第五十二話 いざ呉服店へ
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受験勉強に追われない冬休みも、残すところあと四日
そんな中、三が日の最終日である今日はというと
「本当にお店が開いてる……」
高級店の佇まいをした呉服屋さんは、店内が明々としている
けれど入口には「新年は四日より営業致します」の張り紙があった
「待たせるわけにはいかねぇ
入るぞ」
兄様に反応して自動ドアが開く
その先には従業員らしき方が三名、お揃いでいらっしゃった
「ようこそおいでくださいました」
折り目正しい四十五度だー!!
そこまでしてもらえる家なんだな、伊達家って!
「Happy new year.
無理言って悪いな」
「あけましておめでとうございます
ご贔屓にして下さる政宗様の為とあらば、いつでも店を開けましょうとも」
「あけましておめでとう
新年早々、うちの若様が悪いな
正月休みを一日返上させちまって」
「成実様もあけましておめでとうございます
今日は伊達の皆様の貸切でございますので、お帰りになられましたら我々も帰りますよ」
そうして店主の視線が私へと向けられた
喜多さんに昔教わったことを思い出す
背を伸ばして、視線を真っ直ぐ前に
「こちらのお方が?」
「ああ、今日の主役だ」
「政宗様に妹君がおられたとは」
「残念ながら妹じゃねぇがな
だが、俺の妹みてぇに可愛がってる奴だ
成実の野郎とも婚約したし、今後は会うこともあるだろうさ」
「そうでしたか
ではお嬢様も、今後ともご贔屓に
失礼ですがお名前をお伺いしても?」
「伊達夕華と申します」
そう名乗ると、店主の瞳がまぁるくなって
それから慈しむように細められた
「政宗様、何をおっしゃいますか
この方は紛うことなき妹君でございましょう」
「……なぜそれを知ってる」
「二十年程前に、ご当主様がおっしゃっておいででして、お子様を分家へご養子に出されたそうです
せっかく政宗に妹が出来たのになぁ、とそれはそれは寂しそうでしたので、覚えておりました」
「さすが大殿……」
「親父、口が緩すぎるな……」
「本当ですね……」
自分で箝口令を敷いておいて、そんなうっかり口を滑らせることある?
でも店主に話が伝わってるなら、もう誤魔化さなくていいか
「兄様、さっそく見てもいいですか?」
「そうだな
昔話をしに来たわけじゃねぇ」
「色々見せてもらうぜー」
従兄弟組がさっさと店の奥へと向かうのを追いかける
勝手知ったるように進んでいくな……
「俺達は俺達で勝手に見るけど、お前も好きな柄の反物があったら遠慮なく言えよ?」
「分かりました」
とはいえ、あの質素な振袖を見慣れすぎたせいか、全部が綺麗に見える
うーん、でもせっかくなら、前世でも着ていたような柄が落ち着くなぁ
そう考える間もなく、「夕華」と呼ばれて振り向いた
トップバッターはやはり兄様のようだ
「……ちょいと花が邪魔すぎるか」
「悪かねぇけど、んー……
夕華より花の方が主張してねぇか?」
「だな」
なんでこういう時は従兄弟揃って仲良く意見が合うんだろう
その直後に今度は成実さんが私を呼んだ
もう自分で選ぶのは諦めよう
「あー、これだと逆に地味だ」
「白地に牡丹は悪くねぇが、もう少し欲しいな」
「だよな」
なぜ私に反物を当てただけで全てが分かるんだろう
というか、着物の生地を選ぶのってこんなに難しいものだったんだ
「……あ」
従兄弟二人が私から離れた時、更に少し奥に見えた反物が目に飛び込んだ
白から下へかけて黒へと変わっていくグラデーションの生地には、百合や菊、藤といった花柄がふんだんにあしらわれている
前世の私もこういう柄は着たことがない
可愛らしいというより、綺麗で洗練されたような印象だ
「ん?
それが気になったのか?」
すぐに成実さんが気付いてくれて、私の隣に立って反物を眺める
どうだろう、成実さんや兄様は審美眼があるから、ダメ出しをされてしまうかも
「うん……普段の夕華とはまた違う雰囲気が出て、いいかもな」
「いいんですか?
私、お二人のように着物の善し悪しは分からなくて」
「良いも何も、着たいと思った柄を着るのが一番だよ
俺達があーだこーだ言ったって、結局それを着るのはお前なんだから」
「そっか……そうですよね」
「よし、じゃあまずはこれでひとつだな」
「はい!
……え?」
まずはひとつ……?
まずはひとつって何だ……?
「もちろん、この成実さんの嫁になる女が、一張羅で済むわけないだろ?」
当たり前のような顔をして成実さんがそう言った
そして思い出した
この人達は、私を思いっきり着飾りたいと言い続けていたことを
……よし、もう好きにさせておくしかないな!
