第六十三話 充実する毎日
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初夏の陽気に包まれる四月下旬――
「――商学部商学科、伊達夕華です!
先輩方に追いつけるように全力で頑張りますので、よろしくお願いします!」
「「いやいやいやいや」」
ようやく私も、薙刀部の仲間入りだ!
……と思って意気込み含めて自己紹介をしたところ、全員からツッコミが入ってしまった
「はっ……!
すみません、生意気でしたか!?」
「「いやいやいやいや」」
「こっちなんて最初から越されてるからね!?」
「高校三年生の引退試合、初出場の全国大会の団体戦決勝で先鋒から副将までが相手方の先鋒に敗れ、大将として出場
そのまま相手の大将まで脅威の五人抜きで見事全国優勝……
……これどんなドラマ?」
「漫画でもやらんわ、こんな展開……」
「え、ええ……?」
そんなことを言われてもだな
そこが私の絶好調だったとは思うけど、あれから薙刀はあんまり触ってないし
そりゃあ受験が終わってからは高校の部活に顔を出してはいたけれど、臨時コーチの喜多さん曰く「腕が鈍った」という感じらしいし
「しかも剣道部の伊達ブラザーズと親戚なんでしょ?」
「ブラザーズというか、に……政宗先輩と成実さんは従兄弟同士で、兄弟ではないんですが……」
「ていうか政宗くんの方と婚約してるんでしょ!?」
「逆です!!
成実さんとです!!」
「でも婚約してるんだ!?」
ああ、いらん事を言わなきゃよかった……
こういう時に限って、コーチの喜多さんはまだ来ていないし……
喜多さん、助けて――!!
「遅れて申し訳ございません!
もう新入部員の方々はお越しでいらっしゃいますか?」
聞き慣れた声が道場に響く
全員がサッと顔色を変えて一列に並んだ
私も慌てて最後尾に並ぶ
すごいな、本当にみんな喜多さんに逆らえないんだな……
「皆様揃っておいでですね、結構でございます
それではミーティングから始めましょう
まず新入生のご紹介をしてくださいますか?」
「新入生、前に来て!」
部長さんに呼ばれて、私と残り三名が喜多さんの前へ向かう
何を隠そう、薙刀部の新入部員は四人しか居ないのだ
「経済学部経済学科の――」
「人文学部社会福祉学科の――」
「法学部法学科――」
よろしくお願い致します、とにこやかに挨拶を交わす喜多さんが、私を見てなおにっこりと微笑んだ
「商学部商学科の伊達夕華です」
「ふふ、存じておりますわ、夕華様
この喜多、首を長くしてお待ちしておりました」
「あはは……ありがとうございます
厳しくご指導のほど、よろしくお願いします!」
背後で先輩達がざわついた
喜多さんに向かって「厳しくしてください」と言うなんて、自殺行為だ
本当に厳しいからね!
「無論でございますとも
伊達の誇りし竜の懐刀、今一度綺麗に研いでみせましょう」
「は、はは……」
喜多さんの目が本気だ……
私、死なないかな……
* * *
夕方の七時半
ようやく今日の稽古も終わって、汗だくの道着から私服に着替えて更衣室を出ると
「ああ、成実様!
ようございました、ちょうどお探ししておりまして」
「喜多姐ちゃん?
珍しいな、剣道場まで来るなんて」
「少々事情がございまして
申し訳ございませんが、薙刀の道場までお越しいただけませんでしようか」
「夕華に何かあったのか」
声を落として尋ねると、喜多姐ちゃんは神妙な顔で頷いた
嫌な予感は特にしないけど、夕華絡みなら見過ごせねぇ
喜多姐ちゃんと薙刀道場へ急ぐと、道場内にはちょっとした人の輪が出来ていた
「失礼します
夕華?」
人だかりへ声をかけると、なぜか「きゃあ」なんて黄色い声が飛んできた
いや、なんでだよ
「……成実さん?」
「よう、お疲れさん
喜多姐ちゃんに呼ばれたんだけど……」
「あはは……それは御足労を……」
「特に何もなさそうだな?
