番外編3 宮城旅行仙台編・1日目
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食後のデザートまで堪能して、パンパンになったお腹を撫でる
シンプルに食べすぎているな……
「帰ったら喜多さんに鍛えてもらわなきゃ……」
「そうだな……」
「俺らは小十郎に、だな……」
温かいお茶を三人で飲みながら、確実に食べ過ぎているこの四日間に冷や汗が止まらない
体重計に乗るのがこんなに怖いことってないよ
しかも最近は仕事に追われて、喜多さんとの稽古も満足にできてないんだもん
「……冷静に考えてですけど、新入社員のうちから一週間も休みを取って、本当に怒られないんですかね……」
「大丈夫大丈夫、俺とお前は梵の付き添いで出張中ってことになってるから」
「本家の人間の権力……」
それを言うなら私もか……
お土産をたくさん買って帰ろう……
兄様や父様は明言していないけれど、本家の集まりで私が青の着物を着たことで、私の生まれも知れ渡った
だからまあ、面と向かって私に文句を言える人もいないということになるけど……
そういう特別扱いは私の望むところではないんだよな、なんて
「秋の連休に行けたら良かったけど、そっちは梵の予定が空いてなかったからな
まあでも、お前ってば本当に真面目だから、有休にひとつも手ぇつけてなかったろ
消化できて良かったじゃねぇか」
「有休って使わないと駄目なんですか!?」
「最低lineは五日だ
消化できなかったら原田が角生やして怒鳴り込んでくるぜ」
「夕華相手に角を生やしはしねぇと思うけどよ」
どのみち原田さんから苦言を呈されるのは察した
でもよかった
今回の旅行で、原田さんから怒られる未来は回避できたわけだ
「うわ、もう九時半分過ぎてんぞ」
「え、ほんとだ
さすがにお部屋に戻らないとですね」
湯呑みの中身を飲み干して、立ち上がる
お部屋までは成実さんが送ってくれるので、方向が違う兄様とは、食事会場のお部屋の前で別れることにした
明日は九時までには仙台駅に到着しないといけないので、かなり早起きだ
今日は早めに寝よう
「そんじゃ、また明日」
「はい、おやすみなさい」
私の部屋の前で成実さんとも別れて、部屋へ入る
歯を磨いてお風呂に入り直して……最後に喜多さんを呼んでお手入れしてもらおう
室内風呂でしっかり温まりながら、いよいよ明日は仙台かぁ、なんて呟く
今いるここも仙台なんだけど、明日向かうのは紛うことなき、伊達政宗の縁の地
私にとっては里帰りの気持ちが半分ある
「天気が良いといいな……」
お湯で顔を洗って、立ち上がる
もう入ることはないから、お湯は抜いておくことにした
喜多さんを内線で呼んでおいて、到着を待つ間に着替えてタオルドライをしていると、お部屋がコンコンとノックされた
「失礼致します」と声が聞こえて、居間の襖が開く
「秋保の湯は如何でしたか?」
「いい湯でした」
「それはようございました」
喜多さんがテーブルにスキンケアとヘアケア用品をずらりと並べながら微笑んだ
化粧水をパッティングしてから、顔パックをつける
その間にヘアケアをして、ドライヤーで乾かして、パックも終わり
あとは乳液とあれやこれやを塗ったらおしまい
髪はサラツヤ、お肌はしっとり
喜多さんは満足気に頷いて去っていった
さて、時刻は十時を半分ほど回ったところだ
このまま寝てもいいけど……と、部屋の外にあるサロンのほうを視線を向ける
「……サロンを使うのは明日にしよう」
ちょっと気になったけど、夜更かしはできない
目覚ましのアラームをセットして、部屋の電気を消す
いよいよ明日は、伊達政宗公に縁のある場所を巡る日
私たちの知らない、けれどこの世界に確かに存在した、独眼竜
(あの世界でも、私たちの遺した何かが、現存しているんだろうな
夢や幻でもらいいから、目にすることができたらよかった)
うとうとと微睡んだ意識の中で、そんなことを考えた
だからだろうか……不思議な夢を見たのは
どこかの博物館の、展示室
ガラスに遮られた向こう側に、薙刀が一振り、展示されている
「薙刀、号『竜雲』だってよ
しっかり残ってるもんだよなぁ」
私の左隣で同じように眺めていた成実さんが、嬉しそうに目を細めた
右隣からも「そうだな」と感慨深そうな声
説明文には、長々と刻まれた銘の意味があった
「天正十四年五月二十日、奥州青葉城下の住人これを鍛える、伊達家一の姫へ献上奉るなり……」
「こんな長い銘が打ってあったのか」
「手入れの時に長い銘だなぁとは思ってましたけど、こんなふうに書いてたんですね……」
あれから四百年以上が経っているとは思えない程、薙刀の刃は綺麗な状態だ
無茶苦茶な使い方をした自覚があるけど、よく折れなかったな
「しっかし、お前に関する物がえらく多いな」
「大森の博物館も維持が大変そうですよね……」
「その辺は大丈夫なんじゃねーの?
