番外編2 宮城旅行松島編
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時刻はまもなく十一時
船着場には乗客が列を形成していた
「平日ッスけど、多いもんスねぇ」
「松島は一大観光地だ、仕方ない
しかし海外からの客が意外にも多いようだな」
「台湾からのお客様でいらっしゃるのでは?
仙台空港から直行便が出ているそうですよ」
流石に船に乗るとあっては従者組も遠巻きに付き従うというわけにはいかないらしく、三人も私たちと一緒に列に並んできた
しかし留守さんも白石さんも、護衛だって言われても分からないくらい、観光客に馴染んでるな……
スタッフさんにチケットを見せて、いざ遊覧船へ
寒いから船室に入ろうかとも考えたけど、せっかくならガラス越しじゃなくて生で見たい
ちょっと悩んで、後方のデッキにそのまま居座ることにした
「兄様と小十郎さんは?」
「あの二人なら船室
梵の奴が寒いのは嫌なんだってよ」
「奥州育ちとは思えない発言ですね……」
「んで、二人の護衛として白石が中にいる
こっちの付き添いは留守と喜多姐ちゃんだ」
「今からでも遅くないッスよ、姫様
中の方が暖かいッス!」
「外で!」
「あぁぁぁぁ!!」
留守さんが崩れ落ちた
面白い……
船はモーター音を爆音で鳴らして、船着場から松島湾へと進み始めた
寒波が襲った真冬の東北、更に海の上を爆走する船
……うん、寒い!!
「お前、本当に寒くないんだな?」
「寒いですけど、耐えられる寒さです!」
「喜多めがカイロもお渡ししておりますれば
それよりも夕華様、松島の景色を存分にご堪能くださいませ」
喜多さんにそう誘われて、私は改めて松島湾に点在する島々に目を向けた
松島は大小様々な小島がたくさんあって、長い時間をかけて海に表面を削られたせいか、地層が剥き出しだったりもする
船内からのアナウンスでは、島に纏わるエピソードを紹介してくれるんだけど……
「見事に伊達政宗関連ばっかりですね……」
「まあ東北といやぁ伊達政宗だしなぁ」
史実の──と言うのが正しいかは分からないけど、この世界にかつて存在した伊達政宗も、相当な破天荒だったみたいだもんね
なんというか、兄様とはまた別の方向で、ぶっ飛んだエピソード持ちというか……
「……伊達政宗がインパクトの強い話を残しまくったお陰で、伊達成実のやらかしエピソードがことごとく表に出てこなくなるのは、どの世界も同じなんだなって思ったよな……」
「成実さん、そんなにやらかしましたっけ」
「俺はこれでも伊達家の常識人枠だって自負があんだけどよ
まぁこっちの伊達成実で有名なエピソードって言えば、近習が火薬に火を落としたせいで大火事になって、右手の指が全部くっついちまったって話じゃねぇかな」
「え……」
「そんな手でよく戦えたもんだよなぁ
さすが奥州一の豪勇っつーか……」
成実さんも右手を負傷したことはある
だけどそれは指が全部くっついてしまうような怪我ではなかった
もちろん、右手が使えなくなる可能性は大いにあったそうだけど
「そんなハンディキャップを背負いながら、武の成実として名を馳せたってんだからな
本当は俺なんかと同列に語っちゃいけないのかもしれねぇや」
「そんな、成実さんだって武勇に優れた人じゃないですか」
「うーん……どうだかなぁ
そりゃ並の兵士に比べりゃあ強いとは思うけど、上には上がいたしさぁ」
成実さんの視線が船室へと向けられる
そりゃあ兄様と小十郎さんは、伊達軍の中でも飛び抜けて強かった
双竜が揃った奥州伊達軍に死角なし、そう言わしめる程だったのだから
とはいえ、だ
生まれた土地だったというのもあるだろうけれど、小田原を手に入れるまで、大森は伊達領の最南端だった
相馬や蘆名などの他家から伊達を守らなければならない場所を、成実さんを始めとする大森伊達家はずっと守ってきたのだ
「強くなかったら、兄様は成実さんに大森を最後まで任せませんでしたよ」
「ん?」
「成実さんの実力を買っていたからこそ、兄様は大森を成実さんに守らせ続けたんだと思います
だって成実さんはただ強いだけじゃなくて、知略にも富んでいたでしょう?
