番外編2 宮城旅行松島編
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時刻は十時を回った
片倉号はというと、本当に松島に向かっているのか怪しいくらい、山の中を走っている
少なくとも私の視界に海は見えていない
「これ本当に松島に向かってんだよな?」
私が疑問に思っていたことを成実さんが言った
カーナビ上は本当に目と鼻の先くらいまで迫っているらしいけど、周りは面白いくらい山だ
登ってきた坂道が下りに差し掛かった、その時
「え──えぇぇええ!!」
「海だー!?」
私と成実さんが仲良く叫んだ
なんと、下り坂になった途端、前方にそれは見事な海がお目見えしたのだ
青空に浮かぶ太陽の光を、海の水面が反射してキラキラしている
す……すごい!
急に海が出てきた!
「すごいすごい!
海、海ですよ成実さん!」
「すげーな……
正直、道を間違えてる可能性あるんじゃねーかって思ってたぞ……」
「Car-naviの通りに進んだのにか?」
「だってずっと山ん中だったし……」
内心でうわぁうわぁとはしゃいでいる間に、片倉号は下り坂を降りて松島の市街地へ入った
海沿いの道路の陸側には、いろんなお店が立ち並び、海側には公園や船着場
さすが日本三景の松島、ド平日なのに観光客でいっぱいだ
海がこんなに近いなんて知らなかった、松島ってこんな感じなんだ
「とりあえず海側の駐車場に停めようぜ」
「ああ」
空いていた海側のコインパーキングに入って、片倉号はようやく停車した
意気揚々と降りると、外は思った程の寒さではない
今日が元々暖かいのか、それとも真冬の東北の寒さに慣れてきたのか、どっちなんだろう
「夕華、マフラーと手袋、忘れてるぞ」
「はーい」
成実さんに指摘されて、マフラーと手袋をつける
遊覧船に乗る時はさすがに寒いだろうしね
「遊覧船は何時の便に乗るよ?」
「最短は十一時だ
まだ四十分はあるが……政宗様、如何なさいますか」
「なら、そこにでも寄っていくか」
兄様が視線を向けた先は、崖の上
なぜかそこに人の姿がある
「あそこ、何があるんですか?」
「重要文化財」
「えっ」
聞き捨てならないワードが聞こえてきた気がする
さっさと歩き始めた兄様たちを追いかけて、小走りで隣へ追いつく
その途中で慰霊碑があって──兄様はそこで足を止めた
「……」
震災の爪痕を今に伝えるものは、ここがただの観光地ではない事を表している
十数年前の悲劇は、私達も忘れていない
テレビで観た光景の何もかもが、どこか遠い国の出来事のようで
私たちにとって特別な思いのある宮城、ひいては東北の出来事だなんて、思えなくて……
「……行くぞ」
「あ……はい」
行く前に慰霊碑の裏側を覗いてみると、そこには津波到達高が記されていた
……私よりもはるか頭上に、線がある
(忘れちゃいけない……)
ひょっとしたら兄様たちは、前世の頃にも大きな災害を経験されたかもしれない
でも私が奥州で過ごしていた頃は、ここまでの災害は起きなくて……
「夕華ー?」
「あっ……すぐ行きます!」
慰霊碑に手を合わせて、成実さんのほうへと走る
兄様と小十郎さんは先に行ってしまったようだ
赤い橋の前で成実さんに追いついて、成実さんが手を差し出してくれたので遠慮なく繋いでやった
崖だと思っていたのは、実は小島だったようで、透かし橋の足元からは海面が覗いている
「重要文化財があるって兄様は仰ってましたけど……」
「まあ、歴史的価値は高いんじゃねーの?
四百年前の建築物だし」
「えっ!
