番外編1 宮城旅行白石編
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傑山寺に到着した私たちを出迎えたのは
片倉小十郎景綱の銅像だった
「……えっと、ものすごく前面に押し出してきますね、小十郎さんのこと」
「そもそもこの小十郎とは別物の片倉小十郎景綱ではございまするが……」
「奥州の片倉家といえば、片倉小十郎景綱が一番有名ですもんね
……だからって銅像まで建てるのか……」
「片倉家の菩提寺であるのは間違いないわけだし、問題ないんじゃねーの?
分骨されたとはいえ、小十郎がここにも眠ってるのは間違いないわけだしな」
「いやだから、俺じゃねぇとさっきも言って……」
小十郎さんが反論を諦めた
私はうっかりだったけど、成実さんはわざとだ
その証拠に兄様が笑ってるもん
お賽銭を入れて、仏様に手を合わせる
そうして改めてお寺の敷地を一周することにした
「もうお昼も過ぎましたけど、しっかり雪が残ってますね」
「muffler巻いとけ、寒いぞ
陽も差さねえし、今日はこのまま残るだろうな」
巻いておけと言いつつ、兄様が手ずからマフラーを巻いてくれた
うーん、ナチュラルな甘やかし
「明日は天気も持ち直すようですな
松島は快晴だと天気予報が」
「遊覧船に乗るなら結局寒いけどな
チケットは留守が手配してんだっけ?」
「ああ、人数分予約させた」
真冬の遊覧船は絶対に寒いだろうな
暖かい格好しなきゃ
それにしても、庭園も綺麗だし、なにより周囲の自然とのコントラストが良い
そういえば笛を持ってたな、景綱公の銅像
小十郎さんもよく笛を吹いていたのを思い出す
「あの一本杉が片倉小十郎景綱の墓標との事です」
小十郎さんが視線を向けた先には、立派な杉の木がある
最低でも樹齢四百年ってことか……
その横に小さな五輪塔があって、こちらは奥方様のお墓なんだとか
「……何やら複雑な心持ちになってきましたな」
「ある意味じゃテメェの墓参りだもんな」
「いやあの、本当にここで眠っているのは、この小十郎ではなく……」
とうとう兄様まで乗っかってきちゃった
杉の木に手を合わせて、この世界の景綱公へご挨拶をする
どうかこれからも白石の地を見守っていてほしい
私たちは、あなたの仕えた伊達家の者ではないけれど、民を思い、日ノ本の行く末を憂い、それ故に天下に乗り出し、誰もが笑って暮らせる明るい世を目指したのだから
目を開けて杉の木を見上げる
静かに、けれどどっしりと根を張る杉の木は、まるで片倉小十郎景綱そのもののように思えた
「行くか」
兄様の声に頷く
伊達家を……この世界の伊達政宗を支え続けた忠実な家臣が眠る、静かな寺
彼はこれから先も、きっとここから白石を見守り続ける
移りゆく世を静かに──変わらぬものもあると信じて
* * *
夕方になってお宿へ戻ってきた私たちは、それぞれのお部屋で寛ぐことにした
私も今回は大浴場ではなく、部屋の温泉に浸かる事にしたので、喜多さんとは別行動だ
あとで成実さんのお部屋に遊びに行っちゃおうかな
お部屋の中にある温泉で温まりながら、ぼんやりと思い出すのは、前世の頃
海夜のことも春のことも、同じだけの愛情を注いできたつもりだけど、やっぱり後悔が残っている
あの子達に母親らしいことをしてあげられなかったし、海夜に武家の妻としての立ち振る舞いを教えることもできなかった
(それについては、生きていたとしても、教えられたか微妙だけど……)
なにせこんな性格だし、あの世にあっては型破りだっただろうしね
それでも、あの子達の成長を見たかったし、隠居した成実さんと一緒に小さな庵で余生を過ごしたかった
兄様の治める平和な日ノ本を、たくさんの人達と分かち合って……
「……」
湯で顔を洗って、湯船から立ち上がる
ああすればよかった、こうすればよかった
後悔なんて数えたらきりがないほどあって、私たちはその上に生きている
だけど……この後悔だけは、忘れちゃいけないんだと思う
「……よし」
浴衣に着替えて、部屋にある水を飲む
汗が引いてきたので化粧水をパッティングして、それからフェイスパックをつけ、ぼんやりとスマートフォンのSNSをチェック
そのとき、コンコンとドアがノックされた
「夕華、起きてるかー?