うちからも寄付金はやってるし、そもそも天下人が溺愛した妹だろ?
知名度は抜群だぞ、お前」
「う、うわぁ……
なんで歴史に名を残しちゃったんだ……」
実際その通りで、この展示室はまるまる私の物で溢れている
あれもこれも見慣れた物ばかりで、なんかもう恥ずかしいやら嬉しいやら
「簪とか結い紐とかは、成実さんが亡くなった時に処分したんでしたっけ」
「状態が悪かったからなぁ
お、ほら見ろよこれ」
成実さんが指差したのは、私が書いた文章
手紙ではなくて、たぶんこれ、メモだな……
「た、ただのメモが、貴重な史料かのようになってる……」
「諦めろ
歴史上の人物の直筆なんて、何書いたってそんな扱いだよ
にしてもお前、ちゃんと書き言葉で書いてたんだな」
「そこはやっぱり、慣れないとと思って……」
しかもきちんと詳細に訳されている
本当になんて事ない、一日のスケジュールを書き留めただけのメモだから、やめてほしい
そもそもなんで残ってるんだ!!
「一日のスケジュールであったと見られ、現存する数点の手紙とは違い、走り書きが目立つ
文中に頻出する喜多とは、伊達政宗の養育係であった片倉喜多のことである
喜多は一の姫の仙台帰参後、侍女兼教育係として仕えた……」
「すんげえ詳しい解説ついてんじゃねーか」
「しかしまあ……見事に走り書きだな」
「兄様にだけは見られたくなかったのに……」
しかし改めて見ても、私って伊達家の歴史において、突然消えて突然現れたよなぁ
展示室の入口にあった導入のパネルにもそんなような事が書いてあったっけ
小っ恥ずかしくて流し見になっちゃったから、もう一回見ておこうかな
ちょっと逆周して、入口へ戻り、導入文を見る
『伊達夕華、通称一の姫は、天下人・伊達政宗の妹として、永禄十二年五月七日、米沢城にて誕生した
しかし伊達家の公的文書にその名が登場するのは、天正十四年のことである
空白の十六年間を経て仙台へ舞い戻った奥州一の美姫は、どのような人物だったのか
本展示室では、一の姫が駆け抜けた、短くも激動の生涯を追いかけていく』
その紹介文の横には、私の年表と、兄様と成実さんの年表が上下に並んだパネルがあって
下段には、梵天丸生誕、時宗丸生誕、伊達政宗元服、伊達成実元服──と細かく二人の年表が並ぶ
けれど上段は、一の姫生誕、伊達安芸介の養子となる──と書かれて以降、空白が続いている
そして天正十四年の五月
『一の姫、仙台へ帰る』
そこから私の年表は怒涛の勢いで出来事が重なっていた
『奥越合戦にて初陣を飾る』
『第五次川中島合戦に出陣』
『松永久秀の人質となる』
『安芸の戦いにより救出される』
『拠点を大森城へ移す』
『三方ヶ原の合戦に出陣』
『政宗の名代として伊予へ発つ』
『大阪合戦に出陣』
『大森伊達家へ嫁ぐ、伊達成実正室』
『長女海夜姫誕生』
『嫡男倫実 誕生』
春千代は倫実って名前をもらったんだ、いい名前だな
お義姉さんの本当の名前も、成姫 だったんだっけ
漢字を変えて名前にしたのかもしれない
「……」
けれど、そのすぐ横
文禄二年、四月
『大森城にて死没、享年二十四』
ああ──なんて、早い
駆け抜けた人生の、なんと短いことか
この一室で事足りてしまうほどの人生だったのだ
それが私の……伊達夕華の人生だったんだ
シンプルに食べすぎているな……
「帰ったら喜多さんに鍛えてもらわなきゃ……」
「そうだな……」
「俺らは小十郎に、だな……」
温かいお茶を三人で飲みながら、確実に食べ過ぎているこの四日間に冷や汗が止まらない
体重計に乗るのがこんなに怖いことってないよ
しかも最近は仕事に追われて、喜多さんとの稽古も満足にできてないんだもん
「……冷静に考えてですけど、新入社員のうちから一週間も休みを取って、本当に怒られないんですかね……」
「大丈夫大丈夫、俺とお前は梵の付き添いで出張中ってことになってるから」
「本家の人間の権力……」
それを言うなら私もか……
お土産をたくさん買って帰ろう……
