第五十六話 吏と姫の約束
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
春の陽気が降り注ぐ、四月一日
おろしたてのスーツに袖を通して、鞄を持つ
「準備できたかー?」
ドアをノックして成実さんが顔を覗かせた
か、髪の毛を右側だけ耳にかけている……
それ本当にイケメンにしか似合わないやつだ、私知ってる
しかも成実さんがモデルと見紛うくらいのイケメンだからものすごく様になってる
「成実さん、かっこよすぎません?」
「まあ成実さんはいつでもかっこいいけど、スーツ着てるだけだぞ」
かっこいいを全く否定しないのも成実さんらしいな
ともかく、私の用意は終わったわけだし、あとは家を出るだけだ
この際、伊達家の男性陣が全員入学式に来てくれることには、もう触れないでおこう
保護者席の一角が大変なことになるのはこれで二回目だ
「お前、まーたそんな適当な……」
「これでも頑張ったんですよ!?」
「ちげーよ、メイクじゃなくて髪」
成実さんが私の鞄を奪って一階へと降りていく
髪型か……そこまでは気を遣ってなかったな……
そもそも器用な方では無いし、誰かにやってもらわないとダメな気がする
洗面台に立たされて、成実さんが私の髪をひとつに括っていたヘアゴムを取る
それからなんか色々と施されて、見た目だけならとっても上品でどこかのご令嬢のような私が完成した
「よし、こんなもんだろ」
「相変わらず手先が器用ですね……」
「そりゃどうも
梵たちも待ってるし、そろそろ行くか」
「はい!」
パンプスを履いて外へ出る
目の前には案の定、高級車が停まっていた
もう何も言うまい……このBMWは兄様の専用車だ……
「おはようございます」
「Good morning.
よく似合ってるじゃねぇか」
「本当ですか?
良かったです」
まあ小十郎さん達がよく利用している洋服店が作ったんだから、似合わないわけがないと思うけど
でも兄様がそう言ってくれるんだから間違いは無い
成実さんが私の横に入って、車が発進した
運転手は小十郎さん、助手席は綱元さんだ
全員きっちりスーツを着ているし、平日なのに社会人の義兄弟組がいる
有休を使ったんだろう、さすが私に甘い人達だ
「今日は入学式が終わった後、別邸でお祝いの席をご用意しております」
「っつっても大した規模じゃないけどな
ホームパーティの域を出ないくらいのモンだから、気兼ねすんなよ」
成実さんがそう言ってくれるけど、私の十八歳の誕生日パーティくらいの規模は予想しておいていいだろう
セレブのホームパーティを大した規模じゃないと言える人達に、私は慣れる日が来るんだろうか
絶対来ない気がする
「原田さん達は?」
「パーティの準備中
式が終わったら梵と小十郎と俺は料理の用意があるから、帰りは綱元に頼んであるよ」
「そうなんですね
宜しくお願いします、綱元さん」
「お任せ下さい」
綱元さんが私を振り返って微笑んだ
とても嬉しそうだったので、良かったねという気持ちだ
恐らく先月の小十郎さんへの妬みが尾を引いていたんだろう
……いよいよ私も大学生か
それも、兄様や成実さんと同じ婆娑羅大学の商学部
「……待ってください?
これから一緒に通えるってことですか!?」
「その事実に気付いたの今なのかよ!?」
「てっきり気付いてるもんだと思ってたぞ」
いやなんというか、全然実感が沸かなかったというか
この顔面国宝を引き連れて大学に通うのか……
「っつっても時間割は違うし、会えない日もあるだろうけどな」
「そっか……そうですよね
毎日一緒にいられるわけじゃないですよね
私もバイトがありますし」
瞬間、ピシッと空気が凍り付いた
この空気は覚えがある
バイト……駄目なんだな……
「お前バイトすんのか」
「じ、自分のお小遣いは自分で稼がないとって思って」
「や、うーん別に止めはしねぇけど……」
「……本家の体裁的には宜しくないですか?」
「恐れながら申し上げるとするならば、その通りです」
綱元さんもそう言うなら、やめておこうかな……
本当はちゃんとバイトしてお金を稼ごうと思ったけど、それで兄様たちや本家が変な風に言われるのは本意じゃない
そもそも毎月の生活費だって両親が仕送りをしてくれているし、その仕送りだって半分は貯蓄に回るくらいの金額だから、アルバイトなんてしなくてもいいのが実情だ
あまりにも親の脛をかじりすぎているから、自分の遊ぶお金くらいはって思ったけど……
「アルバイトはやめておきます
言われてみれば、成実さんもアルバイトしてないですしね」
「した方がいいとは思うんだけどな、社会勉強にもなるし
ただまぁ、分家筆頭の家って立場がな……」
「確かに成実さんの立場でアルバイトは、色々と言われそうですもんね……」
「立場とかそんなもんは面倒くせぇけど、だからって自由にやったらやったで、周りが面倒くせぇことになるしさ
まぁ梵に比べたら自由なうちだとは思うけど」
隣に座る兄様は何も言わなかった
自由奔放に見えて、兄様はちゃんと立場を分かっている
自分の行動にかけられた制約も、ある程度なら受け入れているのが兄様だ
私もいい加減、慣れなければ
私はもう見てくれだけの伊達姓を持つ人間じゃない
分家末席の家の子だとしても、私個人だけの話をすれば本家に準ずる立場だ
