番外編4 宮城旅行仙台編・2日目
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ピピピピ──と耳元でアラームがなって、パッと目が覚めた
真っ暗な室内の天井を見上げ、ぼんやりと呟く
「夢だったな……」
妙にリアルだったけど、紛うことなき夢だったな
もしかしたらあの世界もちゃんと続いていて、あんなふうに私の物が残っているのかもしれない
成実さんが春千代のことを春って呼ぶから、春千代が元服した時の名前だって初めて知った
……あれって正しい夢なのかな
「うう……起きなきゃ……」
考えても仕方ないことだとはわかっているけど……とぼんやりしながら、ベッドを出て洗面所へ
顔を洗って化粧水をパッティングしたあと、ダメ元で喜多さんにモーニングコールをしたら、喜多さんは既に起きていた
さすが元侍女、早起きなんてお手の物なんだろう
「おはようございます、夕華様」
「おはようございます……」
内線コールからきっちり三分後、メイクポーチを抱えた喜多さんがお部屋に入ってきた
私をドレッサーに座らせて、喜多さんがあれやこれやと顔に塗っていく
たぶん下地とか何とかだと思うけど、私が自分でやる時より工程が多いから分からない
ブラシでファンデーションを乗せて、手際よく眉、アイシャドウその他もろもろが乗せられ、睫毛もビューラーで綺麗にカールした
マスカラで伸びた睫毛、柔らかく彩られた目の縁、そして色んなところに入るハイライト
チークでほんのりと色づいた頬と、ぷるんと瑞々しいリップ
うーん、いつ見てもすごい化け方
前髪を止めていたクリップが外れて、喜多さんはアイロンとコテの二刀流で私の髪を綺麗にまとめた
「やっぱり喜多さんはお上手ですね……」
「夕華様の美しさを最大限に引き出す努力は惜しみません」
「そうですか……」
メイクポーチを抱えて、喜多さんがお部屋を去っていく
七時から朝食だから、私も一緒にお部屋を出ることにした
昨日の夕飯と同じ会場に着くと、兄様はまだ到着していないらしい
「おはようございます、成実さん」
「おう、おはようさん」
「今日は成実さんのお隣ですか?」
「梵の横でもいいけど、成実さんは拗ねるぞ」
「拗ねるんですか」
「俺はお前のことになると心が狭くなる自覚があってな」
それじゃあ遠慮なく成実さんの隣に座ろう
程なくして兄様も現れて、喜多さんと小十郎さんがテキパキと朝食を並べていった
「洋食だ!」
「和食も食べ飽きた頃かと思いまして」
「別荘でお作りしましたジャムを添えてございますので、どうぞご賞味ください」
焼きたてのロールパンはまだホカホカだ
手を合わせてから、ロールパンをちぎると、それはもうふわふわだった
「ジャムがなくても美味しいですよ、これ」
「ほんとだ、バターのほんのりとした甘みがあって美味いな」
「作り方はtop secretだ」
「兄様が作ったんですか!?」
「なわけあるか」
そりゃそうだよね、びっくりした
どれだけ早起きしたんだろうとか考えちゃった
「八時半には出るって言ってたっけ」
「瑞巌寺に九時着だとよ」
「おお……」
気合い入ってるな……
オムレツを箸で割って、ケチャップをつけて食べる
うん、甘くて美味しい
……そういえば思ったけど、ここに来てまだ牛タンを食べてないな?
さすがに食べずに帰るのは泣くぞ?
「お昼って……」
「牛タンだろ、流石に」
「やった!」
「とっておきの店に連れてってやる
期待してくれていいぜ?」
「やった!!」
兄様のとっておきなら絶対に美味しいやつだ!!
期待して待っておこう
「……」
「ん?
私の顔になにかついてます?」
じっと見つめてくる成実さんに首を傾げると、成実さんはすぐに首を振った
なんだったんだろう、穴があくほどではなかったけど、けっこう見つめられていた
「なんか嬉しそうにしてるなって思っただけだよ
伊達政宗関連の史跡を巡るのがそんなに楽しみだったか?」
「え……」
「あんまり目に見えて嬉しそうにすると、梵が拗ねちまうぞ?」
揶揄うように成実さんがそう言ったら、いつもなら噛み付く兄様が無言だった
拗ねるんだぁ……
「えっと、楽しみなのはその通りなんですけど……
昨日見た夢のせいかもしれないです」
「ふぅん?
