第六話 西海の鬼現る
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「──えぇぇぇぇええ!!?」
すっきりとした青空が広がる、初夏の連休初日
前田家に響いたのは、一人の驚嘆の声だった
「ちょっ……ちょちょちょ!!
元親、今、何つった!?」
身を乗り出す慶次を手で押し戻す
カミングアウトした張本人は、「やかましい!」と一喝した
「だーから、記憶持ちだっつったんだよ」
「あまりにサラッというもんだから、大事な発言だったのに危うくスルーするとこだった!!
え、ちょっ、いつから!?」
「あー、物心ついたときには、もうあった気がするな」
「全っ然分かんなかった……
だってそういう話しないんだもんなぁ、元親」
「するわけねぇじゃねぇか
ただでさえ、前世の記憶があるってこと自体が異常なんだからよ」
「まぁ、そりゃそうだけどさ」
慶次が押し黙る
その顔には、「なんでもっと早く言ってくれなかったんだ」と書いてあるようだった
「しかしビックリしたぜ!
まさかお前さんも記憶があるたぁな
『風来坊・前田慶次』よぅ?」
「こんなとこでまで再会できて、俺は嬉しいけどね!
『西海の鬼・長曾我部元親』!」
戦国の世にあって、伊達の姫──夕華の言葉を借りるなら、風雲児連合と呼ばれた二人
諸国を漫遊しながら、戦のない世を目指した風来坊と、四国一帯を治め、中国の毛利と瀬戸内の覇権を争った西海の鬼──
世が変われば、片方は大学生、もう片方は、自動車整備工場の工場長である
時代が変わっても、やってることはあんまり変わらないよなぁ、と言いたいのをぐっとこらえたのは、慶次の記憶にも新しかった
でさ、といって慶次が声を落とす
その声音に、元親も片眉を上げてみせた
「他には記憶がある人はいるのかい?」
「おうよ!
まずは俺にお前、それから越後の忍び
猿飛の野郎にもある感じがするな」
「えええ……
全然気付かなかった……」
「まァ、あの時代の話なんざ、そこいらでするようなモンでもねぇしな」
確かにその通りだ
記憶があるほうが異常なのだから
実際、慶次も、元親に言われなければ分からなかっただろう
「そっちはどうだ?
他のやつらには会ったのか?」
「聞いて驚きなよ?
……夕華に会った」
瞬間、元親が酒を吹き出した
「ちょっと!
きったないなぁ!」
「てめっ、夕華だとォ!?」
「そ!
あの竜姫サマだよ、独眼竜の大事な大事な妹さん」
「驚くも何も……
ある意味で、記憶ある奴らが一番会いたがってるやつじゃねぇかよ」
「でっしょー?
いやぁもう、可愛さは昔のまんまだね!」
「へーへー……で?
伊達の姫さんに記憶はあるのか?」
「もちろん!
あとねー、水城海夜と親友なんだって」
「ほー……
……水城海夜?」
「うん」
「あの死神姫だとかなんだとか言われてたっつぅ、例の?」
「そう」
「氷の兄さんの宿敵の?」
「その水城」
「……マジかよ……」
慶次も酒を呷った
同じ気持ちは、夕華本人から聞いた時に経験済みだ
「いやぁ、俺も最初はビックリしたよ
世の中変われば変わるもんだねぇ」
「お前が言うかァ?」
「え?」
「いんや、何でもねえよ」
つまみをつつきながら、元親が慶次を見つめる
その瞳は、先程までの面白がる光を収めていて、慶次も思わず見つめ返してしまった
「何?」
「伊達の奴らに会ったか?」
「……やっぱり、元親も会ってない?」
「その様子だとお前も、か」
「夕華は伊達姓だよ」
元親が反応を示した
「何?」
「政宗と親戚
ただ、関係が疎遠なうえに、向こうは記憶がないらしい
確か成実とも一回会ったって言ってたけど、多分成実もないみたい」
「……難儀するねェ、ったく」
「ホントだよ」
「誰かが俺たちを邪魔しやがるみてぇに、竜の兄さんたちに会えねぇ……」
「……なんでだろうね」
「それが分かっちまやぁ、俺達も苦労しねぇよ
ま、気長に会える時を待っていようや
ひょっこりそのうち、道端なんかで会うかもしれねぇぜ?」
カラッと笑う元親に、慶次も曖昧な笑みを返す
この日のためにと用意していた缶ビールは、そろそろ底を尽きそうだった
すっきりとした青空が広がる、初夏の連休初日
前田家に響いたのは、一人の驚嘆の声だった
「ちょっ……ちょちょちょ!!