兄様や父様は明言していないけれど、本家の集まりで私が青の着物を着たことで、私の生まれも知れ渡った
だからまあ、面と向かって私に文句を言える人もいないということになるけど……
そういう特別扱いは私の望むところではないんだよな、なんて
「秋の連休に行けたら良かったけど、そっちは梵の予定が空いてなかったからな
まあでも、お前ってば本当に真面目だから、有休にひとつも手ぇつけてなかったろ
消化できて良かったじゃねぇか」
「有休って使わないと駄目なんですか!?」
「最低lineは五日だ
消化できなかったら原田が角生やして怒鳴り込んでくるぜ」
「夕華相手に角を生やしはしねぇと思うけどよ」
どのみち原田さんから苦言を呈されるのは察した
でもよかった
今回の旅行で、原田さんから怒られる未来は回避できたわけだ
「うわ、もう九時半分過ぎてんぞ」
「え、ほんとだ
さすがにお部屋に戻らないとですね」
湯呑みの中身を飲み干して、立ち上がる
お部屋までは成実さんが送ってくれるので、方向が違う兄様とは、食事会場のお部屋の前で別れることにした
明日は九時までには仙台駅に到着しないといけないので、かなり早起きだ
今日は早めに寝よう
「そんじゃ、また明日」
「はい、おやすみなさい」
私の部屋の前で成実さんとも別れて、部屋へ入る
歯を磨いてお風呂に入り直して……最後に喜多さんを呼んでお手入れしてもらおう
室内風呂でしっかり温まりながら、いよいよ明日は仙台かぁ、なんて呟く
今いるここも仙台なんだけど、明日向かうのは紛うことなき、伊達政宗の縁の地
私にとっては里帰りの気持ちが半分ある
「天気が良いといいな……」
お湯で顔を洗って、立ち上がる
もう入ることはないから、お湯は抜いておくことにした
喜多さんを内線で呼んでおいて、到着を待つ間に着替えてタオルドライをしていると、お部屋がコンコンとノックされた
「失礼致します」と声が聞こえて、居間の襖が開く
「秋保の湯は如何でしたか?」
「いい湯でした」
「それはようございました」
喜多さんがテーブルにスキンケアとヘアケア用品をずらりと並べながら微笑んだ
化粧水をパッティングしてから、顔パックをつける
その間にヘアケアをして、ドライヤーで乾かして、パックも終わり
あとは乳液とあれやこれやを塗ったらおしまい
髪はサラツヤ、お肌はしっとり
喜多さんは満足気に頷いて去っていった
さて、時刻は十時を半分ほど回ったところだ
このまま寝てもいいけど……と、部屋の外にあるサロンのほうを視線を向ける
「……サロンを使うのは明日にしよう」
ちょっと気になったけど、夜更かしはできない
目覚ましのアラームをセットして、部屋の電気を消す
いよいよ明日は、伊達政宗公に縁のある場所を巡る日
私たちの知らない、けれどこの世界に確かに存在した、独眼竜
(あの世界でも、私たちの遺した何かが、現存しているんだろうな
夢や幻でもらいいから、目にすることができたらよかった)
うとうとと微睡んだ意識の中で、そんなことを考えた
だからだろうか……不思議な夢を見たのは
どこかの博物館の、展示室
ガラスに遮られた向こう側に、薙刀が一振り、展示されている
「薙刀、号『竜雲』だってよ
しっかり残ってるもんだよなぁ」
私の左隣で同じように眺めていた成実さんが、嬉しそうに目を細めた
右隣からも「そうだな」と感慨深そうな声
説明文には、長々と刻まれた銘の意味があった
「天正十四年五月二十日、奥州青葉城下の住人これを鍛える、伊達家一の姫へ献上奉るなり……」
「こんな長い銘が打ってあったのか」
「手入れの時に長い銘だなぁとは思ってましたけど、こんなふうに書いてたんですね……」
あれから四百年以上が経っているとは思えない程、薙刀の刃は綺麗な状態だ
無茶苦茶な使い方をした自覚があるけど、よく折れなかったな
「しっかし、お前に関する物がえらく多いな」
「大森の博物館も維持が大変そうですよね……」
「その辺は大丈夫なんじゃねーの?
