものも、そのせいでここにはないんだと」
「えっ……そうなんですか……」
なんて残念な……
物の価値が分からない人間はこれだから……
「Shockを受けたと思ったら、単純にキレてやがるな」
「お前ってほんっとうに伊達政宗とその周辺が好きだよな……」
「一番は兄様とその周辺です」
「声がものすげえ不機嫌だけど」
「せめて一番は成実にしておいてやれ」
「そこはお前で合ってるよ」
さらりと成実さんはそう言った
だって私も成実さんも、戦う理由の一番は兄様のためだもん
兄様を抜きにして私も成実さんも語れない
だから私たちの一番は兄様だ
お互いにそうだから、そこで喧嘩になることもなかったな
「それよりほら
俺たちの御先祖様に手を合わせていこうぜ」
「そうですね
……政宗公が御先祖様って、よく考えたらとんでもないですね」
「ま……複雑ではあるがな」
お賽銭を入れて、ご霊廟に向かって手を合わせる
初めまして、御先祖様
ちょっと不思議なことになってはいますが、あなたの子孫です
あの世の天下は獲れましたか
あなたが歩まれた道を、私も誇りに思います
「……」
目を開けて、改めてご霊廟を見上げる
軒にある斗栱がカラフルだ
黒で縁どりされていて、赤、青、緑、黄色、紫といった色で塗られている
柱には獅子頭の彫刻、壁や扉は黒漆
扉には竹に雀と九曜の紋がついている
とにかくご霊廟というにはあまりにも絢爛豪華である
私だったら落ち着いて眠れない
さすが政宗公だな……
「黒漆だから維持も大変だろうなー」
「やっぱり高いんですか?」
「お前の目玉が飛び出て転がり落ちるくらいにはな」
揶揄うように言って兄様が一人で笑った
……調べるのはやめておこう
小十郎さんも手を合わせて、それからぼんやりとしたように霊屋を見つめている
その唇が「まさむねさま」と形作ったのを、私は見逃さなかった
「……なんだか不思議ですよね
ここに政宗公ご本人が眠っているなんて」
「あ、いや……左様ですな
政宗公らしさ溢れる、ご立派な霊屋で」
「小十郎さんも兄様より先に亡くなったんでしたね」
「……はい、二十年ほど先に」
「私は原田さんの次に死んだので、誰のお墓参りもできなかったですから、小十郎さんの気持ちもよく分かります」
「夕華様……」
「私も兄様や小十郎さん、綱元さんに喜多さん……成実さんのお墓に手を合わせたかった」
もちろん私たちの魂はこの世界に生きている
だからお墓参りができたとしても、その下に眠っているのは、ただの骨
そうだとしても、ありがとうと感謝を伝え、どうか安らかにと安寧を願うことは、何もおかしいことじゃない
「……政宗様は何も仰いません
ただの推測……推測ですらなく妄想、そうあってほしいという勝手な期待であるやもしれませぬが……
やはり政宗様のお側にてお仕えしてきた日々が、どうにも恋しいようで……
政宗様もそう思っておられるだろうか、と
我々の生きた証があるわけではないこの世で、政宗様と再びお会いし、そしてお仕えする幸運に恵まれました
しかしそれでも──我々は皆、一度は死んだのだと思いましてな」
瑞鳳殿は、政宗公の霊屋
政宗公が生き、そして亡くなったことを示す場所
その瑞鳳殿を目の当たりにしたことで、小十郎さんの亡き後、兄様も世を去ったのだと、ようやく実感したらしい
「死は誰にでも訪れる
政宗様とて例外ではありません
……しかしそれでも、死んだ証を見せつけられるのは、恐ろしくもあります」
「そうですね
兄様の背をお守りし続けてきた小十郎さんにとって、兄様が天寿を全うしたという当たり前の結末にも、ほんの少し恐怖が混じるものなんでしょうね」
小十郎さんが見ているのは、政宗公ではない
この霊屋を通して、あの世界で今も眠る兄様に思いを馳せているのだと思う
「でも小十郎さん
兄様はここにいますよ」
「……!」
「一度は死んだ私たちですけど、こうして皆で集まって、昔と変わらず賑やかに暮らしてます
住んでいるところは青葉城ではないし、戦もない世の中ですけどね」
「そうですな……おっしゃる通りです
我々は新たな生を得て、この日本で生きている
かの時代を惜しみ、懐かしく思いはすれど──過ぎた世を悲しむ必要はございませぬ」
「その通りです
今も昔も、私たちは兄様の大きな背中に憧れて、存在を慕っている
随分と様変わりした世ではありますけど、昔と変わらず兄様のお側で力になれることは、幸せなことですよね」
「まさにその通りです
やはり貴女様は、我らの標だ」
離れたところから「おーい」と成実さんの声が飛んできた
いつまで二人で突っ立ってんだという声も聞こえてきて、小十郎さんと二人で顔を見合わせ、苦笑を零す
それから私たちはようやく、瑞鳳殿の前から立ち去ったのだった
その家臣たちの名前に、覚えがあったりなかったり
でも成実公の名前がない
まさか寄進してないわけないよね、政宗公の重臣だったのに