私はもう、完全な自由を手にすることは出来ない
おろしたてのスーツに袖を通して、鞄を持つ
「準備できたかー?」
ドアをノックして成実さんが顔を覗かせた
か、髪の毛を右側だけ耳にかけている……
それ本当にイケメンにしか似合わないやつだ、私知ってる
しかも成実さんがモデルと見紛うくらいのイケメンだからものすごく様になってる
「成実さん、かっこよすぎません?」
「まあ成実さんはいつでもかっこいいけど、スーツ着てるだけだぞ」
かっこいいを全く否定しないのも成実さんらしいな
ともかく、私の用意は終わったわけだし、あとは家を出るだけだ
この際、伊達家の男性陣が全員入学式に来てくれることには、もう触れないでおこう
保護者席の一角が大変なことになるのはこれで二回目だ
「お前、まーたそんな適当な……」
「これでも頑張ったんですよ!?」
「ちげーよ、メイクじゃなくて髪」
成実さんが私の鞄を奪って一階へと降りていく
髪型か……そこまでは気を遣ってなかったな……
そもそも器用な方では無いし、誰かにやってもらわないとダメな気がする
洗面台に立たされて、成実さんが私の髪をひとつに括っていたヘアゴムを取る
それからなんか色々と施されて、見た目だけならとっても上品でどこかのご令嬢のような私が完成した
「よし、こんなもんだろ」
「相変わらず手先が器用ですね……」
「そりゃどうも
梵たちも待ってるし、そろそろ行くか」
「はい!」
パンプスを履いて外へ出る
目の前には案の定、高級車が停まっていた
もう何も言うまい……このBMWは兄様の専用車だ……
「おはようございます」
「Good morning.
よく似合ってるじゃねぇか」
「本当ですか?
良かったです」
まあ小十郎さん達がよく利用している洋服店が作ったんだから、似合わないわけがないと思うけど
でも兄様がそう言ってくれるんだから間違いは無い
成実さんが私の横に入って、車が発進した
運転手は小十郎さん、助手席は綱元さんだ
全員きっちりスーツを着ているし、平日なのに社会人の義兄弟組がいる
有休を使ったんだろう、さすが私に甘い人達だ
「今日は入学式が終わった後、別邸でお祝いの席をご用意しております」
「っつっても大した規模じゃないけどな
ホームパーティの域を出ないくらいのモンだから、気兼ねすんなよ」
成実さんがそう言ってくれるけど、私の十八歳の誕生日パーティくらいの規模は予想しておいていいだろう
セレブのホームパーティを大した規模じゃないと言える人達に、私は慣れる日が来るんだろうか
絶対来ない気がする
「原田さん達は?」
「パーティの準備中
式が終わったら梵と小十郎と俺は料理の用意があるから、帰りは綱元に頼んであるよ」
「そうなんですね
宜しくお願いします、綱元さん」
「お任せ下さい」
綱元さんが私を振り返って微笑んだ
とても嬉しそうだったので、良かったねという気持ちだ
恐らく先月の小十郎さんへの妬みが尾を引いていたんだろう
……いよいよ私も大学生か
それも、兄様や成実さんと同じ婆娑羅大学の商学部
「……待ってください?
これから一緒に通えるってことですか!?」
「その事実に気付いたの今なのかよ!?」
「てっきり気付いてるもんだと思ってたぞ」
いやなんというか、全然実感が沸かなかったというか
この顔面国宝を引き連れて大学に通うのか……
「っつっても時間割は違うし、会えない日もあるだろうけどな」
「そっか……そうですよね
毎日一緒にいられるわけじゃないですよね
私もバイトがありますし」
瞬間、ピシッと空気が凍り付いた
この空気は覚えがある
バイト……駄目なんだな……
「お前バイトすんのか」
「じ、自分のお小遣いは自分で稼がないとって思って」
「や、うーん別に止めはしねぇけど……」
「……本家の体裁的には宜しくないですか?」
「恐れながら申し上げるとするならば、その通りです」
綱元さんもそう言うなら、やめておこうかな……
本当はちゃんとバイトしてお金を稼ごうと思ったけど、それで兄様たちや本家が変な風に言われるのは本意じゃない
そもそも毎月の生活費だって両親が仕送りをしてくれているし、その仕送りだって半分は貯蓄に回るくらいの金額だから、アルバイトなんてしなくてもいいのが実情だ
あまりにも親の脛をかじりすぎているから、自分の遊ぶお金くらいはって思ったけど……
「アルバイトはやめておきます
言われてみれば、成実さんもアルバイトしてないですしね」
「した方がいいとは思うんだけどな、社会勉強にもなるし
ただまぁ、分家筆頭の家って立場がな……」
「確かに成実さんの立場でアルバイトは、色々と言われそうですもんね……」
「立場とかそんなもんは面倒くせぇけど、だからって自由にやったらやったで、周りが面倒くせぇことになるしさ
まぁ梵に比べたら自由なうちだとは思うけど」
隣に座る兄様は何も言わなかった
自由奔放に見えて、兄様はちゃんと立場を分かっている
自分の行動にかけられた制約も、ある程度なら受け入れているのが兄様だ
私もいい加減、慣れなければ
私はもう見てくれだけの伊達姓を持つ人間じゃない
分家末席の家の子だとしても、私個人だけの話をすれば本家に準ずる立場だ
私はもう、完全な自由を手にすることは出来ない
1/3ページ