それって伊達政宗が……?」
「そら勿論
建物は瑞巌寺の一部みたいになってて……お、見えてきた」
橋を渡って見えたのは、小さな御堂
そして奥に見える、松島の景色
「わ、いい眺め……!」
「松島はどこを切り取っても画になるよな」
海の景色を堪能してから、御堂を振り返る
お賽銭を入れて手を合わせて、改めて建物を見上げた
五太堂──と扁額には彫られている
「Official nameは『五大堂』──東北最古の桃山建築で、慶長九年に伊達政宗が造営した仏堂だ
よく見りゃ十二支の彫刻が見える」
「やっぱり詳しいんですね
調べたんですか?」
「……ここが俺の治めた日ノ本の続きなんじゃねぇかと、思いたかっただけだ
調べりゃ調べるほど、俺の知らねぇ『伊達政宗』が出てきやがる
俺の治めた世は夢か幻なんだと……突き付けられた心地だった」
五大堂を見上げて、兄様は無表情のまま呟いた
兄様が『伊達政宗』について調べたのは、小学校に上がる前だったらしい
その頃はまだ小十郎さんとは出会っていなかったらしくて、身近にいたのは両親と兄上様くらいなものだったという
「もし俺の持って生まれたこの記憶が、ただの夢なんだとしたら──俺の天下は、間違いだったことになるんじゃねぇのか
ただの夢だったら、俺と共に竜の天下を目指して駆け抜けた奴らとのことも嘘で……
大事な妹のことすら、存在しないモンだとしたら」
そう呟いて、兄様は言葉を切った
おそらく兄様の中で、成実さんや小十郎さん、綱元さんや原田さんと再会できたことが、支えであり証明でもあったのだと思う
この世界ではない、どこかの世界で手にした天下は──竜の天下は、嘘偽りなく本物だったと
何よりお盆と正月の集まりで、私とも再会したのだ
それでも、言葉を交わしたことは一度や二度ほどだろう
本家の跡取りと分家末席の娘では、あまりにも立場が遠すぎる
だから兄様は、きっと、私のことを遠くから見守ってくれていたんだと思う
「……あの、兄様」
「ん?」
「私が兄様と同じ高校に入学してきたとき、どう思いました?」
「柄にもねぇことを言やぁ、お前のClassまで顔を見に行こうとしたくらいには嬉しかったぜ
ンなことしようもんなら、お前が悪い意味で目立っちまっただろうがな」
「私が薙刀部に入ったときは?」
「お前って奴は今生でも薙刀を振り回すのかと思って笑ったぜ
おまけに分かりやすく活躍しやがる
だから記憶もあるんだろうと踏んで声を掛けたら、えらく他人行儀ときたもんだ」
「うっ、すみません……
私も本当は兄様と一緒にいたかったんですよ、本当です!
でも兄様がおっしゃる通り、兄様と仲が良いとなると変に悪目立ちしそうだし、伊達家の集まりでは関わりなんてないくらい遠い人だったから……」
「OK,OK.
I got it.
だからちゃんと他人行儀にしてやっただろ」
可笑しそうに肩を揺らして、兄様は透かし橋へと戻っていった
折角だから、写真は撮っておこうかな
私の知らない、けれどこの世界を行きた伊達政宗が存在する証だ
スマートフォンで写真を撮って、私は橋の手前で待ってくれている三人の元へ走った
片倉号はというと、本当に松島に向かっているのか怪しいくらい、山の中を走っている
少なくとも私の視界に海は見えていない
「これ本当に松島に向かってんだよな?」
私が疑問に思っていたことを成実さんが言った
カーナビ上は本当に目と鼻の先くらいまで迫っているらしいけど、周りは面白いくらい山だ
登ってきた坂道が下りに差し掛かった、その時
「え──えぇぇええ!!」
「海だー!?」
私と成実さんが仲良く叫んだ
なんと、下り坂になった途端、前方にそれは見事な海がお目見えしたのだ
青空に浮かぶ太陽の光を、海の水面が反射してキラキラしている
す……すごい!
急に海が出てきた!
「すごいすごい!
海、海ですよ成実さん!」
「すげーな……
正直、道を間違えてる可能性あるんじゃねーかって思ってたぞ……」
「Car-naviの通りに進んだのにか?」
「だってずっと山ん中だったし……」
内心でうわぁうわぁとはしゃいでいる間に、片倉号は下り坂を降りて松島の市街地へ入った
海沿いの道路の陸側には、いろんなお店が立ち並び、海側には公園や船着場
さすが日本三景の松島、ド平日なのに観光客でいっぱいだ
海がこんなに近いなんて知らなかった、松島ってこんな感じなんだ
「とりあえず海側の駐車場に停めようぜ」
「ああ」
空いていた海側のコインパーキングに入って、片倉号はようやく停車した
意気揚々と降りると、外は思った程の寒さではない
今日が元々暖かいのか、それとも真冬の東北の寒さに慣れてきたのか、どっちなんだろう
「夕華、マフラーと手袋、忘れてるぞ」
「はーい」
成実さんに指摘されて、マフラーと手袋をつける
遊覧船に乗る時はさすがに寒いだろうしね
「遊覧船は何時の便に乗るよ?」
「最短は十一時だ
まだ四十分はあるが……政宗様、如何なさいますか」
「なら、そこにでも寄っていくか」
兄様が視線を向けた先は、崖の上
なぜかそこに人の姿がある
「あそこ、何があるんですか?」
「重要文化財」
「えっ」
聞き捨てならないワードが聞こえてきた気がする
さっさと歩き始めた兄様たちを追いかけて、小走りで隣へ追いつく
その途中で慰霊碑があって──兄様はそこで足を止めた
「……」
震災の爪痕を今に伝えるものは、ここがただの観光地ではない事を表している
十数年前の悲劇は、私達も忘れていない
テレビで観た光景の何もかもが、どこか遠い国の出来事のようで
私たちにとって特別な思いのある宮城、ひいては東北の出来事だなんて、思えなくて……
「……行くぞ」
「あ……はい」
行く前に慰霊碑の裏側を覗いてみると、そこには津波到達高が記されていた
……私よりもはるか頭上に、線がある
(忘れちゃいけない……)
ひょっとしたら兄様たちは、前世の頃にも大きな災害を経験されたかもしれない
でも私が奥州で過ごしていた頃は、ここまでの災害は起きなくて……
「夕華ー?」
「あっ……すぐ行きます!」
慰霊碑に手を合わせて、成実さんのほうへと走る
兄様と小十郎さんは先に行ってしまったようだ
赤い橋の前で成実さんに追いついて、成実さんが手を差し出してくれたので遠慮なく繋いでやった
崖だと思っていたのは、実は小島だったようで、透かし橋の足元からは海面が覗いている
「重要文化財があるって兄様は仰ってましたけど……」
「まあ、歴史的価値は高いんじゃねーの?