うちからも寄付金はやってるし、そもそも天下人が溺愛した妹だろ?
知名度は抜群だぞ、お前」
「う、うわぁ……
なんで歴史に名を残しちゃったんだ……」
実際その通りで、この展示室はまるまる私の物で溢れている
あれもこれも見慣れた物ばかりで、なんかもう恥ずかしいやら嬉しいやら
「簪とか結い紐とかは、成実さんが亡くなった時に処分したんでしたっけ」
「状態が悪かったからなぁ
お、ほら見ろよこれ」
成実さんが指差したのは、私が書いた文章
手紙ではなくて、たぶんこれ、メモだな……
「た、ただのメモが、貴重な史料かのようになってる……」
「諦めろ
歴史上の人物の直筆なんて、何書いたってそんな扱いだよ
にしてもお前、ちゃんと書き言葉で書いてたんだな」
「そこはやっぱり、慣れないとと思って……」
しかもきちんと詳細に訳されている
本当になんて事ない、一日のスケジュールを書き留めただけのメモだから、やめてほしい
そもそもなんで残ってるんだ!!
「一日のスケジュールであったと見られ、現存する数点の手紙とは違い、走り書きが目立つ
文中に頻出する喜多とは、伊達政宗の養育係であった片倉喜多のことである
喜多は一の姫の仙台帰参後、侍女兼教育係として仕えた……」
「すんげえ詳しい解説ついてんじゃねーか」
「しかしまあ……見事に走り書きだな」
「兄様にだけは見られたくなかったのに……」
しかし改めて見ても、私って伊達家の歴史において、突然消えて突然現れたよなぁ
展示室の入口にあった導入のパネルにもそんなような事が書いてあったっけ
小っ恥ずかしくて流し見になっちゃったから、もう一回見ておこうかな
ちょっと逆周して、入口へ戻り、導入文を見る
『伊達夕華、通称一の姫は、天下人・伊達政宗の妹として、永禄十二年五月七日、米沢城にて誕生した
しかし伊達家の公的文書にその名が登場するのは、天正十四年のことである
空白の十六年間を経て仙台へ舞い戻った奥州一の美姫は、どのような人物だったのか
本展示室では、一の姫が駆け抜けた、短くも激動の生涯を追いかけていく』
その紹介文の横には、私の年表と、兄様と成実さんの年表が上下に並んだパネルがあって
下段には、梵天丸生誕、時宗丸生誕、伊達政宗元服、伊達成実元服──と細かく二人の年表が並ぶ
けれど上段は、一の姫生誕、伊達安芸介の養子となる──と書かれて以降、空白が続いている
そして天正十四年の五月
『一の姫、仙台へ帰る』
そこから私の年表は怒涛の勢いで出来事が重なっていた
『奥越合戦にて初陣を飾る』
『第五次川中島合戦に出陣』
『松永久秀の人質となる』
『安芸の戦いにより救出される』
『拠点を大森城へ移す』
『三方ヶ原の合戦に出陣』
『政宗の名代として伊予へ発つ』
『大阪合戦に出陣』
『大森伊達家へ嫁ぐ、伊達成実正室』
『長女海夜姫誕生』
『嫡男
春千代は倫実って名前をもらったんだ、いい名前だな
お義姉さんの本当の名前も、
漢字を変えて名前にしたのかもしれない
「……」
けれど、そのすぐ横
文禄二年、四月
『大森城にて死没、享年二十四』
ああ──なんて、早い
駆け抜けた人生の、なんと短いことか
この一室で事足りてしまうほどの人生だったのだ
それが私の……伊達夕華の人生だったんだ