「石灯籠のいくつかは、本殿と一緒になくなっちまったみたいでさ
伊達成実が寄進したものも、そのせいでここにはないんだと」
「えっ……そうなんですか……」
なんて残念な……
物の価値が分からない人間はこれだから……
「Shockを受けたと思ったら、単純にキレてやがるな」
「お前ってほんっとうに伊達政宗とその周辺が好きだよな……」
「一番は兄様とその周辺です」
「声がものすげえ不機嫌だけど」
「せめて一番は成実にしておいてやれ」
「そこはお前で合ってるよ」
さらりと成実さんはそう言った
だって私も成実さんも、戦う理由の一番は兄様のためだもん
兄様を抜きにして私も成実さんも語れない
だから私たちの一番は兄様だ
お互いにそうだから、そこで喧嘩になることもなかったな
「それよりほら
俺たちの御先祖様に手を合わせていこうぜ」
「そうですね
……政宗公が御先祖様って、よく考えたらとんでもないですね」
「ま……複雑ではあるがな」
お賽銭を入れて、ご霊廟に向かって手を合わせる
初めまして、御先祖様
ちょっと不思議なことになってはいますが、あなたの子孫です
あの世の天下は獲れましたか
あなたが歩まれた道を、私も誇りに思います
「……」
目を開けて、改めてご霊廟を見上げる
軒にある斗栱がカラフルだ
黒で縁どりされていて、赤、青、緑、黄色、紫といった色で塗られている
柱には獅子頭の彫刻、壁や扉は黒漆
扉には竹に雀と九曜の紋がついている
とにかくご霊廟というにはあまりにも絢爛豪華である
私だったら落ち着いて眠れない
さすが政宗公だな……
「黒漆だから維持も大変だろうなー」
「やっぱり高いんですか?」
「お前の目玉が飛び出て転がり落ちるくらいにはな」
揶揄うように言って兄様が一人で笑った
……調べるのはやめておこう
小十郎さんも手を合わせて、それからぼんやりとしたように霊屋を見つめている
その唇が「まさむねさま」と形作ったのを、私は見逃さなかった
「……なんだか不思議ですよね
ここに政宗公ご本人が眠っているなんて」
「あ、いや……左様ですな
政宗公らしさ溢れる、ご立派な霊屋で」
「小十郎さんも兄様より先に亡くなったんでしたね」
「……はい、二十年ほど先に」
「私は原田さんの次に死んだので、誰のお墓参りもできなかったですから、小十郎さんの気持ちもよく分かります」
「夕華様……」
「私も兄様や小十郎さん、綱元さんに喜多さん……成実さんのお墓に手を合わせたかった」
もちろん私たちの魂はこの世界に生きている
だからお墓参りができたとしても、その下に眠っているのは、ただの骨
そうだとしても、ありがとうと感謝を伝え、どうか安らかにと安寧を願うことは、何もおかしいことじゃない
「……政宗様は何も仰いません
ただの推測……推測ですらなく妄想、そうあってほしいという勝手な期待であるやもしれませぬが……
やはり政宗様のお側にてお仕えしてきた日々が、どうにも恋しいようで……
政宗様もそう思っておられるだろうか、と
我々の生きた証があるわけではないこの世で、政宗様と再びお会いし、そしてお仕えする幸運に恵まれました
しかしそれでも──我々は皆、一度は死んだのだと思いましてな」
瑞鳳殿は、政宗公の霊屋
政宗公が生き、そして亡くなったことを示す場所
その瑞鳳殿を目の当たりにしたことで、小十郎さんの亡き後、兄様も世を去ったのだと、ようやく実感したらしい
「死は誰にでも訪れる
政宗様とて例外ではありません
……しかしそれでも、死んだ証を見せつけられるのは、恐ろしくもあります」
「そうですね
兄様の背をお守りし続けてきた小十郎さんにとって、兄様が天寿を全うしたという当たり前の結末にも、ほんの少し恐怖が混じるものなんでしょうね」
小十郎さんが見ているのは、政宗公ではない
この霊屋を通して、あの世界で今も眠る兄様に思いを馳せているのだと思う
「でも小十郎さん
兄様はここにいますよ」
「……!」
「一度は死んだ私たちですけど、こうして皆で集まって、昔と変わらず賑やかに暮らしてます
住んでいるところは青葉城ではないし、戦もない世の中ですけどね」
「そうですな……おっしゃる通りです
我々は新たな生を得て、この日本で生きている
かの時代を惜しみ、懐かしく思いはすれど──過ぎた世を悲しむ必要はございませぬ」
「その通りです
今も昔も、私たちは兄様の大きな背中に憧れて、存在を慕っている
随分と様変わりした世ではありますけど、昔と変わらず兄様のお側で力になれることは、幸せなことですよね」
「まさにその通りです
やはり貴女様は、我らの標だ」
離れたところから「おーい」と成実さんの声が飛んできた
いつまで二人で突っ立ってんだという声も聞こえてきて、小十郎さんと二人で顔を見合わせ、苦笑を零す
それから私たちはようやく、瑞鳳殿の前から立ち去ったのだった