とりあえず帰ろうぜ」
「そうしたいのは山々なんですけど……
あの、お恥ずかしい話、速攻でやってきた筋肉痛で立てなくて……」
「……は?」
床に座ったままの夕華は、着替えは終わっているみたいだった
いや、ていうか筋肉痛って
「そういや、ここ一ヶ月くらいは薙刀を触るどころか、運動もあんまりしてなかったもんな、お前」
「う、実は……」
「しっかし筋肉痛っつったって、そんなすぐに来るかねぇ?」
む、と夕華が唇をへの字にして、ぷいとそっぽを向く
子供っぽい仕草が可愛くて、吹き出してしまったけれど
「しゃーねぇなぁ」
床に座り込んだ夕華の膝の裏に手を入れて、背中を支えて抱き上げる
先程の比ではない歓声が上がった理由については考えるのをやめた
「し、成実さん!?」
「仕方ねぇよなー、どっかのお姫様が疲れたー、動けなーいとか言うんだもんなー」
「そこまでは言ってないです!」
「そんでもって俺も大概甘いから、仰せのままにってやっちゃうもんなー」
「既視感あるやり取りをありがとうございます!!」
おや、今川戦のことをよく覚えていやがる
ちょっとしたやり取りでも覚えてくれているのは嬉しいもんだ
がしかし、筋肉痛で歩けない彼女に「歩け」なんて言うのは、恋人として許せない
「これに懲りたら日頃から体を動かしておけよ」
「はぁい……」
「あ、別に懲りてくれなくてもいいけどな
ただ俺が役得なだけだし」
「これでもかってくらい懲りました!!」
「そいつは残念だ」
お疲れ様、という声に夕華が「お疲れ様でした」と挨拶をする
靴は喜多姐ちゃんに履かせてもらって、夕華の荷物を同級生らしき女子部員から受け取ると、俺達は道場を後にした
「あ、あの成実さん、どこまでお姫様抱っこで……?」
「え?
そりゃもちろん駐車場まで」
「さすがに恥ずかしいですよ!?」
「だって筋肉痛なんだろ?」
「が、頑張れば歩けます」
「無理すんなよ、ちったぁ彼氏を頼りやがれ」
「人の目を気にしてください!!」
まったく、ああ言えばこう言う奴だな
でも確かに人前でお姫様抱っこは恥ずかしいだろうし、下ろしてやるか……
そっと地面に下ろして、手を繋いで歩いて駐車場へ
面白いくらい歩幅が小さい夕華が可愛くて、役得だなぁなんて思っていると、夕華の反対側の手を誰かが握った
誰か、なんて言わなくても、梵しかいないけど
「よう、運動不足girl」
「兄様!」
「その日のうちに痛みが来るなら、若い証拠だ
明日来るよりマシだと思っておきな」
「うう……」
言い返せない夕華がしょぼくれる
その手を俺と梵で支えてやりながら、のんびりと駐車場を目指した
――最終的には「抱えて歩いた方が早い」と言い出した梵が夕華をお姫様抱っこしようとして、ものすごい抵抗にあったけど
「――商学部商学科、伊達夕華です!
先輩方に追いつけるように全力で頑張りますので、よろしくお願いします!」
「「いやいやいやいや」」
ようやく私も、薙刀部の仲間入りだ!
……と思って意気込み含めて自己紹介をしたところ、全員からツッコミが入ってしまった
「はっ……!
すみません、生意気でしたか!?」
「「いやいやいやいや」」
「こっちなんて最初から越されてるからね!?」
「高校三年生の引退試合、初出場の全国大会の団体戦決勝で先鋒から副将までが相手方の先鋒に敗れ、大将として出場
そのまま相手の大将まで脅威の五人抜きで見事全国優勝……
……これどんなドラマ?」
「漫画でもやらんわ、こんな展開……」
「え、ええ……?」
そんなことを言われてもだな
そこが私の絶好調だったとは思うけど、あれから薙刀はあんまり触ってないし
そりゃあ受験が終わってからは高校の部活に顔を出してはいたけれど、臨時コーチの喜多さん曰く「腕が鈍った」という感じらしいし
「しかも剣道部の伊達ブラザーズと親戚なんでしょ?」
「ブラザーズというか、に……政宗先輩と成実さんは従兄弟同士で、兄弟ではないんですが……」
「ていうか政宗くんの方と婚約してるんでしょ!?」
「逆です!!
成実さんとです!!」
「でも婚約してるんだ!?」
ああ、いらん事を言わなきゃよかった……
こういう時に限って、コーチの喜多さんはまだ来ていないし……
喜多さん、助けて――!!
「遅れて申し訳ございません!
もう新入部員の方々はお越しでいらっしゃいますか?」
聞き慣れた声が道場に響く
全員がサッと顔色を変えて一列に並んだ
私も慌てて最後尾に並ぶ
すごいな、本当にみんな喜多さんに逆らえないんだな……
「皆様揃っておいでですね、結構でございます
それではミーティングから始めましょう
まず新入生のご紹介をしてくださいますか?」
「新入生、前に来て!」
部長さんに呼ばれて、私と残り三名が喜多さんの前へ向かう
何を隠そう、薙刀部の新入部員は四人しか居ないのだ
「経済学部経済学科の――」
「人文学部社会福祉学科の――」
「法学部法学科――」
よろしくお願い致します、とにこやかに挨拶を交わす喜多さんが、私を見てなおにっこりと微笑んだ
「商学部商学科の伊達夕華です」
「ふふ、存じておりますわ、夕華様
この喜多、首を長くしてお待ちしておりました」
「あはは……ありがとうございます
厳しくご指導のほど、よろしくお願いします!」
背後で先輩達がざわついた
喜多さんに向かって「厳しくしてください」と言うなんて、自殺行為だ
本当に厳しいからね!