戦うだけなら誰にだってできます、私にだって
けれど戦とは、戦うだけではないですから」
だから成実さんが、この世界の伊達成実に劣るなんて話にはならない
そもそも比べるようなものではないから
伊達成実は伊達政宗の重臣であり、奥州一の豪勇
伊達の双璧、伊達三傑に名を連ねる、武の成実
「成実さんの人生は成実さんだけのものですし、この世界で名を馳せた伊達成実の人生とはまったく別のものです
重なる部分はあると思いますけどね」
強風に髪を遊ばれながら、成実さんが遠くを見つめるように目を細めた
成実さんの性格は私がよく知ってる
小さなことで悩みながら、それでも前に進んできた人だ
上には上がいる、それはそうだろう
世界はそんなふうにできてるんだから
だけどそれを嘆く必要なんてどこにもない
あなたは、強いひとだ
「成実さんは、誰にも負けないくらい、強くて格好よくて、優しい人ですよ
私はこの世界の伊達成実に負けてないと思います」
「そっか
……他の誰でもない、お前にそう思ってもらえてるんなら、それでいいよな」
「ふふ……」
どこか気恥しそうな微笑みが向けられて、私もそっと笑みを返す
ああでも、二人の伊達成実に共通点があるとすれば……
「一度は伊達政宗の元から出奔するところは、お揃いだったみたいですね」
「……」
「成実さん?
なんで顔を逸らすんですか?」
「伊達成実はともかく、俺のはただの黒歴史だから、マジで忘れてほしいかなって……」
「忘れられると思ったんですか?」
「思わないです……」
背後で喜多さんが呆れたようにため息をついた
本当にこの人は、とでも言いたげだ
そりゃそうだ!
こっちがどれだけ傷ついたことか!
船着場には乗客が列を形成していた
「平日ッスけど、多いもんスねぇ」
「松島は一大観光地だ、仕方ない
しかし海外からの客が意外にも多いようだな」
「台湾からのお客様でいらっしゃるのでは?
仙台空港から直行便が出ているそうですよ」
流石に船に乗るとあっては従者組も遠巻きに付き従うというわけにはいかないらしく、三人も私たちと一緒に列に並んできた
しかし留守さんも白石さんも、護衛だって言われても分からないくらい、観光客に馴染んでるな……
スタッフさんにチケットを見せて、いざ遊覧船へ
寒いから船室に入ろうかとも考えたけど、せっかくならガラス越しじゃなくて生で見たい
ちょっと悩んで、後方のデッキにそのまま居座ることにした
「兄様と小十郎さんは?」
「あの二人なら船室
梵の奴が寒いのは嫌なんだってよ」
「奥州育ちとは思えない発言ですね……」
「んで、二人の護衛として白石が中にいる
こっちの付き添いは留守と喜多姐ちゃんだ」
「今からでも遅くないッスよ、姫様
中の方が暖かいッス!」
「外で!」
「あぁぁぁぁ!!」
留守さんが崩れ落ちた
面白い……
船はモーター音を爆音で鳴らして、船着場から松島湾へと進み始めた
寒波が襲った真冬の東北、更に海の上を爆走する船
……うん、寒い!!
