番外編1 宮城旅行白石編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はー、美味しかった!」
お店を出たところで、私はそう言って後ろを振り返った
会計を終えて出てきた小十郎さんが私を見下ろし、小首を傾げる
「ご馳走様でした、小十郎さん!」
「とんでもございませぬ
この程度は当然のことなれば
それよりも夕華様、外は冷えまする
上着をしっかりと羽織られよ」
「食ったばっかで暑いんだってよ
梵だって上着脱いでるし」
「どうせすぐ車乗るだろ
coatなんざ着なくていい」
車に乗り込んでシートベルトを締め、次の目的地はどこかなぁとそわそわしつつ、小十郎さんを見やる
小十郎さんはふとこちらを振り返ると
「政宗様、夕華様
お次はどちらへ?」
不意打ちのようにそう尋ねられ、兄様が腕を組んで唸った
ぶっちゃけて言えば、ほぼ今日の予定はクリアしている
ちなみに今は昼の二時前
どこもかしこも冬の時期は夕方四時で閉まってしまうから、立ち寄れるとしたらあと一箇所かな、という感じだ
「それじゃあ……傑山寺でも行くか」
「傑山寺?」
「片倉家の菩提寺にございます
といってもこの世では三代目当主が改葬したため、代々の墓があるというわけではありませぬが」
「ちゃんと残ってるものなんですねぇ」
……そう相槌を打ったところで、ふと気になった
あの世界での私、どこにお墓を立ててもらったんだろう……?
その辺は何も言い残したりしなかったから、もしかして仙台まで連れて帰られちゃったりして……
「し、成実さん」
「どうした?
えらく深刻そうな顔して」
「私のお墓、どこにしたんですか……?」
「お前の墓なら大森の寺だよ、俺もそこだ
さすがに死んだあとは一緒じゃなきゃ駄目だろって思ってよ
……仙台に帰りたかったか?」
ぶんぶんと首を振って、よかった、と呟く
私は大森に嫁いだわけだから、死んだ後だって大森にいたい
成実さんが私を仙台へ帰そうとしなくてよかった
「その辺、実は少し揉めましてな
我々は夕華様が大森に骨を埋めるおつもりだったと承知しておりましたので、当然、夕華様の墓所もそのようになるものと思っておりました
ただやはり仙台伊達家の中には、仙台へ戻して供養して差し上げるべきだと宣う者も一定数おりましてな
最終的には政宗様が一喝なされまして、どうにかこうにか、大森に寺を建てることができました」
「お寺を建てたんですか!?」
「うちの菩提寺も必要だったしな、丁度いいかと思ってよ
親父とお袋の墓もそっちに移したんだ
俺もわざわざ寺なんざ建てなくていいって春に伝えてたし、上手くいけばあっちの世でも現代まで残ってるかもな」
確かめようはないけど、と茶化すように言って、成実さんは小さく微笑んだ
そっか、私が眠るお寺に、成実さんや、ひょっとしたら春も……
ってことは、あちらの世界では私たち家族は一緒にいるってことなのかな
海夜は白石で重長くんと仲良く眠ってるだろうけど
「それなら……きっと、寂しくないですね、私たち」
「そうだな」
頷いたのは成実さんではなくて、兄様だった
本当は兄様も、私を仙台で弔いたかっただろうに
それは私が望んでいないと知っているから、大森で眠らせてくれたんだろう
「ま、普通の寺にしといてよかったって思っとけ
梵の奴なんか、墓参りするのにいちいち山登りさせられる」
「ああ、瑞鳳殿……」
「どの世界線の伊達政宗も派手好きなのは変わんねぇよな
あっちの世では本物がそのまま残ってりゃいいけどさ」
「へ?
この世界の瑞鳳殿は違うんですか?」
「馬鹿な戦争をおっ始めやがったせいだよ」
吐き捨てるように成実さんがそう言ったから、私も察してしまった
そっか……空襲で焼けちゃったんだ、本物の瑞鳳殿は
なんだか勿体ないな
「……そういえば成実さん、私の私物ってどうなりました?