俺だー、成実さんだぞー」
……成実さんならいっか!
パックをつけたままドアを開けると、「うおぉ」とビビった声が聞こえてきた
失礼しちゃうな、まったく
「スキンケアできて偉いぞー」
「なんとはなしに、おちょくられた気がしました」
「褒めてやったのに」
「笑ってますよ、顔が」
部屋に入れてあげると、成実さんはさっそく世話焼きモードに突入
パックの時間も終わって、ぺりっと剥がしたところで、手を洗ってきた成実さんがあれこれと私の顔に塗り始めた
「喜多さんが仕事取るなって怒ってましたよ」
「呼ぶか?」
「もう成実さんがやってくれてるじゃないですか」
「お前は磨けば磨くほど、どんどん綺麗になってくからなー
なんか楽しくなっちまってよ」
「磨けば磨くほど、行く先々で知らない男の目線を勝手に奪うらしい私が出来上がるんですけどね」
「まーそれに関しては、大学では絶えず幸村と親泰が脇を固めてくれてたしな
社内でも綱元が張り付いててくれるだろうし、あんまり心配してねぇんだよ、俺はな
あのクソナンパ事件は一生根に持つけど
あンのふざけた野郎共、次に会ったらただじゃおかねえ」
「社会から消すのはやめてくださいね……」
「わぁーってるよ、お前が望まねぇだろうし
……俺も現世でまで人を始末するのは勘弁だ」
つーか普通に犯罪だしな
そう言って成実さんは乳液をしっかりと塗り込んだ
ド真剣な顔が間近に寄っても、なんにも思わなくなったもんだ
慣れって恐ろしい
片倉小十郎景綱の銅像だった
「……えっと、ものすごく前面に押し出してきますね、小十郎さんのこと」
「そもそもこの小十郎とは別物の片倉小十郎景綱ではございまするが……」
「奥州の片倉家といえば、片倉小十郎景綱が一番有名ですもんね
……だからって銅像まで建てるのか……」
「片倉家の菩提寺であるのは間違いないわけだし、問題ないんじゃねーの?
分骨されたとはいえ、小十郎がここにも眠ってるのは間違いないわけだしな」
「いやだから、俺じゃねぇとさっきも言って……」
小十郎さんが反論を諦めた
私はうっかりだったけど、成実さんはわざとだ
その証拠に兄様が笑ってるもん
お賽銭を入れて、仏様に手を合わせる
そうして改めてお寺の敷地を一周することにした
「もうお昼も過ぎましたけど、しっかり雪が残ってますね」
「muffler巻いとけ、寒いぞ
陽も差さねえし、今日はこのまま残るだろうな」
巻いておけと言いつつ、兄様が手ずからマフラーを巻いてくれた
うーん、ナチュラルな甘やかし
「明日は天気も持ち直すようですな
松島は快晴だと天気予報が」
「遊覧船に乗るなら結局寒いけどな
チケットは留守が手配してんだっけ?」
「ああ、人数分予約させた」
真冬の遊覧船は絶対に寒いだろうな
暖かい格好しなきゃ
それにしても、庭園も綺麗だし、なにより周囲の自然とのコントラストが良い
そういえば笛を持ってたな、景綱公の銅像
小十郎さんもよく笛を吹いていたのを思い出す
「あの一本杉が片倉小十郎景綱の墓標との事です」
小十郎さんが視線を向けた先には、立派な杉の木がある
最低でも樹齢四百年ってことか……
その横に小さな五輪塔があって、こちらは奥方様のお墓なんだとか
「……何やら複雑な心持ちになってきましたな」
「ある意味じゃテメェの墓参りだもんな」
「いやあの、本当にここで眠っているのは、この小十郎ではなく……」
とうとう兄様まで乗っかってきちゃった
杉の木に手を合わせて、この世界の景綱公へご挨拶をする
どうかこれからも白石の地を見守っていてほしい