「お前、本当に寒くないんだな?」
「寒いですけど、耐えられる寒さです!」
「喜多めがカイロもお渡ししておりますれば
それよりも夕華様、松島の景色を存分にご堪能くださいませ」
喜多さんにそう誘われて、私は改めて松島湾に点在する島々に目を向けた
松島は大小様々な小島がたくさんあって、長い時間をかけて海に表面を削られたせいか、地層が剥き出しだったりもする
船内からのアナウンスでは、島に纏わるエピソードを紹介してくれるんだけど……
「見事に伊達政宗関連ばっかりですね……」
「まあ東北といやぁ伊達政宗だしなぁ」
史実の──と言うのが正しいかは分からないけど、この世界にかつて存在した伊達政宗も、相当な破天荒だったみたいだもんね
なんというか、兄様とはまた別の方向で、ぶっ飛んだエピソード持ちというか……
「……伊達政宗がインパクトの強い話を残しまくったお陰で、伊達成実のやらかしエピソードがことごとく表に出てこなくなるのは、どの世界も同じなんだなって思ったよな……」
「成実さん、そんなにやらかしましたっけ」
「俺はこれでも伊達家の常識人枠だって自負があんだけどよ
まぁこっちの伊達成実で有名なエピソードって言えば、近習が火薬に火を落としたせいで大火事になって、右手の指が全部くっついちまったって話じゃねぇかな」
「え……」
「そんな手でよく戦えたもんだよなぁ
さすが奥州一の豪勇っつーか……」
成実さんも右手を負傷したことはある
だけどそれは指が全部くっついてしまうような怪我ではなかった
もちろん、右手が使えなくなる可能性は大いにあったそうだけど
「そんなハンディキャップを背負いながら、武の成実として名を馳せたってんだからな
本当は俺なんかと同列に語っちゃいけないのかもしれねぇや」
「そんな、成実さんだって武勇に優れた人じゃないですか」
「うーん……どうだかなぁ
そりゃ並の兵士に比べりゃあ強いとは思うけど、上には上がいたしさぁ」
成実さんの視線が船室へと向けられる
そりゃあ兄様と小十郎さんは、伊達軍の中でも飛び抜けて強かった
双竜が揃った奥州伊達軍に死角なし、そう言わしめる程だったのだから
とはいえ、だ
生まれた土地だったというのもあるだろうけれど、小田原を手に入れるまで、大森は伊達領の最南端だった
相馬や蘆名などの他家から伊達を守らなければならない場所を、成実さんを始めとする大森伊達家はずっと守ってきたのだ
「強くなかったら、兄様は成実さんに大森を最後まで任せませんでしたよ」
「ん?」
「成実さんの実力を買っていたからこそ、兄様は大森を成実さんに守らせ続けたんだと思います
だって成実さんはただ強いだけじゃなくて、知略にも富んでいたでしょう?
戦うだけなら誰にだってできます、私にだって
けれど戦とは、戦うだけではないですから」
だから成実さんが、この世界の伊達成実に劣るなんて話にはならない
そもそも比べるようなものではないから
伊達成実は伊達政宗の重臣であり、奥州一の豪勇
伊達の双璧、伊達三傑に名を連ねる、武の成実
「成実さんの人生は成実さんだけのものですし、この世界で名を馳せた伊達成実の人生とはまったく別のものです
重なる部分はあると思いますけどね」
強風に髪を遊ばれながら、成実さんが遠くを見つめるように目を細めた
成実さんの性格は私がよく知ってる
小さなことで悩みながら、それでも前に進んできた人だ
上には上がいる、それはそうだろう
世界はそんなふうにできてるんだから
だけどそれを嘆く必要なんてどこにもない
あなたは、強いひとだ
「成実さんは、誰にも負けないくらい、強くて格好よくて、優しい人ですよ
私はこの世界の伊達成実に負けてないと思います」
「そっか
……他の誰でもない、お前にそう思ってもらえてるんなら、それでいいよな」
「ふふ……」
どこか気恥しそうな微笑みが向けられて、私もそっと笑みを返す
ああでも、二人の伊達成実に共通点があるとすれば……
「一度は伊達政宗の元から出奔するところは、お揃いだったみたいですね」
「……」
「成実さん?
なんで顔を逸らすんですか?」
「伊達成実はともかく、俺のはただの黒歴史だから、マジで忘れてほしいかなって……」
「忘れられると思ったんですか?」
「思わないです……」
背後で喜多さんが呆れたようにため息をついた
本当にこの人は、とでも言いたげだ
そりゃそうだ!
こっちがどれだけ傷ついたことか!