「無論でございますとも
伊達の誇りし竜の懐刀、今一度綺麗に研いでみせましょう」
「は、はは……」
喜多さんの目が本気だ……
私、死なないかな……
* * *
夕方の七時半
ようやく今日の稽古も終わって、汗だくの道着から私服に着替えて更衣室を出ると
「ああ、成実様!
ようございました、ちょうどお探ししておりまして」
「喜多姐ちゃん?
珍しいな、剣道場まで来るなんて」
「少々事情がございまして
申し訳ございませんが、薙刀の道場までお越しいただけませんでしようか」
「夕華に何かあったのか」
声を落として尋ねると、喜多姐ちゃんは神妙な顔で頷いた
嫌な予感は特にしないけど、夕華絡みなら見過ごせねぇ
喜多姐ちゃんと薙刀道場へ急ぐと、道場内にはちょっとした人の輪が出来ていた
「失礼します
夕華?」
人だかりへ声をかけると、なぜか「きゃあ」なんて黄色い声が飛んできた
いや、なんでだよ
「……成実さん?」
「よう、お疲れさん
喜多姐ちゃんに呼ばれたんだけど……」
「あはは……それは御足労を……」
「特に何もなさそうだな?
とりあえず帰ろうぜ」
「そうしたいのは山々なんですけど……
あの、お恥ずかしい話、速攻でやってきた筋肉痛で立てなくて……」
「……は?」
床に座ったままの夕華は、着替えは終わっているみたいだった
いや、ていうか筋肉痛って
「そういや、ここ一ヶ月くらいは薙刀を触るどころか、運動もあんまりしてなかったもんな、お前」
「う、実は……」
「しっかし筋肉痛っつったって、そんなすぐに来るかねぇ?」
む、と夕華が唇をへの字にして、ぷいとそっぽを向く
子供っぽい仕草が可愛くて、吹き出してしまったけれど
「しゃーねぇなぁ」
床に座り込んだ夕華の膝の裏に手を入れて、背中を支えて抱き上げる
先程の比ではない歓声が上がった理由については考えるのをやめた
「し、成実さん!?」
「仕方ねぇよなー、どっかのお姫様が疲れたー、動けなーいとか言うんだもんなー」
「そこまでは言ってないです!」
「そんでもって俺も大概甘いから、仰せのままにってやっちゃうもんなー」
「既視感あるやり取りをありがとうございます!!」
おや、今川戦のことをよく覚えていやがる
ちょっとしたやり取りでも覚えてくれているのは嬉しいもんだ
がしかし、筋肉痛で歩けない彼女に「歩け」なんて言うのは、恋人として許せない
「これに懲りたら日頃から体を動かしておけよ」
「はぁい……」
「あ、別に懲りてくれなくてもいいけどな
ただ俺が役得なだけだし」
「これでもかってくらい懲りました!!」
「そいつは残念だ」
お疲れ様、という声に夕華が「お疲れ様でした」と挨拶をする
靴は喜多姐ちゃんに履かせてもらって、夕華の荷物を同級生らしき女子部員から受け取ると、俺達は道場を後にした
「あ、あの成実さん、どこまでお姫様抱っこで……?」
「え?
そりゃもちろん駐車場まで」
「さすがに恥ずかしいですよ!?」
「だって筋肉痛なんだろ?」
「が、頑張れば歩けます」
「無理すんなよ、ちったぁ彼氏を頼りやがれ」
「人の目を気にしてください!!」
まったく、ああ言えばこう言う奴だな
でも確かに人前でお姫様抱っこは恥ずかしいだろうし、下ろしてやるか……
そっと地面に下ろして、手を繋いで歩いて駐車場へ
面白いくらい歩幅が小さい夕華が可愛くて、役得だなぁなんて思っていると、夕華の反対側の手を誰かが握った
誰か、なんて言わなくても、梵しかいないけど
「よう、運動不足girl」
「兄様!」
「その日のうちに痛みが来るなら、若い証拠だ
明日来るよりマシだと思っておきな」
「うう……」
言い返せない夕華がしょぼくれる
その手を俺と梵で支えてやりながら、のんびりと駐車場を目指した
――最終的には「抱えて歩いた方が早い」と言い出した梵が夕華をお姫様抱っこしようとして、ものすごい抵抗にあったけど
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