そんなにいい夢見たのか」
「いい夢……かは、分からないですけど
兄様と成実さんと私で、博物館を見学してる夢でした」
「なんで梵まで出てくるんだよ」
「兄貴だからだろ」
「夢にまで出しゃばってくんな、シスコン」
「喧嘩売ろうってのか
買うぜ、ヘタレ野郎」
従兄弟同士で無駄に喧嘩をしないでほしい
この二人、本当に売り言葉に買い言葉だな……
「あーやめだやめ、梵とやり合ったって良いこと何もねぇしよ
で、どんな展示だったんだよ?」
「大森にある博物館の常設展示でした
大森伊達家の実質的な家祖である成実さんの正室だった、伊達家一の姫の」
「──お前」
二人の手が止まった
それはそうだ、私が見た夢は──あの時代の、未来だった
「即火中の手紙をしっかり残していたせいで、兄様に文句を言われました
私もまさか四百年以上先の未来まで残ってるなんて思わなかったのに」
「……他には」
「私の薙刀も綺麗に残ってましたよ
伊達家のみんなが成島に祈願をしに行ってくれた時の、連名の書状も
兄様が私に宛てた最後の手紙も」
「……」
「私の戦装束、一式まとめて重要文化財になってました
嫁入り道具なんて国宝になってるらしいですよ
夢で見たときはレプリカが展示されていて、本物は仙台にある国立博物館に貸出中だったみたいです
ちょうど伊達政宗展をやってるそうで」
泣きそうな顔が、無理やり笑っている
せめて笑ってほしい、泣くような話じゃないんだから
「そっか……そんな未来も、あったらいいな
他には何があったんだ?」
「……私の直筆のメモが、貴重な史料の扱いを受けてました」
「メモ?」
「スケジュールを書き留めただけの、走り書きの紙です……
数点現存する手紙とは違って走り書きが目立つ、みたいな解説付きでした……」
「俺が夕華だったら恥ずかしくて死んでる」
「私、真横で兄様に同じものを見られていたんですが」
「あー……ドンマイ」
その他にも私が使っていた扇子や手鏡、鏡台といったものがあったし、白無垢と合わせて仕立てた蒼の打掛も綺麗に残っていた
「そ……か
何はともあれ、平和な世が続いてるならよかったよ」
黙り込んでしまった兄様の代わりに、成実さんがそう言って微笑む
その瞳はもう、哀しさを映してはいなかった
真っ暗な室内の天井を見上げ、ぼんやりと呟く
「夢だったな……」
妙にリアルだったけど、紛うことなき夢だったな
もしかしたらあの世界もちゃんと続いていて、あんなふうに私の物が残っているのかもしれない
成実さんが春千代のことを春って呼ぶから、春千代が元服した時の名前だって初めて知った
……あれって正しい夢なのかな
「うう……起きなきゃ……」
考えても仕方ないことだとはわかっているけど……とぼんやりしながら、ベッドを出て洗面所へ
顔を洗って化粧水をパッティングしたあと、ダメ元で喜多さんにモーニングコールをしたら、喜多さんは既に起きていた
さすが元侍女、早起きなんてお手の物なんだろう
「おはようございます、夕華様」
「おはようございます……」
内線コールからきっちり三分後、メイクポーチを抱えた喜多さんがお部屋に入ってきた
私をドレッサーに座らせて、喜多さんがあれやこれやと顔に塗っていく
たぶん下地とか何とかだと思うけど、私が自分でやる時より工程が多いから分からない
ブラシでファンデーションを乗せて、手際よく眉、アイシャドウその他もろもろが乗せられ、睫毛もビューラーで綺麗にカールした
マスカラで伸びた睫毛、柔らかく彩られた目の縁、そして色んなところに入るハイライト
チークでほんのりと色づいた頬と、ぷるんと瑞々しいリップ
うーん、いつ見てもすごい化け方
前髪を止めていたクリップが外れて、喜多さんはアイロンとコテの二刀流で私の髪を綺麗にまとめた
「やっぱり喜多さんはお上手ですね……」
「夕華様の美しさを最大限に引き出す努力は惜しみません」
「そうですか……」
メイクポーチを抱えて、喜多さんがお部屋を去っていく
七時から朝食だから、私も一緒にお部屋を出ることにした
昨日の夕飯と同じ会場に着くと、兄様はまだ到着していないらしい
「おはようございます、成実さん」
「おう、おはようさん」
「今日は成実さんのお隣ですか?」
「梵の横でもいいけど、成実さんは拗ねるぞ」
「拗ねるんですか」
「俺はお前のことになると心が狭くなる自覚があってな」
それじゃあ遠慮なく成実さんの隣に座ろう
程なくして兄様も現れて、喜多さんと小十郎さんがテキパキと朝食を並べていった
「洋食だ!」
「和食も食べ飽きた頃かと思いまして」
「別荘でお作りしましたジャムを添えてございますので、どうぞご賞味ください」
焼きたてのロールパンはまだホカホカだ
手を合わせてから、ロールパンをちぎると、それはもうふわふわだった
「ジャムがなくても美味しいですよ、これ」
「ほんとだ、バターのほんのりとした甘みがあって美味いな」
「作り方はtop secretだ」
「兄様が作ったんですか!?」
「なわけあるか」
そりゃそうだよね、びっくりした
どれだけ早起きしたんだろうとか考えちゃった
「八時半には出るって言ってたっけ」
「瑞巌寺に九時着だとよ」
「おお……」
気合い入ってるな……
オムレツを箸で割って、ケチャップをつけて食べる
うん、甘くて美味しい
……そういえば思ったけど、ここに来てまだ牛タンを食べてないな?