遺品の整理とかできないまま死んだので、あれこれ残ってたと思うんですけど」
「どうしたっけな……
嫁入り道具はそのまま保存してたはずだし、薙刀は俺の槍と合わせて家宝にするって春が言ってたな
お前が使ってた結紐やら櫛やら簪やらは、俺が死んだ時に一緒に焼いたから残ってないとして
ああそういや、お前が梵からもらった手紙は、全部残したはずだぞ
状態も良かったしな、上手くいけばあっちの世で、それなりに貴重な史料になってるだろうぜ」
「夕華お前、燃やせって書いたろ!」
「燃やすわけないじゃないですか!
兄様からいただいた大切なお手紙なのに!」
「残されたほうが恥ずかしいだろうが!」
「まあお前にしちゃあ、中身がまとまってなかったり走り書きになってたりしてたな」
「テメェなに勝手に他人宛ての手紙を読んでやがる!」
「はっ、今更なに言ってんだ!
あっちの世界の博物館で堂々と飾られてろ、溺愛した妹への手紙をな!」
私の前と隣で行われる従兄弟喧嘩を聞き流しながら、私は思った
この世界が、私たちの生きた世界線の続きでなくてよかったな、と
私の書いた手紙も貴重な史料なのだとしたら、本当に居た堪れなかった
癖のない楷書で認められており、現代人にも比較的読みやすい字体となっている、とか何とか解説されてそうだもん
書いた内容なんて本当にどうでもいいものばっかりだし
……ああでも、兄様に宛てた最後の手紙は、残ってたらいいな
私の覚悟を兄様に知っておいてほしかったから、喜多さんに代筆してもらった、あの手紙
伊達の家名を名乗る者として、やはり張るべき見栄はあったから
それの返答としてただ一言、記されたあの手紙も
──如何なる時も伊達者であれ
あの一言が、どんなに死の淵に横たわった私の心を支えてくれたか
きっと兄様に伝えても、伝えきれないだろう
だからあの言葉は、私だけが支えにすればいい
ああでも……後の世の人たちにも、知っておいてほしいな
天下を手にした奥州筆頭も、鎧を脱げば妹を可愛がる兄だったんだって
私の大好きな兄様の素顔が、どこかで伝わっていたら、嬉しいな
お店を出たところで、私はそう言って後ろを振り返った
会計を終えて出てきた小十郎さんが私を見下ろし、小首を傾げる
「ご馳走様でした、小十郎さん!」
「とんでもございませぬ
この程度は当然のことなれば
それよりも夕華様、外は冷えまする
上着をしっかりと羽織られよ」
「食ったばっかで暑いんだってよ
梵だって上着脱いでるし」
「どうせすぐ車乗るだろ
coatなんざ着なくていい」
車に乗り込んでシートベルトを締め、次の目的地はどこかなぁとそわそわしつつ、小十郎さんを見やる
小十郎さんはふとこちらを振り返ると
「政宗様、夕華様
お次はどちらへ?」
不意打ちのようにそう尋ねられ、兄様が腕を組んで唸った
ぶっちゃけて言えば、ほぼ今日の予定はクリアしている
ちなみに今は昼の二時前
どこもかしこも冬の時期は夕方四時で閉まってしまうから、立ち寄れるとしたらあと一箇所かな、という感じだ
「それじゃあ……傑山寺でも行くか」
「傑山寺?」
「片倉家の菩提寺にございます
といってもこの世では三代目当主が改葬したため、代々の墓があるというわけではありませぬが」
「ちゃんと残ってるものなんですねぇ」
……そう相槌を打ったところで、ふと気になった
あの世界での私、どこにお墓を立ててもらったんだろう……?
その辺は何も言い残したりしなかったから、もしかして仙台まで連れて帰られちゃったりして……
「し、成実さん」
「どうした?