私たちは、あなたの仕えた伊達家の者ではないけれど、民を思い、日ノ本の行く末を憂い、それ故に天下に乗り出し、誰もが笑って暮らせる明るい世を目指したのだから
目を開けて杉の木を見上げる
静かに、けれどどっしりと根を張る杉の木は、まるで片倉小十郎景綱そのもののように思えた
「行くか」
兄様の声に頷く
伊達家を……この世界の伊達政宗を支え続けた忠実な家臣が眠る、静かな寺
彼はこれから先も、きっとここから白石を見守り続ける
移りゆく世を静かに──変わらぬものもあると信じて
* * *
夕方になってお宿へ戻ってきた私たちは、それぞれのお部屋で寛ぐことにした
私も今回は大浴場ではなく、部屋の温泉に浸かる事にしたので、喜多さんとは別行動だ
あとで成実さんのお部屋に遊びに行っちゃおうかな
お部屋の中にある温泉で温まりながら、ぼんやりと思い出すのは、前世の頃
海夜のことも春のことも、同じだけの愛情を注いできたつもりだけど、やっぱり後悔が残っている
あの子達に母親らしいことをしてあげられなかったし、海夜に武家の妻としての立ち振る舞いを教えることもできなかった
(それについては、生きていたとしても、教えられたか微妙だけど……)
なにせこんな性格だし、あの世にあっては型破りだっただろうしね
それでも、あの子達の成長を見たかったし、隠居した成実さんと一緒に小さな庵で余生を過ごしたかった
兄様の治める平和な日ノ本を、たくさんの人達と分かち合って……
「……」
湯で顔を洗って、湯船から立ち上がる
ああすればよかった、こうすればよかった
後悔なんて数えたらきりがないほどあって、私たちはその上に生きている
だけど……この後悔だけは、忘れちゃいけないんだと思う
「……よし」
浴衣に着替えて、部屋にある水を飲む
汗が引いてきたので化粧水をパッティングして、それからフェイスパックをつけ、ぼんやりとスマートフォンのSNSをチェック
そのとき、コンコンとドアがノックされた
「夕華、起きてるかー?
俺だー、成実さんだぞー」
……成実さんならいっか!
パックをつけたままドアを開けると、「うおぉ」とビビった声が聞こえてきた
失礼しちゃうな、まったく
「スキンケアできて偉いぞー」
「なんとはなしに、おちょくられた気がしました」
「褒めてやったのに」
「笑ってますよ、顔が」
部屋に入れてあげると、成実さんはさっそく世話焼きモードに突入
パックの時間も終わって、ぺりっと剥がしたところで、手を洗ってきた成実さんがあれこれと私の顔に塗り始めた
「喜多さんが仕事取るなって怒ってましたよ」
「呼ぶか?」
「もう成実さんがやってくれてるじゃないですか」
「お前は磨けば磨くほど、どんどん綺麗になってくからなー
なんか楽しくなっちまってよ」
「磨けば磨くほど、行く先々で知らない男の目線を勝手に奪うらしい私が出来上がるんですけどね」
「まーそれに関しては、大学では絶えず幸村と親泰が脇を固めてくれてたしな
社内でも綱元が張り付いててくれるだろうし、あんまり心配してねぇんだよ、俺はな
あのクソナンパ事件は一生根に持つけど
あンのふざけた野郎共、次に会ったらただじゃおかねえ」
「社会から消すのはやめてくださいね……」
「わぁーってるよ、お前が望まねぇだろうし
……俺も現世でまで人を始末するのは勘弁だ」
つーか普通に犯罪だしな
そう言って成実さんは乳液をしっかりと塗り込んだ
ド真剣な顔が間近に寄っても、なんにも思わなくなったもんだ
慣れって恐ろしい