四百年前の建築物だし」
「えっ!
それって伊達政宗が……?」
「そら勿論
建物は瑞巌寺の一部みたいになってて……お、見えてきた」
橋を渡って見えたのは、小さな御堂
そして奥に見える、松島の景色
「わ、いい眺め……!」
「松島はどこを切り取っても画になるよな」
海の景色を堪能してから、御堂を振り返る
お賽銭を入れて手を合わせて、改めて建物を見上げた
五太堂──と扁額には彫られている
「Official nameは『五大堂』──東北最古の桃山建築で、慶長九年に伊達政宗が造営した仏堂だ
よく見りゃ十二支の彫刻が見える」
「やっぱり詳しいんですね
調べたんですか?」
「……ここが俺の治めた日ノ本の続きなんじゃねぇかと、思いたかっただけだ
調べりゃ調べるほど、俺の知らねぇ『伊達政宗』が出てきやがる
俺の治めた世は夢か幻なんだと……突き付けられた心地だった」
五大堂を見上げて、兄様は無表情のまま呟いた
兄様が『伊達政宗』について調べたのは、小学校に上がる前だったらしい
その頃はまだ小十郎さんとは出会っていなかったらしくて、身近にいたのは両親と兄上様くらいなものだったという
「もし俺の持って生まれたこの記憶が、ただの夢なんだとしたら──俺の天下は、間違いだったことになるんじゃねぇのか
ただの夢だったら、俺と共に竜の天下を目指して駆け抜けた奴らとのことも嘘で……
大事な妹のことすら、存在しないモンだとしたら」
そう呟いて、兄様は言葉を切った
おそらく兄様の中で、成実さんや小十郎さん、綱元さんや原田さんと再会できたことが、支えであり証明でもあったのだと思う
この世界ではない、どこかの世界で手にした天下は──竜の天下は、嘘偽りなく本物だったと
何よりお盆と正月の集まりで、私とも再会したのだ
それでも、言葉を交わしたことは一度や二度ほどだろう
本家の跡取りと分家末席の娘では、あまりにも立場が遠すぎる
だから兄様は、きっと、私のことを遠くから見守ってくれていたんだと思う
「……あの、兄様」
「ん?」
「私が兄様と同じ高校に入学してきたとき、どう思いました?」
「柄にもねぇことを言やぁ、お前のClassまで顔を見に行こうとしたくらいには嬉しかったぜ
ンなことしようもんなら、お前が悪い意味で目立っちまっただろうがな」
「私が薙刀部に入ったときは?」
「お前って奴は今生でも薙刀を振り回すのかと思って笑ったぜ
おまけに分かりやすく活躍しやがる
だから記憶もあるんだろうと踏んで声を掛けたら、えらく他人行儀ときたもんだ」
「うっ、すみません……
私も本当は兄様と一緒にいたかったんですよ、本当です!
でも兄様がおっしゃる通り、兄様と仲が良いとなると変に悪目立ちしそうだし、伊達家の集まりでは関わりなんてないくらい遠い人だったから……」
「OK,OK.
I got it.
だからちゃんと他人行儀にしてやっただろ」
可笑しそうに肩を揺らして、兄様は透かし橋へと戻っていった
折角だから、写真は撮っておこうかな
私の知らない、けれどこの世界を行きた伊達政宗が存在する証だ
スマートフォンで写真を撮って、私は橋の手前で待ってくれている三人の元へ走った