えらく深刻そうな顔して」
「私のお墓、どこにしたんですか……?」
「お前の墓なら大森の寺だよ、俺もそこだ
さすがに死んだあとは一緒じゃなきゃ駄目だろって思ってよ
……仙台に帰りたかったか?」
ぶんぶんと首を振って、よかった、と呟く
私は大森に嫁いだわけだから、死んだ後だって大森にいたい
成実さんが私を仙台へ帰そうとしなくてよかった
「その辺、実は少し揉めましてな
我々は夕華様が大森に骨を埋めるおつもりだったと承知しておりましたので、当然、夕華様の墓所もそのようになるものと思っておりました
ただやはり仙台伊達家の中には、仙台へ戻して供養して差し上げるべきだと宣う者も一定数おりましてな
最終的には政宗様が一喝なされまして、どうにかこうにか、大森に寺を建てることができました」
「お寺を建てたんですか!?」
「うちの菩提寺も必要だったしな、丁度いいかと思ってよ
親父とお袋の墓もそっちに移したんだ
俺もわざわざ寺なんざ建てなくていいって春に伝えてたし、上手くいけばあっちの世でも現代まで残ってるかもな」
確かめようはないけど、と茶化すように言って、成実さんは小さく微笑んだ
そっか、私が眠るお寺に、成実さんや、ひょっとしたら春も……
ってことは、あちらの世界では私たち家族は一緒にいるってことなのかな
海夜は白石で重長くんと仲良く眠ってるだろうけど
「それなら……きっと、寂しくないですね、私たち」
「そうだな」
頷いたのは成実さんではなくて、兄様だった
本当は兄様も、私を仙台で弔いたかっただろうに
それは私が望んでいないと知っているから、大森で眠らせてくれたんだろう
「ま、普通の寺にしといてよかったって思っとけ
梵の奴なんか、墓参りするのにいちいち山登りさせられる」
「ああ、瑞鳳殿……」
「どの世界線の伊達政宗も派手好きなのは変わんねぇよな
あっちの世では本物がそのまま残ってりゃいいけどさ」
「へ?
この世界の瑞鳳殿は違うんですか?」
「馬鹿な戦争をおっ始めやがったせいだよ」
吐き捨てるように成実さんがそう言ったから、私も察してしまった
そっか……空襲で焼けちゃったんだ、本物の瑞鳳殿は
なんだか勿体ないな
「……そういえば成実さん、私の私物ってどうなりました?
遺品の整理とかできないまま死んだので、あれこれ残ってたと思うんですけど」
「どうしたっけな……
嫁入り道具はそのまま保存してたはずだし、薙刀は俺の槍と合わせて家宝にするって春が言ってたな
お前が使ってた結紐やら櫛やら簪やらは、俺が死んだ時に一緒に焼いたから残ってないとして
ああそういや、お前が梵からもらった手紙は、全部残したはずだぞ
状態も良かったしな、上手くいけばあっちの世で、それなりに貴重な史料になってるだろうぜ」
「夕華お前、燃やせって書いたろ!」
「燃やすわけないじゃないですか!
兄様からいただいた大切なお手紙なのに!」
「残されたほうが恥ずかしいだろうが!」
「まあお前にしちゃあ、中身がまとまってなかったり走り書きになってたりしてたな」
「テメェなに勝手に他人宛ての手紙を読んでやがる!」
「はっ、今更なに言ってんだ!
あっちの世界の博物館で堂々と飾られてろ、溺愛した妹への手紙をな!」
私の前と隣で行われる従兄弟喧嘩を聞き流しながら、私は思った
この世界が、私たちの生きた世界線の続きでなくてよかったな、と
私の書いた手紙も貴重な史料なのだとしたら、本当に居た堪れなかった
癖のない楷書で認められており、現代人にも比較的読みやすい字体となっている、とか何とか解説されてそうだもん
書いた内容なんて本当にどうでもいいものばっかりだし
……ああでも、兄様に宛てた最後の手紙は、残ってたらいいな
私の覚悟を兄様に知っておいてほしかったから、喜多さんに代筆してもらった、あの手紙
伊達の家名を名乗る者として、やはり張るべき見栄はあったから
それの返答としてただ一言、記されたあの手紙も
──如何なる時も伊達者であれ
あの一言が、どんなに死の淵に横たわった私の心を支えてくれたか
きっと兄様に伝えても、伝えきれないだろう
だからあの言葉は、私だけが支えにすればいい
ああでも……後の世の人たちにも、知っておいてほしいな
天下を手にした奥州筆頭も、鎧を脱げば妹を可愛がる兄だったんだって
私の大好きな兄様の素顔が、どこかで伝わっていたら、嬉しいな
