第九話 繋がった願い
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結局、あれから眠れないまま、気付いたら朝日が昇り始めた
ここまでくると寝ようとすることも諦めてしまって、私は早すぎる朝食づくりに取り掛かることにした
「……あふ」
早朝の駅構内
朝練のために六時台の電車に乗るため、さすがにこの時間は人もそこまで多くはない
とは言っても、電車の中は座れないので、諦めて立ったまま、数駅先の高校の最寄り駅に行くしかないわけで
──駅に着いて、電車を降りて改札口へ
右端の入り口専用の改札機に、定期をかざして入ってきた小柄な男性
足早にすれ違ったので、はっきりと顔は分からなかったけれど
「……綱元さんに、似てたな……」
綱元さんも、転生してるんだろうか
もしそうだとしたら、元気にしてると良いな……
* * *
「──死んだときの記憶?」
朝練が終わって、教室に到着して、すぐに海夜にそう聞いてみた
ものすっごく怪訝な顔をされたけど、この際それは無視することにした
「あなたね……
週の始めに顔を合わせて、いきなりそれ?」
「それはそうなんだけど……」
口ごもった私に、海夜は何かを感じ取ったのか、ため息をついて
「……仕方ないわね……
覚えてるわよ、鮮明に
自分から殺してくれって言ったのも、お兄様のバサラで逝ったのも、全部」
「……そうなんだ……」
じゃあ、なんで私は覚えてないんだろう
……ううん、正確に言えば
第二子をお腹に宿して……
「陰日向の氷竜」の意味を聞いた、そのあたり……
そこから先の記憶が、すっぽりと抜け落ちている
「……まさか、記憶がないなんて言うつもりじゃないでしょうね」
「そのまさか、って言ったら?」
「……どうもしないけど……
あなたは知りたいの?
自分がどうして死んだのか」
「知りたい……
すごく知りたいよ」
「じゃあ──」
海夜が口を開きかけた、その時
「失礼いたす!
ここに伊達殿はおり申さぬか!」
クラスのドアが開いて、よく通る声が私を呼び出した
この声は……
「ゆ、幸村くん?」
「おおっ、伊達殿!
おはようございまする!」
「え、うん、おはよう
それより、どうしたの?」
「伊達殿!
失礼ですが、猿飛佐助という人物をご存じではありませぬか?」
「え、佐助さん?
知ってるけど……」
あ、そういえば、佐助さんから幸村くんによろしく伝えてくれって言われてたんだった
すっかり忘れてたなぁ、ごめんなさい、佐助さん
「なんと……!
やはり伊達殿でござったか!」
「えーと、何が?」
「実は、佐助より、某が懇意にしておる女子に、これを渡してほしいと言われ……
真っ先に貴殿の顔が浮かんだのでござる!」
なるほど、そういうことだったのか
確かにそうだろうね、去年同じクラスだったし
何だかんだと色々あって、結構仲が良いし
幸村くんには記憶が無いけど、今はいい友達だ
そんな幸村くんに手渡されたのは、メモの切れ端
「これって何?」
「とある方の、あいでぃい、とやらが書かれているそうでござる」
「とある方って……誰?」
「某も詳しくは……
ただ、貴殿が一番会いたい人物だと言っておりました」
私が一番会いたい人……
そんな人、一人しかいない
「……成実さんの、LEINのID……」
メモ帳を開くと、IDの他に、メールのアドレスと電話番号まで書いてあった
「一体どこから……」
「聞くところによると、確か……
鬼……何とか……とか申す人に会ったのだそうで……」
「鬼……?」
鬼……
鬼……庭……
脳裏に、穏やかな笑みの、黒髪の男性が浮かぶ
「その人、鬼庭綱元って名前じゃない!?」
「ああ!
そのような名でござる!」
ということはもしかして、綱元さんにも記憶があるんじゃ……
そして、佐助さんと綱元さんが再会できた……
「幸村くん!
佐助さんにお礼言っといて!」
「心得申した!
それでは失礼いたしまする!」
爽やかな全開スマイルで、幸村くんが教室を出ていく
「……随分と、急展開だわね?」
「本当に……」
私は……突然訪れたチャンスに、ただ茫然としていた……
この手の中に、成実さんの連絡先がある
──けれど、いいのだろうか
赤の他人である私が、これを持ってしまっていいのだろうか
もし、成実さんに、大切な人がすでにいるんだとしたら?