さすがに食べずに帰るのは泣くぞ?
「お昼って……」
「牛タンだろ、流石に」
「やった!」
「とっておきの店に連れてってやる
期待してくれていいぜ?」
「やった!!」
兄様のとっておきなら絶対に美味しいやつだ!!
期待して待っておこう
「……」
「ん?
私の顔になにかついてます?」
じっと見つめてくる成実さんに首を傾げると、成実さんはすぐに首を振った
なんだったんだろう、穴があくほどではなかったけど、けっこう見つめられていた
「なんか嬉しそうにしてるなって思っただけだよ
伊達政宗関連の史跡を巡るのがそんなに楽しみだったか?」
「え……」
「あんまり目に見えて嬉しそうにすると、梵が拗ねちまうぞ?」
揶揄うように成実さんがそう言ったら、いつもなら噛み付く兄様が無言だった
拗ねるんだぁ……
「えっと、楽しみなのはその通りなんですけど……
昨日見た夢のせいかもしれないです」
「ふぅん?
そんなにいい夢見たのか」
「いい夢……かは、分からないですけど
兄様と成実さんと私で、博物館を見学してる夢でした」
「なんで梵まで出てくるんだよ」
「兄貴だからだろ」
「夢にまで出しゃばってくんな、シスコン」
「喧嘩売ろうってのか
買うぜ、ヘタレ野郎」
従兄弟同士で無駄に喧嘩をしないでほしい
この二人、本当に売り言葉に買い言葉だな……
「あーやめだやめ、梵とやり合ったって良いこと何もねぇしよ
で、どんな展示だったんだよ?」
「大森にある博物館の常設展示でした
大森伊達家の実質的な家祖である成実さんの正室だった、伊達家一の姫の」
「──お前」
二人の手が止まった
それはそうだ、私が見た夢は──あの時代の、未来だった
「即火中の手紙をしっかり残していたせいで、兄様に文句を言われました
私もまさか四百年以上先の未来まで残ってるなんて思わなかったのに」
「……他には」
「私の薙刀も綺麗に残ってましたよ
伊達家のみんなが成島に祈願をしに行ってくれた時の、連名の書状も
兄様が私に宛てた最後の手紙も」
「……」
「私の戦装束、一式まとめて重要文化財になってました
嫁入り道具なんて国宝になってるらしいですよ
夢で見たときはレプリカが展示されていて、本物は仙台にある国立博物館に貸出中だったみたいです
ちょうど伊達政宗展をやってるそうで」
泣きそうな顔が、無理やり笑っている
せめて笑ってほしい、泣くような話じゃないんだから
「そっか……そんな未来も、あったらいいな
他には何があったんだ?」
「……私の直筆のメモが、貴重な史料の扱いを受けてました」
「メモ?」
「スケジュールを書き留めただけの、走り書きの紙です……
数点現存する手紙とは違って走り書きが目立つ、みたいな解説付きでした……」
「俺が夕華だったら恥ずかしくて死んでる」
「私、真横で兄様に同じものを見られていたんですが」
「あー……ドンマイ」
その他にも私が使っていた扇子や手鏡、鏡台といったものがあったし、白無垢と合わせて仕立てた蒼の打掛も綺麗に残っていた
「そ……か
何はともあれ、平和な世が続いてるならよかったよ」
黙り込んでしまった兄様の代わりに、成実さんがそう言って微笑む
その瞳はもう、哀しさを映してはいなかった
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