元親、今、何つった!?」
身を乗り出す慶次を手で押し戻す
カミングアウトした張本人は、「やかましい!」と一喝した
「だーから、記憶持ちだっつったんだよ」
「あまりにサラッというもんだから、大事な発言だったのに危うくスルーするとこだった!!
え、ちょっ、いつから!?」
「あー、物心ついたときには、もうあった気がするな」
「全っ然分かんなかった……
だってそういう話しないんだもんなぁ、元親」
「するわけねぇじゃねぇか
ただでさえ、前世の記憶があるってこと自体が異常なんだからよ」
「まぁ、そりゃそうだけどさ」
慶次が押し黙る
その顔には、「なんでもっと早く言ってくれなかったんだ」と書いてあるようだった
「しかしビックリしたぜ!
まさかお前さんも記憶があるたぁな
『風来坊・前田慶次』よぅ?」
「こんなとこでまで再会できて、俺は嬉しいけどね!
『西海の鬼・長曾我部元親』!」
戦国の世にあって、伊達の姫──夕華の言葉を借りるなら、風雲児連合と呼ばれた二人
諸国を漫遊しながら、戦のない世を目指した風来坊と、四国一帯を治め、中国の毛利と瀬戸内の覇権を争った西海の鬼──
世が変われば、片方は大学生、もう片方は、自動車整備工場の工場長である
時代が変わっても、やってることはあんまり変わらないよなぁ、と言いたいのをぐっとこらえたのは、慶次の記憶にも新しかった
でさ、といって慶次が声を落とす
その声音に、元親も片眉を上げてみせた
「他には記憶がある人はいるのかい?」
「おうよ!
まずは俺にお前、それから越後の忍び
猿飛の野郎にもある感じがするな」
「えええ……
全然気付かなかった……」
「まァ、あの時代の話なんざ、そこいらでするようなモンでもねぇしな」
確かにその通りだ
記憶があるほうが異常なのだから
実際、慶次も、元親に言われなければ分からなかっただろう
「そっちはどうだ?
他のやつらには会ったのか?」
「聞いて驚きなよ?
……夕華に会った」
瞬間、元親が酒を吹き出した
「ちょっと!
きったないなぁ!」
「てめっ、夕華だとォ!?」
「そ!
あの竜姫サマだよ、独眼竜の大事な大事な妹さん」
「驚くも何も……
ある意味で、記憶ある奴らが一番会いたがってるやつじゃねぇかよ」
「でっしょー?
いやぁもう、可愛さは昔のまんまだね!」
「へーへー……で?
伊達の姫さんに記憶はあるのか?」
「もちろん!
あとねー、水城海夜と親友なんだって」
「ほー……
……水城海夜?」
「うん」
「あの死神姫だとかなんだとか言われてたっつぅ、例の?」
「そう」
「氷の兄さんの宿敵の?」
「その水城」
「……マジかよ……」
慶次も酒を呷った
同じ気持ちは、夕華本人から聞いた時に経験済みだ
「いやぁ、俺も最初はビックリしたよ
世の中変われば変わるもんだねぇ」
「お前が言うかァ?」
「え?」
「いんや、何でもねえよ」
つまみをつつきながら、元親が慶次を見つめる
その瞳は、先程までの面白がる光を収めていて、慶次も思わず見つめ返してしまった
「何?」
「伊達の奴らに会ったか?」
「……やっぱり、元親も会ってない?」
「その様子だとお前も、か」
「夕華は伊達姓だよ」
元親が反応を示した
「何?」
「政宗と親戚
ただ、関係が疎遠なうえに、向こうは記憶がないらしい
確か成実とも一回会ったって言ってたけど、多分成実もないみたい」
「……難儀するねェ、ったく」
「ホントだよ」
「誰かが俺たちを邪魔しやがるみてぇに、竜の兄さんたちに会えねぇ……」
「……なんでだろうね」
「それが分かっちまやぁ、俺達も苦労しねぇよ
ま、気長に会える時を待っていようや
ひょっこりそのうち、道端なんかで会うかもしれねぇぜ?」
カラッと笑う元親に、慶次も曖昧な笑みを返す
この日のためにと用意していた缶ビールは、そろそろ底を尽きそうだった
1/3ページ