考えたくはないけれど、可能性は大きい
何も覚えていない成実さんが、私以外の誰かと幸せになる未来──
「……夕華?」
「海夜……私、どうしたらいいの……?」
「どうって……」
私が選ばれない未来が、もうそこにあるのなら
私の存在なんて、ただの邪魔でしかないんじゃないだろうか
そう考えてしまって……手の中にあるメモの紙を、知らないうちに握りつぶしていた
ここまでくると寝ようとすることも諦めてしまって、私は早すぎる朝食づくりに取り掛かることにした
「……あふ」
早朝の駅構内
朝練のために六時台の電車に乗るため、さすがにこの時間は人もそこまで多くはない
とは言っても、電車の中は座れないので、諦めて立ったまま、数駅先の高校の最寄り駅に行くしかないわけで
──駅に着いて、電車を降りて改札口へ
右端の入り口専用の改札機に、定期をかざして入ってきた小柄な男性
足早にすれ違ったので、はっきりと顔は分からなかったけれど
「……綱元さんに、似てたな……」
綱元さんも、転生してるんだろうか
もしそうだとしたら、元気にしてると良いな……
* * *
「──死んだときの記憶?」
朝練が終わって、教室に到着して、すぐに海夜にそう聞いてみた
ものすっごく怪訝な顔をされたけど、この際それは無視することにした
「あなたね……
週の始めに顔を合わせて、いきなりそれ?」
「それはそうなんだけど……」
口ごもった私に、海夜は何かを感じ取ったのか、ため息をついて
「……仕方ないわね……
覚えてるわよ、鮮明に
自分から殺してくれって言ったのも、お兄様のバサラで逝ったのも、全部」
「……そうなんだ……」
じゃあ、なんで私は覚えてないんだろう
……ううん、正確に言えば
第二子をお腹に宿して……
「陰日向の氷竜」の意味を聞いた、そのあたり……
そこから先の記憶が、すっぽりと抜け落ちている
「……まさか、記憶がないなんて言うつもりじゃないでしょうね」
「そのまさか、って言ったら?」
「……どうもしないけど……
あなたは知りたいの?
自分がどうして死んだのか」
「知りたい……
すごく知りたいよ」
「じゃあ──」
海夜が口を開きかけた、その時
「失礼いたす!
ここに伊達殿はおり申さぬか!」
クラスのドアが開いて、よく通る声が私を呼び出した
この声は……
「ゆ、幸村くん?」
「おおっ、伊達殿!
おはようございまする!」
「え、うん、おはよう
それより、どうしたの?」
「伊達殿!
失礼ですが、猿飛佐助という人物をご存じではありませぬか?」
「え、佐助さん?
知ってるけど……」
あ、そういえば、佐助さんから幸村くんによろしく伝えてくれって言われてたんだった
すっかり忘れてたなぁ、ごめんなさい、佐助さん
「なんと……!
やはり伊達殿でござったか!」
「えーと、何が?」
「実は、佐助より、某が懇意にしておる女子に、これを渡してほしいと言われ……
真っ先に貴殿の顔が浮かんだのでござる!」
なるほど、そういうことだったのか
確かにそうだろうね、去年同じクラスだったし
何だかんだと色々あって、結構仲が良いし
幸村くんには記憶が無いけど、今はいい友達だ
そんな幸村くんに手渡されたのは、メモの切れ端
「これって何?」
「とある方の、あいでぃい、とやらが書かれているそうでござる」
「とある方って……誰?」
「某も詳しくは……
ただ、貴殿が一番会いたい人物だと言っておりました」
私が一番会いたい人……
そんな人、一人しかいない
「……成実さんの、LEINのID……」
メモ帳を開くと、IDの他に、メールのアドレスと電話番号まで書いてあった
「一体どこから……」
「聞くところによると、確か……
鬼……何とか……とか申す人に会ったのだそうで……」
「鬼……?」
鬼……
鬼……庭……
脳裏に、穏やかな笑みの、黒髪の男性が浮かぶ
「その人、鬼庭綱元って名前じゃない!?」
「ああ!
そのような名でござる!」
ということはもしかして、綱元さんにも記憶があるんじゃ……
そして、佐助さんと綱元さんが再会できた……
「幸村くん!
佐助さんにお礼言っといて!」
「心得申した!
それでは失礼いたしまする!」
爽やかな全開スマイルで、幸村くんが教室を出ていく
「……随分と、急展開だわね?」
「本当に……」
私は……突然訪れたチャンスに、ただ茫然としていた……
この手の中に、成実さんの連絡先がある
──けれど、いいのだろうか
赤の他人である私が、これを持ってしまっていいのだろうか
もし、成実さんに、大切な人がすでにいるんだとしたら?
考えたくはないけれど、可能性は大きい
何も覚えていない成実さんが、私以外の誰かと幸せになる未来──
「……夕華?」
「海夜……私、どうしたらいいの……?」
「どうって……」
私が選ばれない未来が、もうそこにあるのなら
私の存在なんて、ただの邪魔でしかないんじゃないだろうか
そう考えてしまって……手の中にあるメモの紙を、知らないうちに握りつぶしていた
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