そんな中、三が日の最終日である今日はというと
「本当にお店が開いてる……」
高級店の佇まいをした呉服屋さんは、店内が明々としている
けれど入口には「新年は四日より営業致します」の張り紙があった
「待たせるわけにはいかねぇ
入るぞ」
兄様に反応して自動ドアが開く
その先には従業員らしき方が三名、お揃いでいらっしゃった
「ようこそおいでくださいました」
折り目正しい四十五度だー!!
そこまでしてもらえる家なんだな、伊達家って!
「Happy new year.
無理言って悪いな」
「あけましておめでとうございます
ご贔屓にして下さる政宗様の為とあらば、いつでも店を開けましょうとも」
「あけましておめでとう
新年早々、うちの若様が悪いな
正月休みを一日返上させちまって」
「成実様もあけましておめでとうございます
今日は伊達の皆様の貸切でございますので、お帰りになられましたら我々も帰りますよ」
そうして店主の視線が私へと向けられた
喜多さんに昔教わったことを思い出す
背を伸ばして、視線を真っ直ぐ前に
「こちらのお方が?」
「ああ、今日の主役だ」
「政宗様に妹君がおられたとは」
「残念ながら妹じゃねぇがな
だが、俺の妹みてぇに可愛がってる奴だ
成実の野郎とも婚約したし、今後は会うこともあるだろうさ」
「そうでしたか
ではお嬢様も、今後ともご贔屓に
失礼ですがお名前をお伺いしても?」
「伊達夕華と申します」
そう名乗ると、店主の瞳がまぁるくなって
それから慈しむように細められた
「政宗様、何をおっしゃいますか
この方は紛うことなき妹君でございましょう」
「……なぜそれを知ってる」
「二十年程前に、ご当主様がおっしゃっておいででして、お子様を分家へご養子に出されたそうです
せっかく政宗に妹が出来たのになぁ、とそれはそれは寂しそうでしたので、覚えておりました」
「さすが大殿……」
「親父、口が緩すぎるな……」
「本当ですね……」
自分で箝口令を敷いておいて、そんなうっかり口を滑らせることある?
でも店主に話が伝わってるなら、もう誤魔化さなくていいか
「兄様、さっそく見てもいいですか?」
「そうだな
昔話をしに来たわけじゃねぇ」
「色々見せてもらうぜー」
従兄弟組がさっさと店の奥へと向かうのを追いかける
勝手知ったるように進んでいくな……
「俺達は俺達で勝手に見るけど、お前も好きな柄の反物があったら遠慮なく言えよ?」
「分かりました」
とはいえ、あの質素な振袖を見慣れすぎたせいか、全部が綺麗に見える
うーん、でもせっかくなら、前世でも着ていたような柄が落ち着くなぁ
そう考える間もなく、「夕華」と呼ばれて振り向いた
トップバッターはやはり兄様のようだ
「……ちょいと花が邪魔すぎるか」
「悪かねぇけど、んー……
夕華より花の方が主張してねぇか?」
「だな」
なんでこういう時は従兄弟揃って仲良く意見が合うんだろう
その直後に今度は成実さんが私を呼んだ
もう自分で選ぶのは諦めよう
「あー、これだと逆に地味だ」
「白地に牡丹は悪くねぇが、もう少し欲しいな」
「だよな」
なぜ私に反物を当てただけで全てが分かるんだろう
というか、着物の生地を選ぶのってこんなに難しいものだったんだ
「……あ」
従兄弟二人が私から離れた時、更に少し奥に見えた反物が目に飛び込んだ
白から下へかけて黒へと変わっていくグラデーションの生地には、百合や菊、藤といった花柄がふんだんにあしらわれている
前世の私もこういう柄は着たことがない
可愛らしいというより、綺麗で洗練されたような印象だ
「ん?
それが気になったのか?」
すぐに成実さんが気付いてくれて、私の隣に立って反物を眺める
どうだろう、成実さんや兄様は審美眼があるから、ダメ出しをされてしまうかも
「うん……普段の夕華とはまた違う雰囲気が出て、いいかもな」
「いいんですか?
私、お二人のように着物の善し悪しは分からなくて」
「良いも何も、着たいと思った柄を着るのが一番だよ
俺達があーだこーだ言ったって、結局それを着るのはお前なんだから」
「そっか……そうですよね」
「よし、じゃあまずはこれでひとつだな」
「はい!
……え?」
まずはひとつ……?
まずはひとつって何だ……?
「もちろん、この成実さんの嫁になる女が、一張羅で済むわけないだろ?」
当たり前のような顔をして成実さんがそう言った
そして思い出した
この人達は、私を思いっきり着飾りたいと言い続けていたことを
……よし、もう好きにさせておくしかないな!
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